カナダ政府、VW、メルセデスとEV・バッテリー生産における協力で覚書締結

カナダのフランソワ・フィリップ・シャンパーニュ・イノベーション・科学・産業相は8月23日、ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン（VW）およびメルセデス・ベンツと覚書を交わし、電気自動車（EV）およびバッテリー生産における協力関係強化を発表した。トロントで開催された覚書調印式には、カナダのジャスティン・トルドー首相とドイツのオラフ・ショルツ首相も同席した。

フォルクスワーゲンとの覚書は、持続可能な電池の製造、正極活物質の製造、重要鉱物の供給などに関する協力関係の深化のほか、フォルクスワーゲンの新電池会社「パワーコ」のカナダ拠点の設立に重点を置く。また、メルセデス・ベンツとの覚書は、EVおよびバッテリーのサプライチェーンにおけるカナダ企業との協力関係の強化、環境・社会・ガバナンス（ESG）の原則に基づくカナダにおける持続可能な重要鉱物のサプライチェーンの開発支援、研究開発における協力、カナダへの潜在的な投資の特定を重点としている。

シャンパーニュ・イノベーション・科学・産業相が5月にドイツを訪問し、企業関係者にカナダの自動車産業の価値を伝え、カナダが持続可能で信頼できるパートナーであることを強調したことが契機となり、今回の調印に至ったという。同相は、7月に日本も同様の目的で訪れている（2022年7月12日記事参照）。同相は「両社との提携により、カナダは、クリーンな輸送ソリューションを提供する世界水準の自動車イノベーションエコシステムにおけるリーダーとしての役割を強化している。カナダは、ここ北米において強固で信頼性の高い自動車およびバッテリーのサプライチェーンを構築し、世界の気候変動目標達成を支援していくことを約束する」とコメントした。

今回の発表を受け、カナダの先進製造業業界団体エヌ・ジェン（NGen：Next Generation Manufacturing Canada）のジェーソン・マイヤーズ最高経営責任者（CEO）は「（カナダのように）環境への配慮を行う民主主義政府によって、鉱物資源の管理が行われている国家は世界でもそう多くはない」と述べた上で、2社との覚書は、単に鉱物へのアクセスにとどまらず、プロセス全体の改善方法や環境的に持続可能なノウハウの構築という意味で、カナダの技術者や製造業者に多大な機会を提供することになると述べている（「グローブ・アンド・メール」紙8月23日）。

カナダでは昨今、ホンダ（2022年3月17日記事参照）、ゼネラルモーターズ（GM、2022年4月6日記事参照）、ステランティス（2022年5月10日記事参照）、EVバッテリー用正極材など製造のユミコア（2022年7月14日記事参照）などが、EVや関連製品生産に向けた投資について相次いで発表している。

（飯田洋子）