バイデン米大統領、記者会見で就任1年間の成果強調

(米国)

ニューヨーク発

2022年01月20日

ジョー・バイデン米国大統領は1月19日、翌日に就任1周年を迎える中、2021年3月以来(2021年3月26日記事参照)となる単独の公式記者会見を開催した。バイデン大統領は新型コロナウイルス対策や雇用回復、インフラ投資計画法の成立などこの1年間の成果を強調した。一方、11月に中間選挙を控える中、政権・議会民主党の目玉政策のビルド・バック・ベター(BBB)法案や投票関連法案が滞っている事実を記者が指摘するなど、厳しい質問が相次いだ。

記者会見はバイデン大統領の支持率が就任以降で最低レベル(注)に落ち込んでいる中で行われた。米主要メディアは、政権はこの会見を中間選挙に向けた「リセット」の機会として活用する意向とみていた。ホワイトハウスは会見に合わせて、政権がこれまでに達成した成果をまとめたファクトシートを2つ発表している。具体的な成果を取りまとめたファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、新型コロナワクチンの接種促進から始まり、1兆9,000億ドルの米国救済計画法(2021年3月16日記事参照)やインフラ投資雇用法(2022年1月20日記事参照)の成立などを強調した。米国史上初の成果をまとめたファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、1年間の雇用創出が過去最多となる600万人以上、失業率の減少幅(就任時の6.2%から3.9%)が過去最大、失業保険申請数の減少幅(就任時の1,800万件以上から200万件)が過去最大など、経済面の成果を前面に出している。最近の世論調査によると、経済悪化の要因として「インフレ」や「サプライチェーン問題」などが上位を占めている(2022年1月20日記事参照)。そのためか、バイデン大統領は会見冒頭でも、こうした経済面での成果を繰り返し強調した。

一方、記者からは、昨年来、政権・議会民主党が推進してきた教育・育児支援や気候変動対策を含めた約2兆ドルのBBB法案が党内の不和で停滞していることや(2021年12月23日記事参照)、年明けから注目を集めている投票権関連法案について共和党の反対で成立の見通しが低い点など(2022年1月18日記事参照)、厳しい質問が出た。バイデン大統領はいずれの案件にも、野心を捨てることはないとしつつ、BBB法案については「現法案を分割して今できる限りの部分を成立させ、残りについては後で議論できるだろう」と、現状にこだわらない考えを示した。

外交に関しては、最近緊迫しているウクライナをめぐるロシアとの関係について質問が集中した。バイデン大統領は、具体的には言及できないが、ロシアがウクライナを侵攻した場合は重大な結果を招くことになると述べた。中国との通商交渉に関して、対中追加関税を撤廃する可能性についての質問が出たが、通商代表部(USTR)がまさに交渉中であり、結果はどうなるか現時点では「分からない」と答えるにとどまった。

(注)米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスの集計によると、1月19日時点の平均支持率は40.9%と、就任以来で最低を記録している(不支持率53.3%)。

(磯部真一) 

(米国)

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