中銀、政策金利を8%に引き下げ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年08月01日

ロシア中央銀行は、722日に行われた理事会で主要政策金利(キーレート)を9.5%から8%とすることを決定し、202112月以来の最低水準とした(2022年6月14日記事参照)。適用は25日から(添付資料図参照)。

引き下げの背景として中銀は、通貨ルーブル相場の安定(2022年4月12日記事参照)と、足元の消費者物価上昇率が低い状態にあることが年間でみたインフレ率の減速に寄与していることを挙げた。2022年下半期にも、追加の利下げを検討する可能性について示唆した。

エリビラ・ナビウリナ総裁は、ロシア経済の外部環境は依然として困難で、経済活動を著しく制限しているが、企業の景況感と消費者活動は徐々に回復しつつあると述べた。SPグローバルが71日に発表した6月のロシア製造業購買担当者景気指数(PMI)は、50.9(前月比0.1ポイント増)となり2カ月連続で景気判断の基準とされる50を上回った。5日に発表したサービス部門PMI51.7(前月比3.2ポイント増)と基準を上回っている。

ロシア連邦国家統計局によると、6月の消費者物価上昇率は前月比マイナス0.35%(前年同月比15.90%)、食品はマイナス1.10%(17.98%)、非食品はマイナス0.41%(17.92%)、サービスは0.88%(10.17%)となり、ウクライナへの軍事侵攻以降に発生した物価の高騰も収まった(2022年4月14日記事参照)。なお、6月の生産者物価上昇率も前月比マイナス4.1%(前年同月比11.3%)となった。

VTBバンクのアナトリー・ペチャトニコフ副頭取は、銀行の短期預金の平均利回りは7.6%で安定しており、利下げをしても侵攻以降にみられた銀行からの資金流出(注)はないだろうと述べた。フリーダム・ファイナンスのアナリストは、利下げによって商業銀行の貸付利率が低下し、企業は低金利で資金を調達しやすくなる可能性があると説明した(コメルサント722日)。中銀とロシア政府は、国内の景気刺激策として4月以降の利下げによる金融緩和と融資支援策による貸し付けを推進している(2022年6月1日記事参照)。

ナビウリナ総裁は、2022年のインフレ率は1215%、実質GDP成長率はマイナス4.06.0%になるとした。しかし、2024年にインフレ率は目標の4%に戻り、GDP1.52.5%のプラスに転じると説明した。

(注)2月下旬から3月上旬にかけて、国民は信用不安により、銀行から24,000億ルーブル(約55,200億円、1ルーブル=約2.3円)もの預金を引き出したため、銀行の貸し出し原資が不足していた(2022年4月25日記事参照)。

(小野塚信)

(ロシア)

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