2025年のモロッコ自動車市場、過去最高の23万5,372台を販売

2026年9月18日

モロッコの2025年の新車販売台数(乗用車・小型商用車)は過去最高を更新した。国内需要が拡大したほか、電動車市場の成長も販売増を後押しした。また、同国ではルノーやステランティスが生産能力や研究開発機能の拡充を進めており、自動車生産・輸出拠点としての存在感を高めている。

国内需要拡大を背景に市場規模が大幅増

モロッコ自動車輸入業者協会(AIVAM)の「自動車市場概況2025(Bilan marché automobile 2025)」によると、2025年のモロッコ自動車市場は、乗用車および小型商用車(LCV)の新車販売台数が前年比33.4%増の23万5,372台に達し、これまでの最高記録であった2018年の17万7,357台を大きく上回った。内訳は、乗用車が20万8,848台(前年比32.9%増)、LCVが2万6,524台(同37.7%増)であった。

市場拡大の要因として、自動車価格の安定や融資条件の改善、観光業の拡大による商用車需要の増加が挙げられる。インフレや欧州排ガス基準「Euro 6」への対応、原材料価格の高騰を背景に過去3年間上昇を続けていた自動車価格は、2025年に安定または低下に転じた。また、自動車ローン金利の低下や販売促進キャンペーン、支払い猶予制度の導入などにより、融資条件も改善した。さらに、観光業の拡大を背景に、レンタカー事業者や観光輸送事業者による需要増加も市場拡大を後押しした。

市場拡大には電動車の需要増加も寄与した。2025年9月にはハイブリッド車(HEV)および電気自動車(EV)に特化した同国初の展示会「Auto Expo 2025」が開催され(2025年10月15日付ビジネス短信参照)、EV技術の認知拡大と普及促進の一助となった。

乗用車はダチアが販売台数首位を維持、ルノーはトップ10最高の伸び率を記録

2025年のメーカー・ブランド別の乗用車販売台数は、ダチアが4万7,887台(前年比21.8%増)で首位を維持した(表1参照)。ルノーが3万6,557台(54.3%増)で、現代が1万5,476台(30.1%増)、プジョーが1万5,428台(46.7%増)だった。

トップ10ブランドの中では、ルノーが最も高い増加率(54.3%増)を記録した。トヨタも引き続きトップ10にランクインしたほか、シトロエンは7位を維持し、販売台数は8,347台(前年比9.3%増)となった。そのほか、シュコダは市場シェア3%を確保し、2024年の9位から2025年には8位へ順位を上げた。販売台数は前年比39.9%増となり、トップ10ブランドの中で3番目に高い伸び率を記録した。

表1:2025年のモロッコの乗用車(新車)販売台数 (単位:台、%)(-は値なし)
2024年
順位
2025年
順位
メーカー・ブランド 2024年
販売台数
2025年
販売台数 前年比 シェア
1 1 ダチア 39,331 47,887 21.8 22.9
2 2 ルノー 23,697 36,557 54.3 17.5
3 3 現代 11,898 15,476 30.1 7.4
4 4 プジョー 10,517 15,428 46.7 7.4
5 5 フォルクスワーゲン 10,336 14,070 36.1 6.7
6 6 オペル 8,054 8,679 7.8 4.2
7 7 シトロエン 7,634 8,347 9.3 4.0
9 8 シュコダ 4,537 6,347 39.9 3.0
8 9 起亜 5,259 6,299 19.8 3.0
10 10 トヨタ 4,272 5,575 30.5 2.7
その他 31,604 44,183 39.8 21.2
合計  157,139 208,848 32.9 100

出所:AIVAM「自動車市場概況2025(Bilan marché automobile 2025)」を基にジェトロ作成

観光需要を背景に小型商用車(LCV)市場が過去最高を記録

小型商用車(LCV)市場も好調で、販売台数は2万6,524台と前年比37.7%増となった(表2参照)。この背景には、2025年にモロッコを訪れた観光客数が過去最高の1,980万人に達し、レンタカー会社や観光輸送事業者による車両需要が拡大したことがある。レンタカー会社向けの登録台数は前年比約33%増加した。特に、観光輸送向けの9人乗りミニバスが顕著な伸びを記録した。さらに、ブランド別に見ると、フィアットが5,015台を販売し、市場シェア18.9%で前年の3位から首位に躍進した。販売台数は前年比133.7%増と大幅に増加した。これにルノーが4,493台(市場シェア16.9%)、東風小康汽車(DFSK)が2,778台(同10.5%)で続いた。また、東風汽車は前年比505.8%増と、トップ10ブランドで最大の伸びを記録し、順位を3つ上げて7位となった。

