米国CPSC、規制対象製品の適合証明書データの電子申告義務付け開始
2026年7月22日
2026年7月8日より、米国消費者製品安全委員会(CPSC)が定める規制対象製品を米国に輸入する場合、米国税関・国境警備局(CBP)の電子通関システム(ACE)を通じて事前に適合証明書データを電子申告(eFiling)することが義務付けられた(注1)。玩具やベビーカーなどの子供向け製品から、家庭用品、家電・電気機器、家具、衣類などの一般消費者製品まで、幅広い製品が規制対象となる。特に12歳以下の子供向け製品の場合、CPSC認定試験機関による試験結果を根拠として、輸入者が発行した子供向け製品証明書(CPC)の情報が必要となる。輸入卸業者を通じて米国市場向けに規制対象製品を販売する日本の事業者のみならず、越境ECを通じて販売する日本企業も注意が必要だ。
中国発DC2・越境ECの拡大が制度導入の背景
CPSCは、消費者製品に起因する負傷リスクから消費者を保護することを主な目的とする政府系組織だ。強制規格の策定、製品のリコール実施や修理・交換・返金、製品の潜在的な危険に関する調査、任意規格の作成などを行っている。CPSCは2024年12月に、適合証明書(Certificates of Compliance)の要件改正と輸入品の電子申告を義務化する最終規則(16 CFR Part 1110の改正)を承認・採択し、同規則は2025年1月8日に官報へ掲載された。CPSCは今回の電子申告の導入により、製品検査の効率化を推進し、米国に輸入される高リスク製品をより効果的に特定することが可能になるとしている。なお、本規制は輸入品が対象となるため、現地で規制対象製品を製造、販売する場合は、適合証明書データの電子申告は必要ない。
当該規則が導入される以前は、輸入業者は子供向け製品証明書(CPC)や一般適合証明書(GCC)を作成・保有する義務はあっても、輸入通関時にCBPやCPSCに対して証明書を提出する必要はなかった。通関時には、求めに応じて必要書類を提出する運用が中心であった。
適合証明書データの電子申告が義務付けられた背景は何か。米連邦下院議会の「中国共産党に関する特別委員会」による2023年の報告書「Fast Fashion and the Uyghur Genocide:Interim Findings
(537KB)」によると、旧デミニミス・ルール(少額貨物免税制度)(注2)は、TemuやSheinといった中国の格安オンライン小売業者の米国市場における爆発的な成長を後押ししてきた。中国から米国向けのデミニミス対象輸出額は、2018年の約53億ドルから2023年には12倍以上となる約660億ドルに増加した。こうした急増する輸入量を受け、CPSCは適合証明書データの電子申告の導入により、高リスク製品の特定や製品検査の効率化を図るとしている。CPSCのピーター・A・フェルドマン議長代行は、「米国の消費者にとって最大の脅威の1つは、中国から流入する安全性を欠いた低品質な製品の氾濫だ。特に、電子商取引(Eコマース)や消費者への直接配送(D2C)を通じた流入がその大きな要因となっている。中国製品は、CPSCの管轄下にある消費者向け輸入品全体の3分の1を占めるに過ぎないが、同委員会が特定する安全基準違反の事例においては、その4分の3以上を占める」と述べた。
CPSCの規制ロボットを活用して電子申告の対象か判別が可能
CPSCによると、電子申告の対象となり得る製品に関連するHTSコードは、約600あるという(表参照)。これは600品目が対象という意味ではない。約600のHTSコードのそれぞれに、対象年齢、使用用途、素材などによって規制対象製品と対象外製品が混在することを意味する。CPSCのウェブサイトでは、「規制ロボット(Regulatory Robot)
」という検索システムがあり、製品の詳細を入力すると、該当する認証要件などについてカスタマイズしたレポートを作成してくれる。自社製品が電子申告の対象となるか判断が付かない場合は、同システムの使用が推奨される。 なお、電子申告の対象外となる製品は、非商用の個人向け製品だ。本ルール適用前に製造された中古品の場合でも、製造時点でCPSC規則に基づく認証義務があれば、電子申告の対象となる。また、旧デミニミス・ルール対象製品などの製品価値が低い場合であっても、商用であれば電子申告の対象となるため留意が必要だ。同様に、少量生産事業者(small batch manufacturing)(注3)であっても電子申告義務は免除されない。軽減措置は、あくまで一部の子供向け製品に対する第三者試験に限られる。
| 製品分類 | 具体的な品目例 | 電子データでの提出が求められる認証 |
|---|---|---|
| 子供向け(12歳以下)商品 |
|
子供向け製品証明書(CPC) (注意)輸入者がCPCを発行するためには、当該商品がCPSC規制に適合していることを、CPSC認定第三者試験機関による試験結果で裏付ける必要がある。 |
| 一般用途製品 |
|
一般適合証明書(GCC) (注意)輸入者がGCCを発行する際、その根拠として自社試験や任意の試験機関の試験データを使用できる。CPSCから認定を受けた第三者機関による試験は必要ない。 |
出所:CPSCのウェブサイトからジェトロ作成
12歳以下向け製品は、原則としてCPSC認定試験機関による第三者試験が必要
電子申告対象製品の中で、製造者側で特に留意が必要となるのは、12歳以下の子供向けに設計または意図された製品だ。CPCに関する証明書データの申告が求められる。CPCは輸入業者が発行する証明書であり、CPSCが認定した第三者試験機関による試験結果に基づく必要がある。他方、GCCは一般用途製品が対象で、CPCと同様に輸入業者が証明書を発行するものの、CPSCが認定した第三者試験機関による試験は義務付けられていない。ただし、製品の適合性を合理的に説明できるよう、試験データや品質管理記録などの根拠資料を保管しておく必要がある。
なお、CPCで求められる第三者試験機関については、CPSCのサイトで日本に所在する6つのCPSC認定ラボの情報を確認できる(注4)。
製造者が輸入者へ提供すべき情報は7項目
