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労働者保護に重点を置くベトナムの労働法−日越経済サミット(6)−

(ベトナム)

アジア大洋州課

2013年10月10日

日越経済サミットの関連分科会として、「日越企業がさらに発展するための人材とは〜ベトナムでの人材確保とレベルアップセミナー〜」が9月5日、ハノイ市内で開催された。会場は満席となり、両国企業の関心の高さがうかがえた。パネリストからは労務管理のポイントや労働法の解釈などについて報告があり、参加者から従業員の離職率を下げる対策や雇用契約書を取り交わす際の留意点について質問が出た。シリーズ最終回。

<ベトナムでは労働者の副業が可能>
日越経済サミットの関連分科会として開催されたセミナーでは、日経BPの持田智也氏がモデレーターとなり、法曹界から西村あさひ法律事務所の小口光弁護士、DFDL Legal & TAX パートナーの岸本明美弁護士、フエン・ダイ・タン弁護士、教育業界からベトナム日本人材協力センター(VJCC)のフン・キム・アイン所長、人材育成および経営コンサルティング会社平山の寺崎赫(あかし)氏、産業界からハノイでホテルをオープンしたカンデオ・ホスピタリティ・マネジメントの穂積輝明社長がパネリストを務めた。

小口弁護士によると、労務管理で留意するポイントの1つは雇用者と被雇用者の契約だという。例えば、日本なら就業規則に副業を禁止することを盛り込むことができるが、ベトナムでは副業をすることも可能となっている。また、秘密情報に接する幹部を契約で規定することもできない。契約を締結しても法的には無効となるという。

またタン弁護士によると、労働法において汚職、横領、知的財産の侵害行為などについての罰則は明確にされていない。従業員の明らかな違反行為が生じた場合、雇用者は解雇することができるが、法律的には明記されていないという実態もある。ベトナムの労働者の労働法は、労働者保護の観点でつくられている。労使関係の改善、雇用者と非雇用者の良好な関係が紛争解決において重要になるという。

<離職防止には無期雇用契約で対応も>
分科会参加者とパネリストとの質疑応答の主なやり取りは以下のとおり。

問(IT、空間デザインなどの業務を展開する日系企業の担当者):ベトナムに進出して20年で800人の体制となったが、離職率が高いという問題を抱えている。ベトナム人にできるだけ権限委譲をして、キャリアパスを明確化しているが、すぐ辞める従業員が多いため人材育成ができずにいる。転職を繰り返す人は採用リスクを抱えることになる。離職率を下げるにはどのような対策があるか。

答(小口弁護士):法律的な観点では、有期雇用と無期雇用(2回目の契約更新から無期)がある。企業は無期雇用をためらって、有期雇用にするケースがあり、これによって離職できる環境が生まれている。しかし、そもそもベトナム人は独立(起業)思考が強いという背景もある。

答(タン弁護士):若者は中高年に比べて離職率が高い。日本の人事管理はベトナムと違うところがある。ベトナム人を採用した後は、日本の企業文化や考え方を学ぶ機会が必要だろう。年齢は日本人よりも上なのに、対等な競争環境ができていないなどの気持ちがあると辞めてしまう。無期の雇用契約を結び、会社に大切にされているとの意識を育てることが重要となる。人材育成は時間とコストがかかる。無期の労働契約を締結するのが対応策の1つだろう。

<雇用の合意内容は書面化が重要>
問(長崎県のITソフトウエア会社の担当者):人を大切にするに当たり、権利と義務のバランスは難しい。どの程度、拘束するかを考える必要もある。雇用条件の可視化(見える化)が重要になる。米国であれば、細かい内容について契約をさせる文化がある。ベトナムはどうか。

答(小口弁護士):合意内容は書面化することが重要。ベトナム語で読んでサインしてもらうことも大切。労働法では、権利者が権利を放棄しようとても、放棄できない場合がある。法律で決まっていないことを、どこまで許容するのかは議論の余地がある。何でも合意できるわけではない。ただし、無効だから契約をしなくてもいいというわけではない。

答(タン弁護士):雇用契約の内容について理解できない場合、契約書を交わす前に被雇用者に対して十分な説明をしなければならない。十分に説明した書類を作成して、被雇用者の署名をもらうのが有効だろう。後々、雇用契約の内容が分からないと言われないために重要だろう。数年前に労働者が雇用契約を締結したが、2年後にやっぱり働かないと言い出した事例では、当時、ベトナムの労働法には何の記載もなかったが、双方の合意を重視するという判決になった。

(大久保文博)

(ベトナム)

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