新特区を極東以外にも拡大、新たに3ヵ所を認定

(ロシア)

モスクワ発

2016年03月10日

 政府は1月28日、極東地域から沿海地方のボリショイ・カメニ、極東地域以外からロストフ州グコボ、タタルスタン共和国ナベレジヌィ・チェルヌィの計3ヵ所を、極東地域に新設される特区「優先的社会経済発展区域(TOR)」に認定した。極東地域以外の都市がTORに認定されるのは初めて。ボリショイ・カメニは造船業の振興に重点を置き、グコボとナベレジヌィ・チェルヌィはいずれも企業城下町からの脱却と産業の多角化を目指している。

<造船複合体への日本企業の参加を呼び掛け>

 メドベージェフ首相は128日、ボリショイ・カメニをTOR(2015年4月14日記事参照)に指定する連邦政府決定第43号に署名した。沿海地方で3ヵ所目、極東連邦管区で10ヵ所目のTORとなる。

 

 ボリショイ・カメニTORの中核となる企業は、近代化が計画されている造船所「ズベズダ」だ。ズベズダは極東造船・船舶修理センターの一部で統一造船会社の子会社だが、事実上国有石油会社ロスネフチが管理している。

 

 極東造船・船舶修理センターの発表資料によると、ズベズダの近代化プロジェクトは3段階で進められる。第1段階(20122019年)では中規模造船施設、第2段階(20182022年)は大規模造船施設、第3段階(20212024年)は海上造船施設が建設される(2015年8月27日記事参照)。近代化されたズベズダ造船複合体は7,500人を雇用し、ロスネフチ、ロシア天然ガス最大手ガスプロム、海運大手ソフコムフロートなどから受注する予定。

 

 TORの入居事業者は優遇税制(法人税の5年間免除など)、自由保税地域、行政手続きの簡素化、その他インセンティブを享受することできる。TORの入居資格を得るための最低投資額は50万ルーブル(約75万円、1ルーブル=約1.5円)で、対象は51業種となっている。

 

 連邦政府がTOR内の道路、送電網、水道・ガス供給設備などのインフラ整備に予算を投じるが、「これら関連費用は2016年予算の削減の対象とならない」とアレクサンドル・ガルシカ極東発展相は述べている(極東発展省ウェブサイト126日)。

 

 ロスネフチのイーゴリ・セーチン会長は2015116日に東京で開催された「日露間のエネルギー協力に関する国際会議」(笹川平和財団主催)で、日本の造船会社や造船設備メーカーに対し、ロシアの大陸棚開発における主要な技術パートナーとしてズベズダ造船複合体に参画してほしいと呼び掛けた。

 

<企業城下町の産業多様化を目指す>

 ボリショイ・カメニに加え、メドベージェフ大統領はロストフ州グコボ、タタルスタン共和国ナベレジヌィ・チェルヌィの2都市をTORに認定した。極東地域以外のTORは初めて。

 

 ウクライナ東部に隣接するグコボは石炭採掘グコボウゴリ、ナベレジヌィ・チェルヌィはトラック製造大手カマズの企業城下町で、「単一産業都市(モノゴロド)」として連邦政府に認定されている。TORを単一産業都市に拡大することは2015622日付連邦政府決定第614号に基づいている。政府は認定理由として、これらの都市の産業構造の多角化に向け、単一産業には直接関連しない新規雇用を拡大するためと説明している。

 

 グコボTORの入居対象は17業種で、最低投資額500万ルーブル、最低雇用者数20人が入居資格を得る基準となっている。ナベレジヌィ・チェルヌィTOR24業種で、最低投資額5,000万ルーブル、最低雇用者数30人だが、入居1年以内に500万ルーブルの投資と20人の雇用が必要とされる。

 

 グコボでは2025年までに5,000人の新規雇用創出を目指しており、既に22件の投資プロジェクトの申請が見込まれている。ナベレジヌィ・チェルヌィでは1万人の新規雇用と少なくとも年20%の投資・税収増を見込む。

 

(齋藤寛、タギール・フジヤトフ)

(ロシア)

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