経済関係の深化に高い期待−日越経済サミット(1)−

(ベトナム)

ハノイ事務所

2013年10月03日

ジェトロは9月5日、ハノイでベトナム商工会議所(VCCI)、日経BP社と共催で「日越経済サミット」を開催した。日越外交樹立40周年を記念して開いたもので、「新時代に向けた日越関係」をテーマに、午前は基調講演およびパネルディスカッションで経済、投資を中心に両国の協力関係の在り方が議論された。午後はインフラ、工業化・裾野産業、人材育成に関する3つの分科会で活発な議論が行われた。サミットの内容を6回に分けて報告する。1回目は基調講演。

<日越友好関係の深化を強調>
日越経済サミットには定員300人のところ、ベトナム側から政府関係者、研究者、企業関係者、日本側からは当地政府機関、日系企業関係者ら、双方合わせて約350人が出席した。

初めに基調講演では主催者を代表してVCCIのブー・ティエン・ロック会頭が講演した。越日両国は戦略的パートナーシップの関係であり、経済不況にもかかわらず、日本からのODAや外国直接投資(FDI)は件数、金額ともに増加していると説明した。また、両国経済関係のさらなる強化に向け、VCCIは日本政府や政府関係機関と連携していきたいと述べ、今後の越日関係の深化に期待を示した。

次に、越日友好議員連盟のトー・フイ・ルア会長(ベトナム共産党政治局員)は、現在の両国は非常に良好な関係を築いていると述べた。また、ルア会長は日本からの対越FDIにも触れ、日本の企業はベトナムに豊富な労働力があるので有力な投資先とみている。また、ベトナム側も工業化・現代化を目指す上で優れた技術を持つ日本からの投資を期待していて、両国が互いに協力してさらに発展していくことができると説明した。

<日本語教育の普及が重要>
続いて日越友好議員連盟の武部新・事務局次長は、現在の日越関係は最も良好な状況にあると述べ、日本企業は海外の成長市場における投資先を探しており、若くて豊富な労働力を持つベトナムは有力な投資先の1つだとした。安倍晋三政権が進める経済政策のアベノミクスは、海外に投資し、その国とともに発展することで、海外の活力を日本に取り込むことが成長戦略の1つだと説明。さらに日越関係の強化には、政治、経済分野の協力に加え、ベトナムにおける日本語教育の普及も重要だと指摘し、若く優秀な人材を有し、発展可能性の高いベトナムに日本の技術、資金、マネジメント能力を活用してもらうことで、ベトナムの発展に貢献できるのではないかと述べた。

次に、ジェトロの平塚大祐理事は「チャイナリスク」やタイの事業コストの上昇などから、両国からも近いベトナムに対する日本企業の関心が高まっていると説明。今後、ベトナムが産業集積を実現するには、どこで中間材を効率的に生産し、安く輸送・供給していくかがポイントで、輸送費の削減とグローバルサプライチェーンにベトナムが組み込まれることが重要との見解を示した。

続いて、ベトナムのドアン・スアン・フン駐日大使は、両国は相互信頼を基盤とし発展を遂げてきており、庶民レベルの交流も活発になっていると説明。今後も両国が戦略的協力関係を継続していくために、中央から地方レベルまで多岐にわたり、指導者間や市民レベルなどの人的交流を進めるべきだとの見解を示した。また、教育、技術移転面での協力や人材育成などをさらに推進することが重要で、それには日本企業からの支援が必要だと述べた。

最後に、ベトナム外商銀行(ベトコムバンク)のグエン・ホア・ビン会長は、みずほ銀行との戦略的パートナーシップ関係を通した同銀行の日越関係への貢献などについて説明した。

(古賀健司、佐藤進)

(ベトナム)

日本側は投資環境の一層の改善を要望−日越経済サミット(2)−
PPPプロジェクトへの政府関与めぐり議論−日越経済サミット(3)−
工業化戦略に関して活発な議論を展開−日越経済サミット(4)−
裾野産業育成をめぐり積極的な意見相次ぐ−日越経済サミット(5)−
労働者保護に重点を置くベトナムの労働法−日越経済サミット(6)−

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