貿易円滑化ロードマップ実施評価報告書を発表

(ラオス)

ビエンチャン発

2023年05月25日

ラオス商工省は5月5日、「貿易円滑化ロードマップの実施評価報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。同ロードマップは2017年9月に策定され、2022年までに輸出入に要する時間の50%以上を短縮し、コストや書類の30%以上を削減することを目的としている。そのため、「メカニズムの構築」「地方レベルのガバナンス改善」「民間セクターとの協力」「優先的措置の実施」「不当な非関税措置(NTMs、注1)の撤廃」「越境協力と地域統合」「WTO貿易円滑化協定(TFA)の完全実施」の7つの戦略を柱とした。この一環で、2018年2月には「ラオスのビジネス規則やフォローアップ体制の改善に関する首相命令(No.02/PM)」が発布され、投資環境の迅速な改善を関係省庁に命じている(2018年3月7日記事参照)。

特に「優先的措置の実施」として、ラオ・トレードポータル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)の充実や、サービス憲章の策定と実施(2018年9月21日記事参照)、税関の開庁時間の延長、不要な税関・検査場の撤廃、認定事業者(AEO)制度の実施(2023年3月1日記事参照)など、さまざまな取り組みが行われたことを評価した。ただし、その維持やさらなる充実が必要とも指摘している。

一方で、「不当なNTMsの撤廃」については、2022年までに全てのNTMs見直しを目指していたが、新型コロナ禍の影響もあり、商工省によるセメントや鉄鋼、自動車部品の輸入ライセンス廃止、地方での原産地証明書の電子提出や発行開始を除いて、取り組みが進まなかった。その結果、452項目のうち107項目では、規制影響分析(注3)の実施にとどまったと指摘した。

「越境協力と地域統合」では、越境交通協定(CBTA)に基づくシングルストップ検査(注4)をサワンナケート(ラオス)・ムクダハン(タイ)国境に導入する計画がタイ側の規制によって進んでいないことを挙げた。また、貿易手続きの電子化については、電子署名が技術的な問題により実用化されていないこと、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)の電子原産地証明書(2020年9月8日記事参照)について、加盟国間で電子媒体での受理が進まず、依然として紙媒体が利用されている実態を指摘した。

「WTO貿易円滑化協定の完全実施」(2017年3月1日記事参照)では、ラオスが公約した事前教示制度やシングルウインドウ(手続き窓口の一元化)の導入など36項目の全てで取り組みが開始され、うち30%が完全に実施、17%が実質的に実施(3分の2以上の履行)、53%が部分的に実施(3分の2未満の履行)され、多くの措置が完了に近いと評価した。

これらの個別の取り組みを踏まえ、ロードマップの最大の成果として、輸出にかかる時間を従来の226時間から69時間へ、輸入にかかる時間を従来の228時間から71時間へ大幅に短縮し、50%削減する目標を超えたことを挙げた。これにより、世界銀行のビジネス環境ランキング「Doing Business」の貿易項目は、2017年の124位から2019年には78位に大きく上昇した。その後も通関時間のさらなる短縮が進められていると評価した。一方で、通関コストについては検査などの費用が増大したことで、企業のメリットは限定的だったとも分析している。これらのコストを削減するためにも、NTMsの削減などさらなる取り組みが必要と指摘した。

報告書では最後に、上述の課題への取り組みとともに、継続的に貿易円滑化を進めるための事務局機能の強化や定期的なモニタリングの実施、ラオス商工会議所など民間セクターとのパートナーシップの強化が必要と提言した。

写真 ラオス北部のボーテン税関(ジェトロ撮影)

ラオス北部のボーテン税関(ジェトロ撮影)

(注1)非関税措置(NTMs)とは、関税以外の方法で輸入疎外をもたらす措置の総称。ラオスでは2017年に243項目の措置がリストアップされたが、国連貿易開発会議(UNCTAD)の2019年ガイドラインに沿った分類法や規制の追加により、452項目の措置がリストアップされている。

(注2)貿易情報(制度・データ)をまとめて提供する商工省のウェブサイト。

(注3)規制影響分析とは、規制の実施によるコストや便益といった影響を客観的に分析すること。

(注4)ラオスでは、2015年にデンサワン(ラオス)・ラオバオ(ベトナム)国境で開始された。詳細は2015年1月14日記事参照

(山田健一郎)

(ラオス)

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