中国の新型コロナ感染者は世界の0.1%未満、4月以降は上海除き大規模感染なし

(中国)

中国北アジア課

2022年05月30日

中国国家衛生健康委員会の発表によると、5月23日の中国の新型コロナウイルス新規感染者数(無症状感染者は含まず。以下同)は156人だった。

新規感染者数は、3月に入って増加が顕著となり、4月中旬には一時3,000人を上回る水準で推移したが、5月21日以降は200人を下回り、落ち着きをみせている(添付資料図1参照)。新規感染者数とは別途発表されている無症状感染者数も4月12日の2万6,525人を最多としてピークアウトし、5月23日時点では532人まで減少している(添付資料図1参照)。

23日の新規感染者数を地域別にみると、上海市で58人と全体の37.2%を占め、次いで北京市が41人と同26.3%を占めた。

地域別(各省・自治区・直轄市別)の新規感染者数について、経済統計データベースのCEICで主な感染拡大例をみると、オミクロン株による感染が拡大した2022年以降に複数の地域で感染拡大例が発生。とりわけ3月には1日当たりの新規感染者が100人を超える事例が広東省、山東省、吉林省、福建省、上海市で相次いで発生。うち広東省や吉林省では、収束に1カ月以上を要する事態となった(2022年4月1日記事参照)。上海市での感染拡大では、3月末からの封鎖措置が長期化し、市民生活や経済活動に甚大な影響をもたらしている。

しかし、4月以降はその他の地域での1日当たり100人を超える規模の新たな感染拡大例は発生していない(添付資料図2参照)。中国政府は「動態(ダイナミック)ゼロコロナ」政策(注1)の堅持を重ねて強調しており(2022年4月11日記事2022年5月19日記事参照)、各地域で感染の封じ込めがいっそう徹底されている様子がうかがえる。足元では、北京市で4月23日以降、50人前後の感染者が確認されており、感染拡大防止抑制策が強化されている(2022年5月24日記事参照)

致死率も低下

中国の感染者数は、世界の主要国との比較では、極めて低いレベルに抑えられている(添付資料表参照)。中国の累計感染者数は22万3,488人と、世界に占める割合はわずか0.04%にとどまる(5月23日時点)。また、中国の致死率(注2)は2.3%と世界平均(1.2%)を上回るが、中国の累計死亡者数(5,224人)の約9割が2020年4月までの感染対応初期段階(注3)に集中している。その後はワクチン接種の進展もあり、オミクロン株が拡大したとされる2022年1月から直近5月23日までの死亡者は588人、致死率は0.5%に低下している。

中国の専門家チームは新型コロナウイルス流行収束の具体的条件として「ウイルスが変異によりさらに弱毒化し、発病率・感染力がさらに低下した場合」などを例示しているが(2022年3月24日記事参照)、今後の国内外の感染動向などを踏まえた新型コロナ政策の行方に引き続き注目が集まる。

(注1)中国政府は現在展開している「動態(ダイナミック)ゼロコロナ」政策について、国内の「感染者の発生をゼロにする」ものではなく、感染者の能動的かつ迅速な発見を行い、感染者に対して速やかに疫学的調査、診断、隔離、治療を行い、コミュニティー(社区)で持続的に感染が広がることを防ぐという防疫戦略だとしている。

(注2)累計感染者数に占める累計死者数から割り出し算出。

(注3)中国国家衛生健康委員会の馬暁偉主任は、5月16日公表の中国共産党中央委員会の機関誌「求是」(2022年第10期)の中で、中国の新型コロナ対応の変遷を4段階に分けて説明。うち2020年1~4月を、第1段階(突発的な感染拡大の緊急封じ込め段階)とした(2022年5月20日記事参照)。

(小林伶)

(中国)

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