米USTR、メキシコのパナソニック関連工場での労働問題の解決を確認

(米国、メキシコ、日本)

ニューヨーク発

2022年07月15日

米国通商代表部(USTR)は714日、メキシコ北東部タマウリパス州レイノサ市にある自動車部品メーカー、パナソニック・オートモーティブ・システムズ(パナソニック)の工場で労働権侵害の疑いがあるとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、メキシコ政府に事実確認を要請していた件について、問題が解決したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回の件は、メキシコの新興独立系労組の全国工業サービス労働者独立組合20/32運動(SNITIS)と米国の非営利団体リシンク・トレードが、パナソニックのレイノサ工場で団結の自由と団体交渉にかかる労働権が侵害されたとして、米政府に提訴したことが発端となっていた(2022年5月23日記事5月24日記事参照)。USTRによると、メキシコ政府の仲介を経て、工場側は労組と以下の点に対応すると合意した。

  • 法的な団体交渉権を持たない労組と締結した労働協約を破棄するとともに、当該労組を工場から排除する(注1)。
  • 当該労組の活動のために従業員の給与から控除した分を払い戻す。
  • 工場側と交渉する代表権を決める投票でSNITISが大勝した結果について中立性を保つ。
  • SNITISを従業員側の代表労組と認め、工場へのアクセスを与える。
  • 組合活動への参加を理由に解雇された26人の従業員を復職させるとともに、さかのぼって給与を支払う。
  • 工場での労働停止の結果として支払われなかった給与を支払う。
  • SNITISと新たな労働協約を締結すること(同協約が従業員の投票で承認された場合、相当な賃上げにつながる)。

これらに加えて、メキシコ政府が工場に対してさらなる査察を行うとしている。これにより、RRMに基づく紛争解決パネルが設置される前に事案が解決した。これまでRRMで提訴が行われた2件についても、パネル設置前に事案が解決している(2021年9月24日記事2021年8月12日記事参照)。キャサリン・タイUSTR代表は「バイデン政権が国境の向こうの人々も含めて、労働者の権利を守るとの約束を示す新たな事例だ」と事案解決を評価している。また、メキシコ政府への事実確認要請と同時に停止していた、パナソニック工場からの輸入に関する関税の清算を再開するよう財務長官に指示PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

(注1)この提訴が行われる前には、工場側はメキシコ労働者連合(CTM)傘下のメキシコ・マキラドーラ工員工業組合(SIAMARM)と労働協約を締結していた。しかし、SNITISとリシンク・トレードは、SIAMARMが代表権獲得投票(注2)で従業員を買収するなど違法行為を行ったとして提訴に踏み切った。

(注2)メキシコで201951日に公布された連邦労働法改正に基づき、新設された第390Bisで、労働協約を締結する組合が労働者の声を真に代表すること(最低でも職場の30%以上の労働者の署名が必要)を確認する組合間の投票プロセスが定められている(2019年5月7日記事参照)。

(磯部真一)

(米国、メキシコ、日本)

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