2025年新車販売は微増、税制・環境施策で電動化進展(オランダ)
2026年9月18日
2025年のオランダの乗用車新車登録台数は38万8,024台となり、前年比1.7%増した。年末に電気自動車(EV)の社用車税制優遇縮小を見越した駆け込み需要が発生したことで、市場は業界予測を上回る結果となった。一方、商用車市場では税制やゼロエミッション・ゾーン導入前の反動から、販売が大幅に減少した。ブランド別では起亜が2年連続で首位を維持し、新型EVを投入したシュコダが大きく順位を上げた。
EV税制変更前の駆け込み需要で予測上回る
2025年の乗用車新車登録台数は38万8,024台となり、前年比で1.7%の微増となった(図1参照)。また、オランダにおける保有車両の電動化は急速に進んでおり、2025年に販売された車両の85.5%をBEV(フルバッテリーEV)およびハイブリッド車が占め、前年の76.6%からさらに拡大した。
2025年の乗用車新車登録台数は、オランダ自転車・自動車工業会(RAI)およびオランダ自転車・自動車商業組合(BOVAG)の予測(36万7,000台)を5.7%上回った。これは主に、2025年12月に登録台数が4万8,585台(前年同月比31.9%増)へと急増したことによる。
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)
急増した主な要因は、政府が2026年1月1日付で、EVに適用していた社用車の私的利用に対する現物給与課税(bijtelling)の優遇措置を廃止し、内燃機関車と同等にする方針を示していたことだ(注1)。EVの取得時に適用された税率は60カ月間(5年間)維持されるため、2025年中にEVを購入・登録することに対するインセンティブとなった。
今後の市場について、RAIの乗用車・小型商用車部門委員長であるフーブ・デュベルマン氏は、「年末の駆け込み需要のおかげで、最終的に予想以上の新車が販売された。しかし、歴史的に見ると38万8,000台という水準は依然として低い。過去15年間の年間平均登録台数は41万台を超えている。それでも、BEVを選択する消費者が増えていることは前向きな傾向だ」と慎重ながらも前向きな見方を示した。一方、BOVAGカーディーラー部門会長のバート・デ・クローン氏は、「昨年同様、税制措置が市場の動きを左右している。2024年は購入補助金の終了が年末の駆け込み需要を引き起こし、2025年は現物給与課税の税率変更が同様の効果をもたらした。異なる措置であっても効果は同じであり、年末の需要急増の後には反動減のリスクがある」と指摘した。
2026年1月1日時点のオランダの乗用車保有台数は982万4,079台となった(図2参照)。燃料別シェアは、ガソリン車71.0%、ディーゼル車6.3%、ハイブリッド車14.3%、BEVが7.3%であった(図3参照)。
注:LPG:液化石油ガス、BEV:フルバッテリーEV、CNG:圧縮天然ガス、LNG:液化天然ガス。
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)
注:LPG:液化石油ガス、BEV:フルバッテリーEV、CNG:圧縮天然ガス、LNG:液化天然ガス。
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)
2025年の乗用車新車登録台数を燃料別に見ると、ハイブリッド車が45.3%で最大シェアを占め、次いでBEVが40.2%、ガソリン車が13.1%となった(図4参照)。過去6年間の新車登録の燃料別シェアの推移を見ると、ハイブリッド車およびBEVの市場シェアが著しく拡大していることが分かる(図5参照)。
注:ハイブリッド車には、マイクロハイブリッド電気自動車(MEV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、航続距離延長型電気自動車(REEV)などを含む。
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)
注:ハイブリッド車には、マイクロハイブリッド電気自動車(MEV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、航続距離延長型電気自動車(REEV)などを含む。
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)
BOVAGおよびRAIの予測通り、2025年の商用車(車両総重量3.5トン未満のバン)の新車登録台数は前年比84%減の2万775台となった。これは、2025年1月のBPM(購入税)免除の廃止と都市部でのゼロエミッション・ゾーン導入(注2)を前に、2024年に発注が集中した反動による。3.5トンを超える商用車の販売台数も、2024年の1万8,684台から2025年には1万1,129台へと40.4%減少した。
