バイデン米大統領による欧州首脳との密接な連携維持、ジェトロの米中月例レポート(2023年4月)

(米国、中国、台湾、フランス、EU)

米州課

2023年05月25日

ジェトロは5月24日、米国の対中国関連政策についてまとめた2023年4月分の月例レポートを公表した。このレポートは、日本企業が米中関係に関する米国の動向を把握できるよう、2021年7月から毎月分を作成して特集ページに連載している。

4月の米中関係については、台湾総統の訪米をきっかけに、緊張感が高まった。蔡英文総統が4月5日にカリフォルニア州でケビン・マッカーシー連邦下院議長と会談したが(2023年4月7日記事参照)、国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、蔡総統の訪問は「異例でも公式でもなく、米国政府高官とも会っていないため、中国が威圧的な方法で反応する理由はない」と中国を牽制した(政治専門紙「ポリティコ」4月6日)。しかし、中国はこれに強く反発し、深刻な対立を招くと警告した。米国シンクタンクのピュー・リサーチ・センターが3月29日に発表したデータによると、中国と台湾の緊張が米国にとって深刻な問題とみる割合は47%と半数近くに達しており、中国に対する国民の警戒心が高まっていることが分かる(2023年3月31日記事参照)。

また、対中姿勢について、米欧間の首脳レベルで緊密な連絡を維持しようとするジョー・バイデン大統領の姿勢もみられた。蔡総統による訪米と時を同じくして、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が4月5~7日に国賓として中国を訪問し、習近平国家主席とハイレベル対話継続など51項目での協力を発表した(2023年4月11日記事参照)。一方のバイデン大統領は、マクロン大統領の訪中に関し、同大統領へ中国訪問前後に電話会談をしている。訪中後の電話会談の結果について、バイデン大統領は「両首脳は台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を再確認した」と表明した一方で、電話会談に関するフランス大統領府側の声明では、台湾に関する言及はなかった。また、バイデン大統領は、同時期に訪中した欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長とも訪中後に電話会談を行っており、「台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性」について協議したとしている。

連邦議会では3月末から4月にかけて、対中国・台湾政策や米中関係を取り上げた公聴会が多数開催され、中国に対する厳しい政治的メッセージが発信されている。対中強硬姿勢は超党派の支持を得ており、今後とも米国議会の中国に対する警戒心は高まっていくものと考えられる。

そのほか、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が4月27日に行ったバイデン政権の国際経済政策に関する講演で、対中関係全般を巡り「われわれは関係の分断ではなく、リスクの低減と多様化を支持する」と述べた(2023年5月1日記事参照)。ジャネット・イエレン財務長官が前週に行った講演(2023年4月21日記事参照)で語ったように、米国は国家安全保障上の利益を守りつつ、中国と健全な経済競争を行い、可能な分野で協力するとの政権の立場を繰り返した。サリバン補佐官の講演は、政権の対外政策を端的に示しているとされている。

米国の対中政策・措置や米国側から見た米中関係の動向について、行政府、連邦議会、産業界、学会に分けて解説する月例レポートは、こちらの特集ページからさかのぼって閲覧が可能。米中関係に関する中国の動向も確認できる。

(谷本皓哉)

(米国、中国、台湾、フランス、EU)

ビジネス短信 85f74779da15a095