バイエルン州、ウクライナ情勢を受けたエネルギー政策を発表

(ドイツ、ウクライナ、ロシア)

ミュンヘン発

2022年06月09日

ドイツ・バイエルン州議会で5月31日、フーベルト・アイバンガー同州経済・開発・エネルギー相が、ウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰などを受けた州内のエネルギー政策方針について、所信表明演説を行った外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ドイツ連邦政府は、ロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギー情勢の変化に対して、液化天然ガス(LNG)の輸入(2022年3月11日記事5月17日記事参照)や、再生可能エネルギー拡大に向けた関連法改正(2022年4月18日記事参照)、エネルギー確保法改正(2022年5月2日記事参照)など、矢継ぎ早に対応を進めている。

バイエルン州でも、州内の経済団体バイエルン経済連盟(vbw)が2022年4月、天然ガス供給が短期的に停止した場合、2割以上の企業が「生産またはビジネスが完全に停止」と回答したアンケート結果を発表するなど(2022年4月26日記事参照)、州レベルの対応が求められていた。今回のエネルギー政策方針は、バイエルン州政府が5月17日に閣議決定したもので、(1)エネルギー供給の確保、(2)妥当な価格、(3)再生可能エネルギーの拡大の3つの柱から成る。

所信表明演説で、アイバンガー氏は「エネルギー供給の確保」について、天然ガス貯蔵がカギとし、連邦政府に対して11月初めまでに貯蔵率最低9割を確保することを求めた。また、LNG輸入ターミナルの建設や天然ガスによる発電を、一部石炭で代替する必要性も指摘した。併せて、現在稼働中の国内の原子力発電所(注)を当面2023年春まで稼働延長することを検討すべきとした。「価格」については、同氏は連邦政府に対して、2022年中に電力税をEU加盟国最低レベルに引き下げること、電気などに対する付加価値税の軽減税率適用などの減税措置などを求めた。

「再生可能エネルギーの拡大」については、バイエルン州は2025年までに発電電力量に占める再生可能エネルギー比率を7割まで引き上げることを目標に掲げる。2020年の割合は52.3%で、連邦全体(44.1%)よりも高い。ただし、風力発電の割合が6.4%と連邦全体(23.3%)よりも大幅に低い。北ドイツなどに比べて風が吹きにくい、海がなく洋上風力発電ができないなどの地理的要因もあるが、州独自のルールである、近隣建物などと風車の距離を風車の高さの10倍以上確保する、いわゆる「10Hルール」が理由とする見方もある。

同州政府が閣議決定したエネルギー政策方針では、アウトバーンや線路沿い、森林地域などの風車や、工場地域の風車などに対し「10Hルール」を緩和し、最低1,000メートルの距離を確保すればよいとする予定だ。これにより、全土地面積の2%を風力発電に利用できるようにする。2%目標は、連邦政府の2021年11月の連立協定書にも明記されている。同州政府は、今後数年で最低800基の風車を設置、現在の2.5倍の最低4ギガワットを風力で発電するとしている。

(注)ドイツでは2022年末までに原子力発電所を全廃する。

(高塚一)

(ドイツ、ウクライナ、ロシア)

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