中古車販売台数は2024年の204万9,173台から2025年には212万4,429台へとなり、前年比3.7%増加した。
起亜が2年連続でオランダ国内首位を維持
2025年のオランダ市場では、起亜が販売台数3万7,837台(シェア9.8%)を記録し、再び首位を獲得した。フォルクスワーゲンは前年の5位から2位へと順位を上げた。フォルクスワーゲングループのシュコダは、新型EV「Elroq(エルロック)」の好調により、前年の6位から3位へ浮上した(表1参照)。
| 順位 | メーカー名 | 2024年 | 2025年 | シェア | 前年比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | Kia | 34,881 | 37,837 | 9.8 | 8.5 |
| 2 | Volkswagen | 26,961 | 31,883 | 8.2 | 18.3 |
| 3 | Skoda | 21,400 | 27,884 | 7.2 | 30.3 |
| 4 | Toyota | 30,880 | 27,806 | 7.2 | △ 10.0 |
| 5 | Renault | 18,654 | 24,601 | 6.3 | 31.9 |
| 6 | BMW | 21,345 | 22,349 | 5.8 | 4.7 |
| 7 | Volvo | 31,016 | 20,475 | 5.3 | △ 34.0 |
| 8 | Hyundai | 19,326 | 17,469 | 4.5 | △ 9.6 |
| 9 | Audi | 13,856 | 16,884 | 4.4 | 21.9 |
| 10 | Tesla | 30,010 | 16,703 | 4.3 | △ 44.3 |
| 合計(その他含む) | 381,463 | 388,024 | 100.0 | 1.7 | |
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)
モデル別では、新型EVのシュコダ「Elroq」(1万1,960台、シェア3.1%)が首位に立ち、起亜「EV3」(1万973台、シェア2.8%)、テスラ「モデルY」(1万790台、シェア2.8%)が続いた(表2参照)。
| メーカー | モデル | 台数 | シェア |
|---|---|---|---|
| Skoda | Elroq | 11,960 | 3.1 |
| Kia | EV3 | 10,973 | 2.8 |
| Tesla | モデルY | 10,790 | 2.8 |
| Kia | Picanto | 8,858 | 2.3 |
| トヨタ | Aygo X | 6,947 | 1.8 |
| 合計(その他含む) | 388,024 | 100.0 | |
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)
2025年の日本ブランドの新車登録台数は前年比12.6%減の5万364台となった。これは登録台数全体の13.0%に相当し、2024年の15.1%から2.1ポイント低下した。
特に日産、スバル、ホンダの減少が顕著で、2025年に販売台数を伸ばしたレクサスを除き、日本ブランド各社はシェアを落とした。
BEVおよびPHEVへシフトする市場
2025年のBEV販売台数は18.0%増の15万5,973台、ハイブリッド車は9.7%増の計17万5,567台となった(図6参照)。ハイブリッド車のうち最も急成長しているPHEVは7万3,204台となり、前年比38.8%増となった。2025年のBEVとPHEVを合わせた販売台数は22万9,177台に達し、新車登録全体の59.1%を占めた。BEVとPHEVの合計が市場の過半数を占めるのは史上初となった。
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)
2026年1月時点のEV保有台数は212万8,071台で、このうちBEVが72万1,149台、ハイブリッド車が140万6,922台であった(図7参照)。
注:ハイブリッド車には、マイクロハイブリッド電気自動車(MEV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、航続距離延長型電気自動車(REEV)などを含む。
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)
