インバウンドデータとAIを活用、日本型リユースの海外展開

2026年10月13日

国内外でリユース(中古品)市場の拡大が続いている。日本のリユース市場規模は2024年に約3兆3億円となり、15年連続で成長している(注1)。海外ではリユース文化そのものが拡大局面だ。米国リユース大手ThredUpが英国の市場調査会社GlobalDataと共同で公表した「2026 Resale Report」によると、世界の中古品販売市場は2030年に3,930億ドル規模に達するとの見通しが示されている(注2)。特にASEANや北米では、物価上昇やサステナビリティ(持続可能性)への意識の高まりに加え、中間所得層・富裕層の増加を背景にブランドリユース需要が拡大している。こうした中、日本企業はこれまで培ってきた「真贋(しんがん)管理」「信頼性」など、商品そのものに限らない「見えない価値」を強みに、海外市場で競争優位を築く可能性がある。ブランドリユース業界大手のコメ兵ホールディングスは、香港、中国、北米、ASEANなどへ事業展開を進めるとともに、日本国内の店舗に来店した訪日外国人客の購入データを海外戦略に取り入れている。また、真贋AI(人工知能)判定などの新たな取り組みにも力を入れている。コメ兵営業企画統括部長の諏訪弘樹氏に、日本のリユース産業の競争力を支える要因と海外市場における成長可能性について話を聞いた(取材日:2026年9月4日)。


コメ兵営業企画統括部長の諏訪弘樹氏(同社提供)
質問:
海外市場での「Used in Japan」の評価の源泉は何か。
答え:
海外では、日本の中古品に対する評価が非常に高く、「Used in Japan」と評される。背景には、日本人が日常的にモノを丁寧に扱う文化があり、付属品や箱を含めた商品の状態が良好であることが挙げられる。さらに海外バイヤーからも、「日本の商品は安心して仕入れられる」といった評価を受けている。この理由として、日本ではリユース事業者による真贋確認や品質管理が徹底されており、偽造品が市場に流通しにくい環境が整っていることが考えられる。当社では店舗や商品センターなど複数の工程で商品をチェックしており、1つの商品に対して4回の確認が行われる。リユース品は信頼がなければ成り立たない。購入した人が「やはり中古品はダメだった」と感じないことが重要であり、誠実さや信頼が最大の差別化要因になると考える。
質問:
訪日外国人客の店舗での購入データを、海外戦略へどのように活用しているのか。
答え:
当社では日本国内の店舗における訪日外国人客向け販売データを単なる売上分析にとどめず、海外展開戦略の立案にも活用している。国内店舗で蓄積した免税販売や顧客属性に関するデータから、国・地域ごとの購買傾向を分析し、有望市場の選定につなげている。例えば、コメ兵の2026年2月~7月末までの販売実績では、中国人顧客向け販売実績は前年同期比約1.4倍、米国人顧客向け販売実績は同約2.1倍だった。こうした伸び率の大きい市場については、購買傾向や商品嗜好(しこう)を詳細に分析している。中国などアジア圏の顧客はブランドを特定できるデザインやロゴが明確な商品を好む傾向がある一方、欧米圏の顧客はヴィンテージ品や希少性の高いアイテムへの関心が高い。こうしたデータを、海外出店先の選定や現地商品構成の検討に活用している。店舗での購入の絶対数が多いコメ兵ならではのデータだ。
質問:
真贋AI判定は事業運営にどのような効果を与えているか。
答え:
当社は真贋AI判定を国内外で活用している。人だけに頼っていては現在の店舗拡大は難しかっただろう。AIが海外出店を支える重要な基盤になっているのは確かだ。一方で、AIだけで完結することはあり得ないと考える。確かにAIには、人間が確認しにくい特徴を画像検出できるなどの強みがある。正規品と模造品の双方を含む膨大なデータを学習させており、流通データの蓄積とともに判定精度も99%と高い水準を維持している。しかし、ブランド品鑑定では視覚だけでなく、触感や臭いなども重要な判断材料となるため、最終判断は必ず熟練の鑑定士が行っている。日本の鑑定力や真贋判定能力が、海外における競争力になっている。
質問:
海外展開の課題や克服すべきポイントは何か。
答え:
最大の課題は、現地でどれだけ安定的に商品を買い取り、仕入れられるかという点だ。海外市場において、現地で仕入れた商品を現地で売るという「地産地消」の成長戦略をとってきた。そのため当社は、進出検討段階から現地で商品調達環境や調達候補先を調査する。BtoBでは、リユース品の法人間取引市場、展示会、オークションなどの商品調達チャネルの有無と商習慣を確認する。日本では古物市場やオークションが発達している一方、海外では同様の仕組みが十分に整備されていない国も多い。そのため、現地での調達ルートの確保や市場そのものの形成が重要になる。昨年はマレーシアとタイで初の買い取りセンターを開設し、米国でも個人からの買い取りをスタートさせた。
また、事業拡大にあたっては人材育成も重要なテーマだ。鑑定士の育成を進める一方で、鑑定ノウハウや技術の流出には十分注意を払っている。
さらに、進出先を選定する際には、従業員が安全に働ける環境が整っているかどうかも重視している。事業性だけでなく、人材が安心して働き、長期的に事業を継続できる環境であることが重要な判断基準となっている。
質問:
リユース産業の将来をどのように展望しているか。
答え:
リユース産業は国内外ともにまだ成長の余地が大きい市場だと考えている。背景には物価上昇やサステナビリティへの意識の高まりに加え、フリマアプリなどの普及により中古品への心理的ハードルが低下していることがある。一方で、リユース産業には偽造品対策や品質管理という特有の課題も存在する。当社グループは、日本の品質管理文化そのものが国際競争力になると考えている。日本から流通する商品は信頼できるという仕組みができれば、「Used in Japan」は新たな輸出産業になり得るだろう。さらに「Checked in Japan」のような品質管理の考え方を業界全体で発信できれば、日本発リユース市場の競争力向上につながると期待している。

