ロシア、利下げと資本規制緩和で景気下支えの方針

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年06月01日

ロシア中央銀行は5月27日、ルーブル高でインフレ圧力が低下したため主要政策金利(キーレート)を14%から11%に引き下げた。ロシアはインフレリスクを抑制しつつも金融緩和による貸し付けの促進と財政支出による貸付支援、資本流出を止めるために導入した資本規制を緩和させて景気の刺激を図る。

4月11日から3回連続の利下げを決定(2022年5月9日記事参照)した背景には景気の悪化懸念がある。西側諸国の制裁によって経済活動が著しく悪化する中、今後12カ月の期待インフレ率(中央値)は11.5%(前月比1ポイント減)と、2カ月連続で縮小した(中銀「インフレ期待と消費者心理」5月25日)。2022年の実質GDP成長率もマイナス成長にとどまる見込み(2022年5月23日記事参照)。

中銀のエリビラ・ナビウリナ総裁は26日に開催されたロシア銀行協会の会合において、企業への貸し出しが減少している点について触れ、消費者物価上昇率も低いことから次回6月10日の決定会合でも追加の利下げを示唆した。利下げに伴い政府は企業向けの融資支援を増やす。26日には「中小企業の発展に関する政府委員会」が開催され、ミハイル・ミシュスチン首相が企業や中小企業向け融資、個人向け住宅ローンの貸し出しを推進すると説明した。モスクワ市も26日に優遇金利での貸し出しプログラムを拡充させ市場金利を下回るレートで貸し出しをすると発表した。

中銀は資本規制も相次いで緩和している。20日からドルとユーロを除く外貨販売制限を撤廃し、ロシアの銀行は外貨を国民に販売できるようになった。23日には輸出企業に外貨収入のルーブルへの両替を義務づける比率を80%から50%へ引き下げ、26日に輸出企業の外貨収入の売却期限を60営業日から120営業日に延長した。資本規制はルーブルを上昇させ輸入のコスト削減とインフレを抑制する。しかし、ロシアは制裁で輸入が制限されているため輸入企業の利点が少ない。ガス会社などの輸出企業にとってもルーブル高は為替換算により売り上げが減少する(「プロファイナンス」5月27日)。ロシアのガス輸出契約のほとんどがユーロまたは米ドル建てのためだ(「ロイター」4月26日)。

ナビウリナ総裁は、2023年のインフレ率は5~7%になり、2024年には目標の4%に戻ると説明している。

(小野塚信)

(ロシア)

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