イラン、中国・ロシアと関係強化、JCPOA再建協議は進展なく国内経済は悪化

(イラン、ロシア、中国、サウジアラビア)

テヘラン発

2023年01月10日

イランは2022年、ロシア、中国を中心に積極的な外交を繰り広げた。一方、2022年も断続的に開かれたイラン核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」再建に向けた協議は、8月以降は停滞し、年末にイラン側が譲歩の姿勢を見せているとの報道があったものの、大きな進展はみられなかった。

特にロシアとは、首脳会談だけで16794回行われ、イランとロシアの接近が続いた1年だった。

中国との関係も同様で、1月のホセイン・アミール・アブドゥラヒヤーン外相の訪中および王毅国務委員兼外交部長(当時)との会談を皮切りに、4月は魏鳳和国務委員兼国防相が来訪(202256日記事参照)、9月にはイブラーヒーム・ライーシー大統領と習近平国家主席との会談も行われた(2022922日記事参照)。12月には、中国・湾岸協力会議(GCC)サミットの共同声明に対してアブドゥラヒヤーン外相が抗議するという一幕もあったが、翌日には中国の胡春華副首相が来訪、ライーシー大統領と会談し、両国の関係強化について確認した(20221220日記事参照)。

また、12月にイランとサウジアラビアの外相がヨルダン・アンマンで会談、対話の機会が設けられる動きがみられた(20221226日記事参照)。

為替レートは乱高下、インフレも深刻

2022年のイラン・リアルの対米ドル為替は、JCPOA再建に向けた協議の進展などを要因として、市場レートで1ドル=25万~40万リアルの間で乱高下し、年末には過去最低の1ドル=41万リアルにまで下落した。

インフレも深刻な状況が続いた。特に、政府が鶏肉や乳製品などの食品の上限価格の値上げを発表した5月以降に深刻となり、イラン統計局によると、622日~722日(イラン暦1401年第4月)の消費者物価指数上昇率は、総合が前年同月比54.0%、食品・飲料が87.0%に達した。1122日~1221日(同第9月)の値は少し落ち着いたものの、総合は48.5%、食品・飲料は66.0%と依然として高い水準で推移している。

IMFはイランの2022年の実質GDP成長率を3.0%、2023年も2.0%のプラス成長と予測(202210月発表)しているが、2023年も引き続きJCPOAの再建協議の行方、米国、ロシア、中国、サウジアラビアなどとの外交関係に加え、国内の経済状況にも注視が必要だ。

(鈴木隆之)

(イラン、ロシア、中国、サウジアラビア)

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