若年層の新しい消費トレンド(中国)
Z世代をターゲットに新規市場の開拓や消費拡大を狙うには

2024年3月14日

中国では、1995~2009年生まれの「Z世代」の人口が、2019年時点で約2億6,000万人を超えている(2022年1月19日付地域・分析レポート参照)。インターネットやSNSなどのIT環境に囲まれて成長したZ世代は、前の世代とは大きく異なる価値観や消費観を持つ。また、Z世代は自身の個性や趣味を大切にし、自己満足を得るための消費を惜しまない傾向が見られる。さらに、就労を通じて一定の消費力をつけはじめており、新たな消費市場を生み出し、多くの企業から注目されている。本稿では、新世代の消費者であるZ世代が情報収集に使う媒体や、考え方、消費行動の特徴を紹介し、中国進出日系企業(ブランド)や各店舗が、Z世代をターゲットに新規市場の開拓や消費拡大を狙うための方法を分析する。

コミュニケーションや情報収集の手段、動画中心に移行

スマートフォン(以下、スマホ)の普及とインターネットの高速化により、中国社会ではコミュニケーションや情報収集の手段として、動画配信が急速に人々の生活に浸透してきた。電通が独自に開発したConsumer Connection System(以下、CCS)(注1)に基づき2023年8月に発表した調査結果では、中国のZ世代は1日平均6.3時間をインターネットに、5.1時間をスマホに費やしているという。特に、ウィーチャット(94.2%)、動画視聴(84.5%)、友人とのチャット(84.2%)、ネットショッピング(81.5%)などに多くの時間を費やしている(表1参照)。

表1:Z世代のネット利用行動とそれらの浸透率
順位 項目 浸透率(%)
1 ウィーチャット 94.2
2 動画視聴 84.5
3 友人とのチャット 84.2
4 ネットショッピング 81.5
5 音楽鑑賞 77.1
6 ニュースチェック 76.1
7 ショート動画の視聴 73.7
8 デリバリー注文 60.7
9 情報検索 60.1
10 動画のダウンロード 55.5
11 ナビや地図の使用 54.4
12 ゲーム 53.9

出所:電通中国2023年8月「重識Z世代、不被定義的一代」レポートを基にジェトロ作成

最近では、中国社会で急速に広がっているライブコマース(注2)の影響から、動画のライブ配信が広く普及している。CCS の同調査では、Z世代における動画のライブ配信の浸透率は45.1%と、Z世代を含む調査対象者全体15~64歳の35.7%より高い。視聴内容としては、エンタメ関係(44.6%)が最も高く、衣服・アクセサリー(41.1%)、美容スキンケア(35.7%)、オンラインゲーム(29.8%)、ライブコマース(26.6%)と続いた。Z世代では、ライブ配信視聴時に商品を購入したことがあると回答した割合が64.6%と6割を超えている。このように、ネットを利用したコミュニケーションや情報収集は、動画中心に移行している傾向が見られる。

Z世代の中で人気が高まりつつあるショート動画

ショート動画は、短時間でも多くの情報を伝えることができるほか、素人でもアプリ上で撮影から編集に至るまでの動画制作や投稿ができることから、一般人が自身の生活や趣味を表現する場として愛用されている。オンライン上の消費行動を研究する中国Mob研究院「ショート動画業界研究レポート」によると、2022年12月時点でショート動画配信の視聴者数は10億4,000人に上り、インターネット利用者の94.8%を占め、1人当たり1日平均で168分間も視聴しているという。ショート動画アプリのユーザーの54.7%は動画の編集または投稿した経験を持つ。年代を問わず、投稿内容の人気順は「グルメ」(44.3%)、「日常生活上の豆知識」(40.3%)、「エンタメ」(33.3%)となっている。「00後」(2000年代生まれ)は1分以内のより短いショート動画を好み、アニメ、動物、音楽などのコンテンツに対する関心度が他の世代より高い傾向が見られる。