表2:2025年のモロッコの小型商用車(新車)販売台数 (単位:台、%)(-は値なし)
2024年
順位
2025年
順位
メーカー・ブランド 2024年
販売台数
2025年
販売台数 前年比 シェア
3 1 フィアット 2,146 5,015 133.7 18.9
1 2 ルノー 4,651 4,493 △3.4 16.9
4 3 DFSK 1,968 2,778 41.2 10.5
2 4 フォード 2,547 2,726 7.0 10.3
5 5 トヨタ 1,863 2,146 15.2 8.1
7 6 現代 1,189 1,520 27.8 5.7
10 7 東風汽車 241 1,460 505.8 5.5
8 8 タタ 734 1,371 86.8 5.2
6 9 三菱 1,529 1,282 △16.2 4.8
9 10 プジョー 692 944 36.4 3.6
その他 1,702 2,789 63.9 10.5
合計  19,262 26,524 37.7 100

出所:AIVAM「自動車市場概況2025(Bilan marché automobile 2025)」を基にジェトロ作成

プレミアム市場も拡大、電動車比率は17%に上昇

プレミアム市場(注) も好調で、2025年の販売台数は1万8,462台と前年比11.2%増となった。乗用車市場全体に占める割合は9%と、前年から1ポイント低下した。一方で、プレミアム市場では電動車の存在感は高まっている。電動車の割合は2025年に17%となり、乗用車市場全体の電動車比率(12.5%)を上回った。

ブランド別では、BMWが5,070台(前年比13.9%増)で首位となり、アウディが5,055台(同8.4%増)、メルセデス・ベンツが3,255台(同7.3%増)で続いた。BMWは前年首位のアウディを15台差で上回った。トヨタの「レクサス」は233台(同7.9%増)を販売し、前年と同じ11位で、市場シェアは1.3%だった。

電動車比率が拡大、BYDが販売を伸ばす

2025年には乗用車市場のパワートレイン(動力源)構成にも変化が見られた。依然としてディーゼル車の人気は高いが、販売比率は2021年の約90%から2025年には約70%まで低下した。一方で電動車の比率は拡大しており、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、マイルドハイブリッド車(MHEV)、バッテリー式電気自動車(BEV)を合わせた電動車比率は12.5%と、前年の8%から上昇した。特にPHEVおよびMHEVの普及が進み、電動化の裾野が広がっていることがうかがえる。

電動車市場では、中国メーカーBYDが存在感を示した。モデル別の販売台数を見ると、BYDの「SEAL U」が3,237台と首位となった。トヨタは「ヤリスクロス(YARIS CROSS)」(1,364台)をはじめ、「カローラプレステージ(COROLLA PRESTIGE)」(1,048台)、「カローラクロス(COROLLA CROSS)」(951台)、「ヤリス(YARIS)」(620台)、「RAV4」(592台)と複数車種が販売台数上位10モデルにランクインしており、電動車市場における幅広いモデル展開が奏功していることがうかがえる。BEV市場では、BYD 「シーガル(SEAGULL)」(271台)が首位となり、ボルボ「EX30」(181台)、BYD「シーライオン7(SEALION 7)」(82台)が続いた。

欧州ブランドが優勢維持、中国ブランドが市場シェア拡大

2025年には11ブランドが新たに市場参入し、モロッコで展開されるブランド数は51に増加した。そのうち17ブランドが中国ブランドで、ブランド数全体の約3分の1を占めるまでになっている。こうした新規参入を背景に、中国メーカーの存在感が高まっている。

モロッコ新車市場では、依然として欧州ブランドが優勢で、2025年も74.9%と市場の大半を占めた。一方、中国ブランドの市場シェアは2024年の3.3%から2025年には7.7%へと2倍以上に拡大した。これに対し、日本ブランドの市場シェアは2021年の7.6%から2025年には4.9%へ低下した。韓国ブランドも10.2%と、前年の10.5%を下回った。

ルノーは高水準の生産・輸出を維持、R&D機能も強化

国内販売が活発である一方、モロッコは輸出を主体とした自動車生産国としての側面も持つ。ルノーグループは2025年、タンジェ工場およびSOMACA(Société Marocaine de Construction Automobile)カサブランカ工場の2拠点で計39万4,474台を生産した。これは過去最高を記録した2024年を約5%下回ったものの、引き続き高水準を維持した。生産台数の約83%に当たる32万7,552台は輸出向けで、欧州、地中海沿岸地域、アフリカ、中東の63カ国に出荷された。

