金融の追加引き締めを発表、インフレに対応

(シンガポール)

シンガポール発

2022年10月19日

シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は10月14日、主要通貨に対してシンガポール・ドル(Sドル)高へと誘導し、金融の一段の引き締める方針を発表した。金融引き締めは、2021年10月にそれまでの金融緩和から方針転換した後、2022年1月、2022年4月、2022年7月に続き、5回連続となる。

同庁は政策金利ではなく、Sドルの名目実効為替レート(NEER)の誘導目標帯を定める金融政策を実施している。同庁は今回の発表で、SドルのNEERの誘導目標帯の「中央値を実勢水準まで再調整」する方針を明らかにした。誘導目標帯の傾き、および幅に「変更はない」とした。

MASは今回の引き締め方針について、「輸入インフレ率をさらに低下させ、国内のコスト圧力を抑制させる。短期的にはインフレを抑制し、中期的な物価の安定を確保し、持続的な経済成長の基盤となる」とした。同庁は、2022年通年のコアインフレ率(宿泊費と自家用道路交通費を除く)の予測を「約4%」と、これまでの予測レンジ「3.0~4.0%」の上限付近に設定した。また、2023年については「3.5%~4.5%」との見通しを示した。また、「輸入インフレは依然として深刻であり、タイトな労働市場が強い賃金上昇を後押ししているため、コアインフレ率は今後数四半期にわたって上昇し続ける」とした。

世界的な需要の縮小で、経済成長はより緩やかなペースへ

貿易産業省(MTI)の同日の発表によると、2022年第3四半期(7~9月)の経済成長率(実質GDP成長率)が前期比1.5%(季節調整済み)と、前期(マイナス0.2%)から反転した(注)。MASは今回の金融政策発表の中で、第3四半期のGDP成長率が拡大したことに触れながらも、「今後数四半期において、世界大での金融政策引き締めが経済活動に及ぼす影響が強まる。インフレ率は緩やかになるが、しばらくの間は高止まる。シンガポールの主要貿易相手の(経済)成長がトレンドを下回るまで減速する」などとの見方を示した。2022年のGDP成長率を「3~4%」と7月の金融政策発表時の見通しを維持する一方で、2023年は「トレンドを下回るペースで成長し、現在の緩やかなプラスの産出量ギャップが反転する可能性がある」とした。

(注)MTIは11月中旬に第3四半期GDPの改定値を発表する予定。

(朝倉啓介)

(シンガポール)

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