ドイツ・バイエルン州、水素活用のためのロードマップを発表

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年05月09日

ドイツ・バイエルン州の水素クラスター「H2.Bayern外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は4月25日、「水素ロードマップPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。本ロードマップは、同州が2020年に発表した「水素戦略」で作成するとされていた(2020年6月5日記事参照)。州内の水素需給見通しを分析するとともに、水素ビジネスが州内企業に提供する機会などを示した。またドイツ全体(2021年7月6日記事参照)より5年早い2040年までに気候中立を目指す同州にとって、水素は当該目標達成のカギになるとして、2030年までの具体的目標を示した(注1)。

まず需要について、水素および合成燃料など水素を利用した合成エネルギーの州内需要は、2020年は年間5テラワット時(TWh)、2030年には約10TWh、2040年には33~75TWhに拡大する可能性があるとした。拡大する需要は州内での供給だけでは満たせないため、ドイツ他地域や国外からの調達必要性を指摘した。現在、欧州やドイツ全土を結ぶ水素パイプライン計画が進行中であり、バイエルン州は2035年にこのパイプラインに接続する計画があるが、これを5年前倒しし2030年に達成すべきとした。

一方で、州内における水素製造も同時に進める必要があるとした。2030年に水素パイプラインに接続すれば、他地域からの供給があるため、州内での水素製造は0.3~1.7ギガワット(GW)、従前の計画どおり2035年接続では、3~10GWの水素製造が必要と見積もられた。これを受けて、水素製造電解装置を2025年までに州内で最低300メガワット(MW)、2030年までに最低1GW導入するとした。なお州内では、民間企業でも水素製造ビジネスが進んでいる(2021年7月29日記事2022年2月1日記事2022年3月11日記事参照)。

交通部門では、2025年までに公共交通機関で燃料電池バスを500台導入、燃料電池トラックと合成燃料トラックを500台導入するとした。州内の水素充填施設もさらに拡充する。既に州政府は水素充填(じゅうてん)ステーション建設への助成などを通じ、充填施設の拡充を進めている(2020年10月7日記事参照)。

水素市場の拡大は、州内産業に直接的なビジネス機会も提供するとした。具体的には、州内企業は水素製造装置、設備の配管・バルブ、水素搬送システムなどに強いという。水電解技術、液体有機水素キャリア(LOHC、注2)など水素貯蔵・搬送技術でも優位性を持つ。例えば、州内に本社がある自動車部品大手シェフラーは2022年1月、LOHC燃料電池の開発のため、他企業・研究機関と協力の覚書を締結した(2022年2月9日記事参照)。

(注1)バイエルン州以外の州レベルでの水素戦略の概要は、ジェトロ調査レポート「ドイツにおける水素戦略と企業ビジネス動向」(2021年4月)を参照。

(注2)LOHCはLiquid organic hydrogen carriersの略。化学反応によって水素を吸収・放出できる有機化合物。

(高塚一)

(ドイツ)

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