米上院民主党議員、ビルド・バック・ベター法案反対を表明、成立不透明に

(米国)

ニューヨーク発

2021年12月23日

米国民主党のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)は12月19日、人的投資や気候変動対策を盛り込んだ2兆ドル規模のビルド・バック・ベター法案(BBB法案)への反対を表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。上院では与野党勢力が拮抗(きっこう)しており、民主党から1人でも造反が出れば法案が成立しない状況にあり、同議員の反対により法案成立は不透明となった。BBB法案はクリスマスまでの成立を当初目指していたが、同議員の反対を理由に協議が数週間かかる見通しであることが大統領府から12月16日に発表されたばかりだった。

同議員の声明によると、反対理由として財政への悪影響や高インフレ加速の恐れを挙げている。しかし、これらは同議員がこれまでにも主張していた点であり、このタイミングでの反対表明について、同議員は「大統領府スタッフによる許しがたい行動があった。バイデン大統領(が原因)ではない」と語った(ロイター12月20日)。「ワシントン・ポスト」紙によると、同議員は、10年間の就学前教育無償化や気候変動対策、処方薬の価格引き下げ拡大などを盛り込んだ1兆8,000億ドル規模の代替案をバイデン大統領をはじめ大統領府に提示していたとされる。しかし、ジョー・バイデン大統領が交渉すると約束したにもかかわらず、数カ月前から自身が反対している条項を大統領スタッフは法案に押し込もうとしたと同議員は語っており(ブルームバーグ12月20日)、こうした一連のやり取りを契機として今回の反対表明につながったもようだ。

投資銀行のゴールドマン・サックスは、これらを受けて、2022年第1四半期(1~3月)の成長見通しを3%から2%に下方修正した(「フォーブス」電子版12月20日)。同議員が反対している児童税額控除延長措置(注)の実現見通しが低いことを主因に挙げている。

同議員の反対表明を受けて、民主党内から批判が相次いだ。民主党のチャック・シューマー上院院内総務(ニューヨーク州)は同議員による反対を記録に残すべきだとして、年明け早々にBBB法案の採決を行う考えを示した(ブルームバーグ12月20日)。同議員は石炭産業が盛んな州の出身で、法案反対の背景には地元への配慮があるとみられているが、米鉱山労働者組合はBBB法案にはじん肺症への手当や再雇用に対する税制優遇などが含まれていることから、同議員にBBB法案反対の再考を要請している。

同議員は、BBB法案が自身の要望に沿ってきちんと見直されれば再考する考えも示しており、反対表明同日の夜に早速、バイデン大統領と電話協議したとされる(ブルームバーグ12月20日)。しかし、BBB法案が大幅に変更されれば党内左派からの反発は必至で、その場合、再審議される下院で行き詰まる可能性がある。解決の糸口が見つからない中、バイデン政権には難しい調整が求められている。

(注)現在、子供1人当たりの控除額が年間最大2,000ドルから3,600ドルに拡大されている。また、控除額の還付が年間一括だったが、半額分が月ごとの還付に変更されている。これらの措置は2021年末に期限切れとなる。

(宮野慶太)

(米国)

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