世界銀行、2023年度経済成長率予測を5.2%に据え置き、中期的には成長加速を見込む
(バングラデシュ)
ダッカ発
2023年04月12日
世界銀行は「南アジア経済フォーカス」を4月4日に発表し、バングラデシュの2022/2023年度(2022年7月~2023年6月)の経済成長率について、2023年1月に発表した「世界経済見通し」予想の5.2%(2023年1月25日記事参照)を据え置いた。「南アジア経済フォーカス」は年に2回発表され、前回発表の同調査(2022年10月19日記事参照)との比較では、0.9ポイントの下方修正となった。
世界銀行は同調査の一環として、国別のプレスリリースを併せて発表した。同行は、バングラデシュでは政府のマクロ経済政策が奏功し、新型コロナ禍からの急速な経済回復を遂げている点に言及。その一方で、懸念要因として、世界経済の不確実性をはじめ、インフレの進行(2023年3月27日記事参照)、輸入の抑制措置(2022年7月19日記事参照)、国内地場銀行の資金流動性の減少と不良債権の増加、経常収支の赤字、歳入の不足などを挙げ、持続的な経済成長には構造改革が必要と指摘した。また、経常収支の赤字幅は、前年度(2021/2022年度)の53億ドルから今年度第1四半期(2022年7~9月末)には72億ドルまで拡大し、外貨準備高減少への圧力となっている。その背景として、複数の為替レートが生じるシステム(2023年1月12日記事参照)による輸出や郷里送金への影響を挙げ、変動相場制への完全移行が経常収支赤字の減少につながるとも指摘した。
さらに、新型コロナ禍において、輸出の大部分を占めるRMG(既製服)産業への過度の依存リスクを浮き彫りにし、輸出多角化の必要性や、関税率の引き下げや非関税障壁に係る改革が必要とした。
他方、世界銀行は2023/2024年度の成長率予測を6.2%とし、中期的には経済成長の加速を見込む。また、課題に挙げた構造改革を包括的に行うことは、南アジアと東南アジア地域の連結性の強化につながり、経済成長加速のためにも政府の構造改革を支援する準備があることも言及された。なお、アジア開発銀行(ADB)は同月、2022/2023年度の経済成長率予測を6.6%から5.3%に下方修正した(2023年4月10日記事参照)。
(山田和則)
(バングラデシュ)
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