米USTR、在メキシコ自動車部品メーカーでの労働権侵害でUSMCAによる解決を発表

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2023年04月26日

米国通商代表部(USTR)は4月24日、米自動車部品メーカーのユニーク・ファブリケーティング(以下、UF)がメキシコ中北部ケレタロ州に有する施設で労働権侵害の疑いがあったとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」(注1)に基づき、メキシコ政府に事実確認を求めていた案件について、解決に至ったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

本件は、米国政府がメキシコの労働組合からの提訴を受け、3月にメキシコ政府に対して事実確認を要請した案件となる(2023年3月8日記事参照)。その後、メキシコ政府は米国政府からの要請を正式に受諾し、調査を開始していた(2023年3月22日記事参照)。USTRはプレスリリースの中で、メキシコ政府は調査と並行して、疑いのあった施設における管理職層と従業員層に対する研修や、企業側が中立性を維持し従業員が加入する労組を自由に選択できる権利を認める声明発行の補助、代表労組を決める投票の監視など、問題解決のために多くの措置を取ったとした。さらに企業側は、新たな労組との間で、施設へのアクセスについて既存の労組と同等の条件を約束する協定を締結したとしている。これらの改善を受けて、メキシコ政府は労働権の侵害が調査期間中に解決されたと結論付け、米国政府としてもその状況に合意したとしている。USTRのキャサリン・タイ代表は「問題を迅速に解決するためのメキシコ政府と企業側の努力を称賛する」との声明を出している。また、タイ代表は、メキシコ政府への事実確認要請と同時に停止していた、UFからの輸入に関する関税の清算を再開するよう財務長官に要請した。

USTRはこれまでに、USMCAのRRMを活用して本件を含めて7件、メキシコ政府に労働権侵害の事実確認を要請している。いずれもメキシコ内の自動車部品メーカーの施設における案件となっている。本件が解決に至ったことを受けて、7件中の6件が解決済みとなった(注2)。残る1件は、メキシコのコアウイラ州に所在する自動車用内装部品メーカーであるマヌファクトゥラスVU(本社:米国ミシガン州)における案件となっており、現在は米国とメキシコ両政府が合意した改善策を履行中となっている(2023年4月3日記事参照)。

(注1)RRMは、事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで、違反が認められれば、USMCAによる特恵措置の停止といった罰則が適用される。

(注2)本件以外の解決済みの5件については下記記事を参照。

(磯部真一)

(米国、メキシコ)

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