COP26で13のイニシアチブに署名、南アのグリーン水素技術に7億ユーロ拠出表明

(ドイツ)

ベルリン発

2021年11月16日

英国で開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が11月13日に閉幕した。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は1日、首脳級会合の開会式で演説し、「気候変動対策は政府の活動だけでは前進しない。私たちの生活、仕事、経済の総合的な変革の問題だからだ。そのため、この変革を促すカーボンプライシングの必要性を明確に表明する」として気候中立達成に向け訴えた。

ドイツは、14のイニシアチブに参加し、そのうち13のイニシアチブに署名した。具体的には、「石炭火力発電からの脱却に関する共同声明」(2021年11月5日記事参照)、「化石燃料への補助金廃止に関する共同声明」「エネルギー・交通・鉄鋼・水素分野の気候変動対策に関するグラスゴー・ブレークスルー共同声明」(2021年11月4日記事参照)、世界のメタン排出量を2030年までに2020年比で30%削減する「グローバル・メタン・プレッジ」など。なお、ドイツは「新車販売のゼロエミッション化に関する共同声明」には署名していない(2021年11月12日記事参照)。

また、ドイツは2日に英国や米国、フランス、EUとともに、南アフリカ共和国と「公正なエネルギー移行パートナーシップ」を締結したと発表した(2021年11月4日記事参照)。これは南アのエネルギー変革、特に石炭火力発電の段階的廃止を推進するもので、同国のグリーン水素を含む技術革新に資金提供することが目的。ドイツは約7億ユーロを拠出する。

ドイツ産業連盟(BDI)は15日、「COP26では気候保護のために喫緊に必要な大きな飛躍が達成されず、産業界は遺憾に思う」とコメントした。二酸化炭素(CO2)排出量制限が厳しくない国に生産活動が移転した場合、例えば、EU域内にある既に多額の資金負担を強いられている企業にとっては、さらに負担が増えると指摘。全世界での石炭火力発電の段階的廃止合意が骨抜きとなり(2021年11月16日記事参照)、今後、ドイツ企業が公平な競争環境で事業活動が行えなくなるとの懸念を示した。一方で、CO2排出削減量の取引を国際的に行う「市場メカニズム」に賛同した国が増加し、パリ協定第6条ルールブックが採択されたことは、産業界として非常に意義深いとして評価した。

ドイツ機械工業連盟(VDMA)は14日、「CO2排出量削減に関する妥協、石炭火力発電を段階的『削減』とすることになったが、全体としてはポジティブに受け止めている」とCOP26の成果を評価。さらに、米国と中国の共同宣言(2021年11月15日記事参照)、発展途上国や新興国に対する支援の強化は、建設的な節目となったとした。ただし、自動車の「新車販売のゼロエミッション化に関する共同宣言」については、「ゼロエミッション」ではなく「カーボンニュートラル」と規定すべきだとして、批判的な見方を示した。

(中村容子)

(ドイツ)

ビジネス短信 88f3f9109db1963d