2025年に最も売れたBEVはシュコダ「Elroq」で1万1,960台を販売し、BEV市場の7.7%を占めた。次いで起亜「EV3」(7.0%)、テスラ「モデルY」(6.9%)が続いた。シュコダ「Elroq」、起亜「EV3」、テスラ「モデルY」は、BEV市場のみならず、全乗用車の販売ランキングでも上位3モデルを占めた。
充電ポイントの着実な拡大
オランダは欧州で最も充電ネットワークが密に整備されている国の一つであり、2025年12月時点で、急速充電ポイント6,595カ所を含む計122万6,102カ所の充電ポイントが設置されている(図8参照)。
出所:オランダ企業庁
電動化を推進する政府方針
2025年10月29日の総選挙を受け、オランダでは2026年2月23日、中道・自由主義系の少数与党連立政権「イェッテン第1次内閣」が発足した。同内閣は民主66(D66)、自由民主国民党(VVD)、キリスト教民主同盟(CDA)の3党で構成される。新政権が政策方針をまとめた連立協定では、EV向け充電インフラの拡充とEV利用の促進に向けた税制優遇措置の維持に重点が置かれた。
充電インフラの拡充については、「国家充電インフラ計画(NAL)」に基づき全国的な充電網整備が進められており、公共充電設備や急速充電設備の整備、企業・事業所向け充電設備への補助制度の運用が継続されている。税制優遇措置については、BEVに対する自動車税(MRB)の軽減措置が延長され、2026年から2028年までは30%減税、2029年は25%減税となる。2030年以降の減税措置は予定されていない。また、連立政権は、EVが車体重量による税負担で不利にならないよう、従来の重量ベースに代わり、設置面積や車両サイズに基づく持続可能な自動車税(MRB)改革案の検討も進める方針だ。
政府は2026年4月20日、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格高騰への対応策として、個人および事業者向けの重点的な経済支援策を発表した。提示された施策の一環として、低所得世帯がガソリン車から中古EVへ乗り換える際の補助金制度を設け、国内市場における中古EVの普及促進を目指す。
2027年1月1日以降、政府は新たな税制措置として疑似最終税(みなし課税)を導入する。企業が私的利用も認めた上で化石燃料車(非BEVの全車両)を従業員に支給する場合、従業員が支払う所得税に加えて、企業は車両カタログ価格の12%を疑似最終税として毎年税務署に納付しなければならない。事実上、化石燃料車の支給は極めて高コストとなるため、社用車としてはBEVが唯一の現実的な選択肢となる。
2025年6月3日のスホーフ政権崩壊後、オランダのEV政策の行方には不透明感が漂っていた。しかし、イェッテン第1次内閣の発足により、モビリティー分野におけるエネルギー転換の継続性が担保された格好だ。充電インフラの拡充や化石燃料系リース車に対する課税強化、中古車EV市場を対象とした補助金の導入などにより、オランダは電動化に向けた動きを一段と加速させる見通しだ。
- 注1:
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会社用車両を私的利用で年間500キロメートルを超えて使用する場合、22%の現物給与課税が適用される。EVに対する現物給与課税率については、カタログ価格3万ユーロまでは17%とする優遇措置があったが、2026年度税制改正案ではこの優遇措置が廃止されることになっていた。しかし、2025年11月27日に下院で修正案が可決され、より緩やかな移行措置として、カタログ価格3万ユーロまでの税率は、2026年は18%、2027年は20%、2028年から22%となった。
- 注2:
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オランダの地方自治体は2025年1月1日から、市内にトラックとバンを対象としたゼロエミッション・ゾーンを導入できる。同ゾーン内では、ゼロエミッション車以外のトラックとバンの通行を禁止できる。ただし、一部の車種については2030年までの経過措置や免除措置が設けられている。2025年1月1日以前に登録された高排出量のバンとトラックのみが、2030年までの経過措置や免除の対象となる。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・アムステルダム事務所長
奥井 浩平(おくい こうへい) - 2001年、ジェトロ入構。金沢貿易情報センター、シカゴ事務所、対日投資部、岡山事務所長、ECビジネス課長、スタートアップ支援課主幹などを経て、2024年12月から現職。





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