代表的なショート動画アプリとしては、抖音(Douyin)と快手(Kuaishou)が挙げられる。中国のモバイルデータ分析などを行う北京貴士信息科技(QuestMobile)の統計では、2023年5月時点で、抖音の月間アクティブユーザー数は7億2,000万人、快手は4億8,000万人に達している。前述したCCSの調査では、Z世代における抖音と快手の浸透率は、それぞれ46.7%と31.3%だった。2社には重複したユーザーが多いが、投稿の内容と見せ方にそれぞれ違いがある。抖音は質の高いオリジナルコンテンツに注力し、ユーザーの閲覧習慣を基にアルゴリズム方式(注3)でコンテンツを表示しているが、快手は地方を中心にユーザーを増やしており、一般人が制作した動画の表示回数の配分も比較的平等に設定している(表2参照)。

表2:抖音と快手の事業概要
No 項目 抖音(Douyin) 快手(Kuaishou)
1 月間アクティブユーザー数(注1)(億人) 7.2 4.8
2 ユーザーの年齢分布 24歳以下:26.5%
25~34歳:42.0%
35~44歳:19.0%
45~54歳:7.0%
55歳以上:5.0%
24歳以下:31.0%
25~34歳:38.8%
35~44 歳:16.8%
45~54 歳:7.4%
55歳以上:6.1%
3 ユーザーの男女割合 男性:54%
女性:46%
男性:52%
女性:48%
4 ユーザーの地域分布(注2) 一級と新一級都市:30.4%
二級都市:21.1%
三級都市:21.0%
四級およびそれ以下の都市:27.5%
一級と新一級都市:20.6%
二級都市:17.5%
三級都市:23.0%
四級およびそれ以下の都市:39.1%
5 コンテンツ表示の仕方 ショート動画を中心に、ユーザーの閲覧習慣を基にアルゴリズム方式でコンテンツを表示。 ショート動画を中心に、趣味や閲覧履歴を基にアルゴリズム方式で表示される。一般人が制作した動画の表示回数の配分も比較的平等に設定。
6 コンテンツの項目 グルメ、ビューティ、音楽、ダンス、ファッション、動物、旅行、親子など10以上のジャンルがあり、Z世代にはアニメ、エンタメ関連の人気が高い。 日常生活、手品・絵描き・ものまねなどの個々の特技、専門技術、音楽やダンスなどを紹介。有名人や芸能人など著名人のほか、お笑い芸人、容姿端麗な一般人の人気が高い。
7 ライブコマース機能 「抖音電商」という自社ECプラットフォームでサービスを提供。 「快手小店」という内部 ECプラットフォーム、第三者ECサイトへのリンク。

注1:QuestMobile、2023年5月時点のデータ。
注2:中国の都市は、人口や経済レベルなどのさまざまな観点から、6つに分類されている。
出所:次の公開情報に基づきジェトロ作成
中国Mob研究院2023年6月「ショート動画業界研究レポート」
ジェトロ調査レポート「中国 EC 市場と活用方法」(2021年)
ジェトロ調査レポート「中国ウェブプロモーションにおけるリスクマネジメント(2024年1月)」

Z世代から支持されている小紅書(RED)

近年、抖音、快手、小紅書などのSNSアプリは、従来のソーシャル機能に加え、ライブ配信やEC(電子商取引)機能を搭載し、商品の発見から購買までの活動をすべてアプリ内で完結するライブコマースを発展してきた。ここで、20~30代の都市部在住の女性の支持率が高い小紅書を例に説明する(表3参照)。

