米国とメキシコ、在メキシコ自動車部品企業の労働問題の改善策で合意

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2023年04月03日

米国通商代表部(USTR)は3月31日、メキシコ・コアウイラ州所在の自動車用内装部品メーカー、マヌファクトゥラスVUで発生していた労働権侵害について、メキシコ政府と改善策で合意したと公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

USTRはこの件について、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で定めている「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、1月にメキシコ政府に対して事実確認を要請していた。メキシコ政府は調査を完了させた3月16日に、労働者の結社の自由と団体交渉権を阻害することを目的にVU事業所内で企業側の深刻な不正行為と決定的関与があったことを特定したと結論付けた(2023年3月22日記事参照)。両国間で合意した改善策PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、VUが結社の自由と団体交渉権の尊重や自由な労働組合活動への不介入の保証、権利を侵害した職員への懲罰などを含んだ誓約書を書面で公開するとともに、4月10日までに全ての従業員にこれを配布し、施設内の目立つ場所に掲示しなければならないとしている。そのほか、米国本社(ミシガン州)の幹部が4月21日までに同施設を訪問し、両政府職員と労働組合代表者の立ち合いの下、同誓約書の内容を全ての従業員に周知することや、メキシコ政府が行うあらゆる査察に協力し、労働権侵害の疑いがあった場合に必要な改善措置を取ることなどを含んでいる。

RRMのルールによると、VUが合意したとおりに今後改善策を履行し、両政府が問題の解決に合意すれば、案件は終了する。一方、合意できない場合、提訴国の米国は15日前の書面通知をもって、VUの同施設からの輸入に対してUSMCAに基づく特恵関税の適用を停止するなど制裁措置を発動することができる。ただし、被提訴国のメキシコは、通知を受理してから10日以内ならば、紛争解決のためのパネル設置を要請することができ、米国はパネル審議が終了するまで制裁の発動を控えなければならない。VUの同施設に対するRRMの手続きの発動は今回で2回目で、米国の連邦議員も再発に対する懸念を表明している(2023年1月31日記事参照)。これまでRRMが発動されて手続きが完了した案件は全てパネル設置前に解決されているが(注)、今回は再発案件のため、問題解決の検証がこれまで以上に厳しくなる可能性がある。キャサリン・タイUSTR代表は声明で「侵害行為による損害は現在も進行している。このため、米国は改善策の履行を注意深く監視していく」としている。

(注)解決済みの5件については下記記事を参照。今回のVUの件が6件目となり、2023年2月に米国がメキシコに事実確認要請を行った7件目については現在、メキシコ政府が調査中(2023年3月22日記事参照)。

(磯部真一)

(米国、メキシコ)

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