EU首脳、グリーン・ディール産業計画関連法案の早期成立に向けた速やかな審議を求める

(EU)

ブリュッセル発

2023年03月27日

EUは3月23日、欧州理事会(EU首脳会議)をブリュッセルで開催し、ウクライナ支援、経済・産業政策、エネルギー政策、移民・域外政策などに関する総括外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

総括によると、欧州委員会が米国のインフレ削減法の対抗策としてグリーン・ディール産業計画(2023年2月3日記事参照)を発表するなど、議論を呼んでいるEUの競争力強化策を巡って、欧州理事会は、生産性の強化や資金供給の円滑化に加え、手頃なエネルギー価格の実現、戦略的分野での依存軽減、経済や産業基礎のグリーン化・デジタル化対応を目指すべきとした。これは、欧州委がグリーン・ディール産業計画の下で発表した、電力市場改革法案(2023年3月16日記事参照)、重要原材料法案(2023年3月22日記事参照)、ネットゼロ産業法案(2023年3月20日記事参照)の目指す方向性と大枠で一致するものだ。欧州理事会は、特に規制環境の簡略化や、許認可の短縮などの行政手続きの軽減を進めるべきとし、グリーン・ディール産業計画の中核的な政策である重要原材料法案やネットゼロ産業法案の審議を進めることを求めた。また、電力市場改革法案に関しては、2023年末までの採択を目指すとの方針を示した。戦略的分野への公共投資に関しては、既存の予算(2023年2月24日記事参照)を最大限活用すべきとする一方で、欧州委が検討している新たな予算である「欧州主権基金」や加盟国間で意見が分かれている国家補助の緩和策(2023年3月15日参照)に関しては留意すると言及するにとどめた。

エネルギー政策については、欧州理事会は加盟国に対して、2023~2024年の冬季に向けて共同購入などを活用することで、ガスの備蓄計画(2022年7月4日記事参照)を進めることを求めた。欧州委に対しては、緊急対策として実施したエネルギー関連法(2022年12月21日10月3日記事参照)を評価した上で、必要に応じて適用延長を提案するように求めた。なお、ガス需要削減規則(2022年8月9日記事参照)については、欧州委は既に適用延長を提案している。

このほか、欧州理事会は、2023年で誕生から30年が経つEUの単一市場について、EU経済の繁栄の基礎となっていると評価。特にデジタルやサービスの分野の市場統合をさらに進めるべく、既存のEU法の執行と加盟国間の貿易障壁のより一層の低減を支持した。

欧州委は、原子力への優遇措置は限定的であるべきとの立場を明確に

欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、欧州理事会後の記者会見において、EUが推進すべき「戦略的ネットゼロ技術」に原子力を含めないことを明確にした。同委員長は、原子力が脱炭素化において一定の貢献を果たすことができる技術であり、エネルギーミックスは各加盟国が決定する事項であるとした一方で、原子力は、再生可能エネルギーとは異なり、ネットゼロ産業法案における優遇措置を全て受けることはできないとの欧州委の立場を強調した。

(吉沼啓介)

(EU)

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