工場別では、タンジェ工場が29万9,395台を生産し、このうち28万2,498台を輸出した。輸出比率は95%に達しており、同工場は輸出向け生産の中核を担っている。一方、SOMACAカサブランカ工場の生産台数は9万5,079台で、このうち4万5,054台を輸出した。同工場は、モロッコ市場で高いシェアを誇るダチアの「サンデロ(Sandero)」「ロガン(Logan)」を製造する拠点だ。2025年には、サンデロを約4万9,500台、ロガンを約3万2,000台製造した。モロッコ国内市場の拡大を背景に、同工場では国内向け供給の比率が高まった。同グループの年間生産能力は50万台超に達しており、2030年までに現地調達率80%、現地調達額30億ユーロの達成を目指している。また、2025年にはテトゥアンおよびタンジェ工場内に、研究開発拠点「ルノー・テクノロジー・モロッコ(Renault Technologie Maroc)」を開設した。同センターは研究開発(R&D)活動を担い、自動車の工業化プロセスにおける上流段階から開発を支援する。

ステランティス、生産・販売・金融の一体運営を推進

プジョーやシトロエン、オペル、フィアットなどのブランドを擁するステランティスは2025年、生産から販売、金融、サービス、アフターサービスまでを統合する事業体制の構築を進めた。同社はまず、販売会社ソプリアム(Sopriam)の株式100%を取得し、自社ネットワークとして17拠点を確保した。さらに、42の民間ディーラー網を通じて全国95%をカバーしている。

また、アクサ・クレディ(Axa Credit)の株式80%を取得し、自動車販売・融資・保険を一体的に提供する金融サービス体制を構築した。さらに、補修部品流通プラットフォーム「ディストリゴ(Distrigo)」を立ち上げ、部品供給と物流効率化を進めている。2025年には、モロッコ製の100%電動三輪車「フィアットトリス」も市場投入した。

中国のEVメーカー零跑汽車(リープモーター)の導入も発表され、ステランティスとの合弁会社零跑国際(リープモーター・インターナショナル)を通じてソプリアムが販売を担う。

2025年7月には、モロッコ・ケニトラ工場の拡張計画を開始した。エンジン組み立て能力の3倍増強とEV生産の加速が狙いだ。工場の年間エンジン生産能力は35万基に達しており、2025年5月には新世代MHEVエンジンの組み立て工程を開始した。今後、2026年11月には機械加工工程も立ち上げる予定だ。

同社はモロッコにおけるマイクロモビリティー事業を強化しており、シトロエン「アミ」、オペル「ロックス-e」、フィアット「トッポリーノ」の生産能力を年間2万台から7万台へ拡大した。さらに、オートモーティブ・テクニカル・センター(ATC)で開発した100%電動三輪モビリティ車両の生産を2025年7月に開始し、年間6万5,000台の生産能力を確保した。これにより、ケニトラ工場におけるマイクロモビリティー製品の総生産能力は年間13万5,000台となった。加えて、同工場ではEV用充電ステーションの生産も開始され、年間20万4,000基の生産能力を有する。これにより、ケニトラ工場の生産能力はマイクロモビリティー製品を含め年間53万5,000台となり、3,000人超の新規雇用創出が見込まれている。

自動車産業向け投資が継続、投資案件数はMENA地域で第2位

現地報道によると、2025年のモロッコは自動車産業向け新規投資案件数で中東・北アフリカ(MENA)地域第2位となった。首位のエジプトが27件、モロッコは23件、アラブ首長国連邦(UAE)が15件だった。産業サプライチェーンの再編や新技術分野への投資が進む中、モロッコは引き続き地域有数の自動車投資先として存在感を高めている。


注:
アルファロメオ、アウディ、BMW、DS、ジャガー、ジープ、ランドローバー、レクサス、メルセデス・ベンツ、ミニ、ポルシェ、ボルボ。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ総務部総務課
鈴木 優香(すずき ゆうか)
2023年、ジェトロ入構。海外展開支援部販路開拓課、ジェトロ・ラバト事務所を経て、2026年9月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ラバト事務所
ファティマザハラ・ベルビシュ
2017年からジェトロ・ラバト事務所に勤務。経済・産業・市場調査、商談会業務などを担当。