新特区法が施行、税や雇用で優遇措置−整備始まる極東の投資誘致制度(1)−

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2015年04月14日

ロシア極東地域に設置される新しい特区「優先的社会経済発展区域(TOR)」に関する法律が3月30日、施行された。新特区は自由貿易地域となり、入居事業者には税制・雇用などでの優遇措置が与えられる。既存の特別経済区も維持され、さらにはウラジオストク港を自由港化する計画も浮上している。整備が始まった極東における投資誘致制度を2回に分けて報告する。

<プーチン大統領も設立を後押し>
3月30日に施行された2014年12月29日付連邦法第473−FZ号「ロシア連邦における優先的社会経済発展区域(TOR)について」によると、TORの設置期間は70年。TOR入居事業者は、租税や、雇用主が100%負担する従業員の社会保険料の負担の面で優遇措置が受けられる。税のうち地方税分については連邦法の規定の範囲内で、TORがある連邦構成体が優遇税率を決めることができる。例えば、企業利潤税(法人税)の地方税分は、連邦法では入居者の利益計上後5年間は5%以下、次の5年間は10%とされている。これに対し、沿海地方では利益計上後の5年間は無税としている(表参照)。

TORにおける公租公課の優遇措置

TOR区域内は自由貿易地域とされ、域内で使用される外国製品の関税や付加価値税は免除となる。外国人を雇用する場合は、その許可が不要とされ、かつ外国人労働者に対する労働許可の割当枠(クオータ)の対象外となる。また、ロシア政府は外国人医師が区域内で医療行為を行う許可を発行できる、と連邦法で規定されている。連邦および地方予算でインフラが今後整備されるが、連邦予算からは420億ルーブル(約966億円、1ルーブル=約2.3円)が拠出される見込みだ。

TORの設立について、2013年12月の年次教書演説においてプーチン大統領は「重要なことは、アジア太平洋地域におけるビジネスの中心地として競争力を持つような環境整備だ」と、その意図を明らかにしていた。

<ウラジオストク港は自由港にする方針>
このほか、既存の特別経済区として、1999年にオホーツク海に面するマガダン州のマガダン市行政区域を対象に設置された特区がある。当初、設置期間は2014年末で終了とされていたが、同年12月の法改正で2025年末まで延期された。2014年にはウラジオストクに工業生産型特区が設置され、マツダと地場企業ソレルスによる自動車組み立て合弁会社マツダ・ソレルス・マニュファクチャリング・ルスが入居する(2014年9月1日記事参照)

プーチン大統領は前述の年次教書演説の中で、ウラジオストク港を自由港にすることを表明した。2015年3月3日にはウラジオストク自由港法案が公表された。それによると、特区としての性格が強く、企業利潤税の減免や従業員の社会保険料軽減措置など、法案に挙げられている優遇措置はTORの制度と類似するものが多い。引き続き内容について議論が行われており、今後、議会の審議に付されるが、2016年の成立を目指している。

(浅元薫哉)

(ロシア)

ハバロフスク地方と沿海地方の3特区を選定−整備始まる極東の投資誘致制度(2)−

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