ASEANでインフレ、通貨安により金融引き締め相次ぐ

(ASEAN、シンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ラオス)

アジア大洋州課

2022年11月30日

ASEANのインフレは、世界的な原油価格の下落により一部の国で上昇ペースが緩やかになるものの、各国の通貨安進行などで依然として高水準で推移している(添付資料図参照)。ASEAN主要国の9月の消費者物価指数(CPI)上昇率(前年同月比)は、シンガポールで7.5%と最も高かった(添付資料表参照)。タイ、フィリピンで6%超、インドネシアも6%に近い高水準だった。高インフレや通貨安により、主要国では利上げなどの金融引き締めの動きが相次ぐ。

シンガポールでは、7%を超える高水準が続いている。燃料価格や自動車価格の上昇は鈍化したが、食料品、住宅、サービスなどあらゆる価格が上昇している。シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)はインフレと通貨安に歯止めをかけるべく、10月に5回連続となる金融の引き締め方針を発表した(2022年10月19日記事参照)。

タイでは、燃料価格の下落や前年同月の物価高からの反動もあり、8月(7.9%)から1ポイント以上低下した。他方、製造コストの高騰や洪水の影響、財・サービスのへの需要拡大による物価上昇が続いている(2022年10月7日記事参照)。中央銀行は9月28日、2会合連続で利上げを行った(2022年10月3日記事参照)。

フィリピンでは、食料・非アルコール飲料の値上げによってインフレが進み、6.9%となった。特に2021年末の大型台風の影響や天候不順による供給不足が続く砂糖は上昇率が30.2%と最も高かった。9月には米国連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げを受け、現地通貨ペソ安が一段と進行し、最安値を更新した。インフレ圧力の高まりを受け、政府は9月22日、政策金利を0.5ポイント引き上げ、4.25%にすることを決定した。

インドネシアでは、政府による燃料価格引き上げが影響し、インフレ率は5.95%に加速した。中央銀行は10月17日、3会合連続となる利上げを行った(2022年10月31日記事参照)。

マレーシアでは、7月から9月にかけて4%台で推移した。ASEAN主要国の中では比較的落ち着いているものの、年初と比べて約2倍の高さとなっており、中央銀行は11月3日の金融政策会合で4回連続の利上げを決定した(2022年11月4日記事参照)。

ベトナムでは、インフレ率が3カ月ぶりに加速して3.94%となった。政府のインフレ目標である4%以内にとどまるが、インフレ抑制や通貨安進行に歯止めをかけるため、中央銀行は9月22日、政策金利を0.75ポイント引き上げた。

9月の統計が未発表のミャンマーを除き、ASEANで最もインフレ率が高かったのはラオスだ。通貨安と洪水による農産物の価格上昇などにより、9月のインフレ率は34.1%と、22年ぶりの高水準を記録した8月を上回った。

(山口あづ希)

(ASEAN、シンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ラオス)

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