EU、域内の半導体生産拠点への支援策の半導体法案で政治合意、支援予算の増額なし

(EU)

ブリュッセル発

2023年04月20日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は4月18日、EU域内における半導体の研究開発から生産までのエコシステムの確立を目指す欧州半導体法案(注)に関して、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUは今後、半導体法案の施行により、域内の半導体産業に対する財政支援や、半導体の生産施設に対する許認可や国家補助における優遇措置を実施することで、現状10%程度である半導体の域内生産の世界シェアを2030年までに倍増させ、少なくとも20%を目指すとしている。半導体法案は、近年の半導体の供給不足や東アジアからの供給依存を受けて、欧州委員会が2022年2月に提案したもの(2022年2月10日記事参照)。今回の政治合意により、EU理事会および欧州議会の正式な採択を経て成立する見込み。なお、政治合意時点では、半導体法案の合意テキストは公開されていない。

EU理事会と欧州議会は今回、半導体法案の構成に関して、欧州委の提案どおり、(1)半導体の研究開発や生産に対する財政支援策である「欧州半導体イニシアチブ(Chips for Europe Initiative)」、(2)半導体の生産施設の誘致に向けた優遇措置、(3)半導体サプライチェーンの監視と危機対応とすることで合意した。

「欧州半導体イニシアチブ」における投資規模に関して、半導体法案は、EUと加盟国による財政支援と民間投資の合算で430億ユーロを見込む。ただし、今回の政治合意では、半導体法案に基づき2027年までに割り当てられるEU予算は、欧州委が提案した33億ユーロに限定される。また、この33億ユーロは、既存のEU予算を組み替えることで捻出するもので、既存のEU予算の枠外からの半導体産業への財政支援に向けた新規増額はない。このことから、公的支援においては、加盟国による国家補助が重要になるとみられる。

また、今回の政治合意では、投資誘致に向けた、許認可や国家補助などの加盟国による優遇措置の対象となる「域内初(first-of-a-kind)」の施設について、射程を拡大。半導体の完成品だけでなく、半導体の生産に必要な設備の製造拠点も「域内初」の認定対象となった。このほか、半導体の設計拠点に関しても「優秀な設計拠点」として認定し、加盟国による優遇措置の実施を認める。

(注)EUの半導体政策と半導体法案の概要については、調査レポート「EUデジタル政策の最新動向(第1回)PDFファイル(558KB)」(2022年8月)を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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