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特集:アジアで深化する生産ネットワークと新たな潮流エレクトロニクス産業拠点としての今後の展望(シンガポール)

2018年3月15日

シンガポールの主要産業の一つエレクトロニクス産業は、外部需要の拡大により2016年下半期から輸出が拡大基調となり、足元の景気は良くなっている。外国人雇用規制の強化により、製造業者にとり人材確保の問題は重い。一方、政府は自動化設備の導入によるスマート工場化支援などを行い、さらなる経済の高度化を目指す。

2016年下半期からエレクトロニクス産業が回復

シンガポール製造業生産高の約3分の1を占めるエレクトロニクス産業は、2016年上半期までしばらく低迷基調が続いていた。しかし、2016年下半期から車載用電子機器やスマートフォン向け部品などの外部需要が拡大すると、エレクトロニクス製品の地場輸出は急速に回復した。特に、主要品目である集積回路やPC関連製品は、2017年に入ると前年同期比で20%を超える好調ぶりだ(図)。

図:エレクトロニクス関連製品の地場輸出伸び率の推移
2016年上半期までは低調基調が続いたが、2017年に入ると急速に回復した。特に、主要品目である集積回路やPC関連製品は、2017年に入ると前年同期比で20%を超えた。
注:
2015年までは前年比。それ以降は前年同期比。
出所:
シンガポール国際企業庁のデータを基にジェトロ作成

人材確保と人件費の高騰が課題

シンガポールではウエハー製造や集積回路の設計など高付加価値製品の生産が主に行われている。これが同国の作業員(製造業)の基本月額が1,630米ドル(注)とASEAN諸国の中で群を抜いて高額にもかかわらず、製造が続けられる要因だと推測される。

他方、「5年後の製造業の環境は厳しいかもしれない」と、エレクトロニクス関連製造業の将来的な見通しについては厳しい見方をする進出日系企業もいる。同国の国内経済構造の転換により、シンガポール人材省が外国人に対する就労ビザの発給基準を年々厳格化しているからだ。それによる大きな課題は二つ。一つは人材確保の難化だ。ある日系電気・電子メーカーのシンガポール工場では、シンガポール人が3割、マレーシア人が5割、中国人が2割と外国人労働者が過半を占める。製造現場で外国人労働者を雇用する場合、一般職または技術職対象の就労ビザ「Sパス」、または単純作業対象の「ワーク・パーミット(WP)」が必要となる。これらの就労ビザには採用可能枠が設定されており、外国人の採用人数に応じシンガポール人を雇用しなくてはならない。

しかし、製造現場などの単純作業はシンガポール人からは敬遠される傾向にあり、シンガポール人材の確保が思うように進まないケースが多い。結果的に外国人作業員の増員ができないといった悪循環が起きている。

人件費の高騰も加速する。製造現場においては、外国人を雇用することで少しでも労務コストを低く抑えようとするが、低賃金で雇用できたとしても外国人雇用税などが別途必要になる。また、就労ビザの厳格化により外国人雇用税は引き上げられてきた。そのため、実際には思ったほどコスト削減には至らないことも多いようだ。

自動化設備の導入に臨む日系企業

シンガポールは人材面での課題によりエレクトロニクス製造拠点としての優位性がより薄まりつつある一方、政府は技術革新の基盤となる製造業を重要視している。政労使代表からなる未来経済委員会(CFE)は2017年2月、向こう10年間の経済戦略を提言した。そこで国内総生産(GDP)に占める製造業の割合を、中期的に約20%を維持する方針を示した。同国が目指すのは労働生産性向上のための製造工程の自動化だ。シンガポール経済開発庁(EDB)は近年、自動化設備導入のために補助金制度などを打ち出している。

こうした動きを受け、自動化設備の導入計画を発表するエレクトロニクス関連製造業が相次いでいる。ドイツの半導体製造大手インフィニオン・テクノロジーズは2017年3月、同社のシンガポール工場のスマート工場化に向け、2021年までの5年間で総額7,000万ユーロを投資すると発表した。ヒアリングを行った進出日系企業からも自動化設備の導入に向けて協議を始めているとの声が聞かれた。

シンガポールはASEANの中で唯一の先進国であり、他のASEAN諸国に先駆け、さらなる産業高度化に向け動き始めている。同国の国内経済構造の変化に、日系エレクトロニクス関連製造業は柔軟に対応し、変革することを求められている。


注:
2017年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査より抜粋。諸手当を除いた給与、2017年10月時点。自国・地域通貨建て賃金の平均値を2017年10月の平均為替レートで米ドルに換算。
執筆者紹介
ジェトロ・シンガポール事務所
源 卓也(みなもと たくや)
2013年に富山県庁入庁後、商工企画課にて各課取りまとめ、管理業務に従事。2015年より公立大学法人富山県立大学へ出向。知的財産や環境教育、附属施設の運営を担当。2017年4月よりジェトロへ出向。海外調査部アジア大洋州課を経て2018年4月よりシンガポール事務所にて、シンガポールの調査・情報提供に従事。

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