ドイツ連邦政府、エネルギー危機に備えてエネルギー確保法の改正案決定
(ドイツ、ウクライナ、ロシア)
デュッセルドルフ発
2022年05月02日
ドイツ連邦政府は4月25日、ロシアによるウクライナ侵攻の影響でエネルギー市況がさらに悪化する場合に備え、エネルギー確保法の改正案の起草支援(注)を閣議決定した。エネルギー確保法は、エネルギー供給が危機にひんしたり妨げられたりした際の、危機管理の包括的な対策を定めている。同法は石油危機を背景に1975年に施行されたもので、今回の改正案は危機予防策を強化し、緊急時に迅速に対応できるようにすることを目指している。
具体的には、重要なエネルギーインフラを運営する企業が業務を十分に遂行できなくなり、エネルギーの安定供給が損なわれる恐れがある場合、同企業を一定期間、信託管理下に置くことが可能になる。また、エネルギー安全保障が他の手段で確保できない場合には、最終手段として、具体的かつ厳密な条件の下で同企業の収用も可能にする。
また、天然ガスのデジタルプラットフォームを構築することにより、緊急時に効率的にガスを提供・割り当てできるようにして、供給危機の場合でもガス供給の確保を図る。大手製造業者やガス取引業者が同プラットフォームに登録し、ガスの購入量や消費量などに関するデータを提供する。ガスが不足した場合、同データを基にエネルギー使用量を削減できる分野や方法を迅速に把握し、必要に応じて企業の操業停止を可能にすることを目指している。
さらに、連邦ネットワーク庁が第三国からの天然ガス供給の停止または大幅な減少を確認した場合、サプライチェーンの中で影響を受ける全てのエネルギー供給者がガス販売価格を適正な範囲で調整できる権利を与える。前提条件は「ガスに関する緊急計画」が定める「警報(alert)」または「緊急(emergency)」の段階(2022年4月12日記事参照)に準ずるガス輸入量の大幅な減少だ。エネルギー供給者の損失によりサプライチェーンから最終消費者まで市場全体に深刻な障害が生じるため、例外的に一定期間、厳密な条件の下で価格調整を可能とすることにより、エネルギー輸入者が財政難に陥り市場全体へ影響を及ぼすことを防ぐ。
今回の起草支援には、エネルギー確保法に加え、エネルギー産業法の改正案も含まれる。エネルギー産業法の改正により、今後はガス貯蔵施設やガスパイプラインとの接続の暫定的・最終的・部分的な廃止に関して、連邦ネットワーク庁の事前承認が必要となる。
起草支援は今後、連邦議会(下院)に提出される予定。
(注)起草支援(Formulierungshilfe)とは、正式な法案や改正法案になる前段階の素案・草案の状態のもの。
(ベアナデット・マイヤー)
(ドイツ、ウクライナ、ロシア)
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