欧州部からシベリアに至る7州に優先的社会経済発展区域(TOR)設置

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年04月26日

メドベージェフ首相は4月12日、ロシア欧州部からシベリアに至る7つの連邦構成体に、優先的社会経済発展区域(TOR)を追加で創設する一連の連邦政府決定(2019年4月12日付第426~432号)に署名した。対象となったのは、オリョール州ムツェンスク、チェリャビンスク州ミアス、ボルゴグラード州ミハイロフカ、ノボシビルスク州ゴルヌィ、トゥーラ州アレクシン、ノブゴロド州ボロビチ、キーロフ州ベラヤ・ホルニツァ(添付資料参照)。いずれもソ連時代から続く単一産業都市(モノゴロド)で、特定の産業に依存した経済構造からの脱却を目指す。

各TORの決定には、想定される投資プロジェクト案件が記載されている。これについて、メドベージェフ首相は「各プロジェクトは成就すべきであり、モノゴロドに新しい生活を生み出す効果的な方法となってほしい」と期待を示した。ビタリー・ムトコ副首相は、7地域合計で約350億ルーブル(約595億円、1ルーブル=約1.7円)の投資と7,000人以上の新規雇用が期待されており、10年間で370億ルーブル以上の税収など国庫収入が見込まれると述べている(インターネットニュース「グローバルMSK・ルー」4月16日)。

今回の対象となった都市の規模は人口9,000人から15万人と非常に幅広い。対象とする産業分野も、製造業だけでなく、農業・畜産業、廃棄物処理、飲食業・宿泊業・スポーツ・レクリエーション施設運営といったサービス業など多岐にわたっている。産業多様化に向け、なるべく多くの事業活動を対象に、幅広く投資受け入れと雇用創出を図っていく姿勢がうかがえる。優遇を得るにはTORの入居企業となる必要があり、その場合、最低投資額(250万ルーブル以上)、新規の無期雇用者数(10人以上)をクリアしなければならない。2028年までの優遇期限も定められている。

なお、TORは入居企業に法人税と資産税、土地税、社会保険料率(雇用主負担分)などに優遇措置を与える制度で、当初、極東地域の産業振興の起爆剤として導入された(2015年4月14日記事参照)。2016年1月からは、タタルスタン共和国ナベレジヌィ・チェルヌィを皮切りに、対象地域を極東に限定せず、「モノゴロド」型のTORを創設している(2016年3月10日記事2017年10月4日記事2018年3月23日記事2019年2月1日記事参照)。今回の7カ所追加でTORの全体数は約110件に達した。

(齋藤寛、加峯あゆみ)

(ロシア)

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