同社の取り組みは、日本のリユース企業が単に国内商品を海外へ販売する段階から、現地で仕入れ、販売し、真贋判定や品質管理を提供するグローバルサービス業へ進化しつつあることを示している。今後、日本のリユース産業が国際競争力を高める上では、「Used in Japan」に加え、「Checked in Japan」という品質管理の確立が重要なカギとなってくるだろう。モノそのものだけではなく、日本企業が培ってきた真贋判定能力や品質管理プロセスが付加価値として評価されれば、リユースは日本発の品質保証などを含めた新たな輸出産業へと発展する余地がある。

また、ここで得られる示唆はリユース業界に限らず幅広い業種に共通するものだ。海外市場で、製品やサービスそのものに加え、「品質管理力」「信頼を担保する仕組み」「顧客データを活用する力」といった「見えない価値」が競争力として評価される可能性がある。こうした観点から、海外展開を進める上では、自社の製品やサービスだけでなく、その背景にある管理手法やノウハウを見直し、新たな価値として発信していくことも重要だ。例えば、自社の品質管理や認証プロセスを棚卸しすること、海外市場で評価される強みの再整理、インバウンド顧客データを海外展開のヒントとして活用すること、AIやデジタル技術を活用した品質保証を標準化することなどが考えられる。

本事例は、日本企業の競争力が「モノ」だけでなく、「信頼を生み出す仕組み」にも存在することを示している。


注1:
リユース経済新聞、2025年9月26日付「リユース業界の市場規模推計2025(2024年版)」。 本文に戻る
注2:
「ThredUp and GlobalData, 2026 Resale Report, April 2026.外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」参照。ThredUpは米国NASDAQ上場のリユース企業。毎年「Resale Report」を、市場調査会社GlobalDataと共同で作成している。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロデジタルマーケティング部ECビジネス課
志賀 大祐(しが だいすけ)
2011年、ジェトロ入構。展示事業部展示事業課、ジェトロ・メキシコ事務所海外実習、お客様サポート部貿易投資相談課、海外調査部米州課、ジェトロ・メキシコ事務所などを経て2024年10月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ調査部調査企画課
樋口 彩乃(ひぐち あやの)
映画会社、海外航空会社を経て、2016年ジェトロ入構。
ビジネス展開支援部新興国進出支援課、サービス産業部ヘルスケア産業課、広報課を経て、2025年4月から現職。