まず、電子申告の法的義務主体は輸入者(Importer of Record, IOR)であり、実際のACEでの輸入通関申告は通常、輸入者またはその委任を受けた通関業者(Customs Broker)が行う(注5)。ただし、製造者は輸入者に、次の7点の認証関連情報を提供する必要がある。
製造者が輸入者に提供が必要な情報
(1)製品ID(注6)、(2)該当する各CPSC安全規則の条文番号・規格番号(Citation Code)、(3)製造日、(4)製造者・生産者・組み立て事業者の連絡先情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス)、(5)最新の適合試験日、(6)適合試験施設/試験所の連絡先情報、(7)試験記録の保管者と所有者の連絡先情報。
これら7点の情報を基に、輸入業者がCPSCの製品登録システム(Product Registry)に証明書情報などを登録すると、3つの識別情報〔(1)製品ID、(2)認証者ID(Certifier ID)、(3)証明書バージョンID(Version ID)〕が発行される。通関業者は、その識別情報をACEの「登録済み証明書参照方式」(Reference PGA Message Set)を用いて申告することで、CBPとCPSCによる輸入通関審査を受けられる(図参照)。同じ証明書データを必要とする規制対象製品の輸入を繰り返す場合に適した方式で、製品登録システムへの再登録は必要なく、3つの識別情報をACEで申告する流れとなる。
図:実際の手続きの流れ Reference PGA Message Set
(登録済証明書参照方式を用いた手続きの流れ)
出所:CPSCのウェブサイトからジェトロ作成
電子申告への対応負担と通関迅速化のメリット
CPSCは、必要な電子証明書データが登録・申告されていない場合でも、それだけを理由としてCBPに対し当該製品の輸入拒否を要請する意向はないとしている。一方で、ACEシステムを通じた警告メッセージの発信や追加資料の提出要求を行う可能性がある。さらに、製品がCPSC規制に適合していないと判断された場合には、最終的にCBPに対し不適合製品の差し押さえを要請するとしている。
日本の事業者にとっての課題の1つは、米国向け製品ごとに輸入業者への共有が求められる前述の7点の情報を整理し、適切に管理することだと考えられる。特に製品点数が多い場合、どの製品がどこで製造され、どの安全規則に該当し、どの安全検査を受けたかを製品ごとに整理・管理する負担が大きくなる。場合によっては、社内の在庫(SKU)管理体制を抜本的に見直す必要もあるだろう。他方、今回の電子申告(eFiling)の導入により、規制対象製品と適合証明書(CPC/GCC)の情報が輸入申告時点で電子的にひも付けられる。そのため、CPSCおよびCBPが事前にリスクを評価しやすくなる。その結果、法令順守実績のある輸入業者については、検査頻度や貨物留置時間の短縮が期待され、製品をより迅速に米国市場に流通させることが可能になるとされる。
今回の制度改正は、単なる通関手続きの電子化ではなく、米国当局が輸入時点で製品単位のトレーサビリティー強化を進める動きの一環と位置付けられる。適合証明書データを輸入時に電子的に取得・照合できることで、高リスク製品を重点的に検査するリスクベース管理が一層進む可能性がある。
- 注1:
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FTZ(保税区)経由品の場合は、2027年1月8日から適用となる。
- 注2:
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旧デミニミス・ルール下では、輸入商品の課税評価額が800ドル以下の場合、関税を含む諸税が免除され、必要な手続きも基本情報の提出のみであった。しかし、ドナルド・トランプ大統領により2025年8月に同ルールの適用停止が発表されたことに加え、2026年2月より1974年通商法122条に基づく10%の課徴金が課せられている。
- 注3:
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対象となるのは、前暦年の消費者向け製品の総売上高が143万6,864ドル以下であり、かつ、対象製品の前暦年の生産数量が7,500個以下であること。
- 注4:
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日本のCPSC認定試験機関(認定ラボ)は、(1)および(2)一般財団法人日本文化用品安全試験所(東京、大阪)、(3)一般財団法人カケンテストセンター、(4)一般財団法人ニッセンケン品質評価センター、(5)島津テクノリサーチ、(6)YKK。
- 注5:
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D2C取引では、実務上はUPS、FedEx、DHLなどの輸送業者またはその提携通関業者がACE申告を代行するケースが一般的だ。CPSC製品登録システムの利用要件については別途確認が必要。なお、CPSCで電子申告をする輸入者(IOR)は必ずしも米国企業である必要はなく、日本の製造者が非居住者輸入者(Non-Resident Importer, NRI)としてIORになることも可能。
- 注6:
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認証対象の製品を識別するための製品IDとして、次の7点が利用できる。
(1)GTIN(国際取引商品コード)、(2)SKU(在庫管理単位)、(3)UPC(ユニバーサル・プロダクト・コード)、(4)モデル番号、(5)シリアル番号、(6)登録番号、(7)代替ID(Alternate ID)。代替IDには、ほかの6種類の製品IDに該当しない任意の英数字IDを使用できる。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部米州課 課長代理
安東 利華(あんどう りか) - 2007年、ジェトロ入構。海外調査部北米課、シドニー事務所などを経て、2025年6月から現職。





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