表3:小紅書の事業概要
No 項目 小紅書(RED)
1 月間アクティブユーザー数(億人) 2.6(注)
2 ユーザーの年齢分布 24歳以下:29.6%
25~30歳:21.9%
31~35歳:18.1%
36~40歳:11.3%
41歳以上:19.1%
3 ユーザーの男女割合 男性:30%
女性:70%
4 ユーザーの地域分布 一級と新一級都市:28.2%
二級都市:18.2%
三級都市:24.3%
四級およびそれ以下の都市:29.3%
5 コンテンツ表示の仕方 テキストや画像を中心に、一般人が投稿した商品レビューなどが比較的、平等に表示されている。
6 コンテンツ項目 ファッションコーディネート、メイクアップ、グルメ、旅行、ライフスタイル、ベビー・マタニティ、生活百科、エンタメ、読書。ファッション、コスメ、グルメ関連の注目度が高い。
7 ライブコマース機能 自社サイトで開かれた店舗のみならず、淘宝店舗のリンクを貼ることが可能となる。
「店播」や「自播」と呼ばれる店舗やブランド(企業)によるライブコマースも行われている。

注:2022年末時点のデータ。
出所:次の公開情報に基づきジェトロ作成
ジェトロ調査レポート「中国 EC 市場と活用方法」(2021年)
ジェトロ調査レポート「中国ウェブプロモーションにおけるリスクマネジメント」(2024年1月)

小紅書のアプリには、テキスト記事、画像、動画配信の形でファッション、コスメ、グルメ関連などの女性に人気が高いコンテンツが、一般ユーザーおよびインフルエンサーから連日、多く投稿されている。アプリ内で形成された各コミュニティでは、「筆記」と呼ばれる商品レビューが掲載され、リアルな口コミや体験談の投稿が多く集まっている。また、一般人のみならず、企業や影響力のあるタレント、有名人、インフルエンサーなどもアカウントを開設し、日常生活のシェア、商品やサービスの紹介や推薦を行っている。2020年から、小紅書はライブ配信にも力を入れ、タレントやインフルエンサーのライブ配信とともに、「店播」や「自播」と呼ばれる店舗やブランド(企業)によるライブコマースも急成長を続けている。小紅書の統計によると、2023年1~4月に、月次の店舗ライブ配信件数が前年同期比2.9倍に増え、店舗によるライブ配信での購入者数も月次で2.2倍増だった。

小紅書が、若年層を中心に信頼を寄せられるプラットフォームになった理由は、Z世代は自身と同じ趣味や消費志向を持つ「圏層」への信頼度が高いことなどが挙げられる。SNS上で形成されているコミュニティには、インフルエンサーまたは著名人がカリスマ的な存在となり、Z世代の消費トレンドをリードしている。その結果、インフルエンサーが推薦したヒット商品、アイドルがイメージキャラクターを務める商品やブランドを購入する傾向が強くなっている。

「悦己」(自身の満足)消費に重きを置くZ世代

Z世代は趣味活動に消費する際に、他人より「悦己」[自身を悦(よろこ)ばせること]を優先させ、自身の満足度を追求することに重きを置く傾向が強く見られる。中国調査会社iiMedia Research(艾媒諮詢)が公表した「2022年中国趣味消費トレンド洞察報告」によると、「90後」(1990年代生まれ)と「00後」(2000年代生まれ)世代の64.9%が「見た目が良く、美しいものを生活に取り入れて自身を悦ばせる」ことを、趣味関連消費の核心と捉えている(表4参照)。

表4:若年層の趣味関連商品の購入理由
順位 理由 割合(%)
1 見た目が良く、美しいものを生活に取り入れて自身を悦ばせる 64.9
2 親戚や友達に「種草」され、コミュニティや圏層に馴染むため 52.0
3 ストレス解消、自身を癒すため 43.8
4 商品の文化的価値に引かれた 43.2
5 IP/アイドルが身に着けている商品を所有するため 39.5
6 常に新しい商品を購入したいと考えるため 26.0

出所:iiMedia Research「2022年中国興味消費トレンド洞察報告」を基にジェトロ作成

2023年のダブルイレブンセール(W11、11月11日に行われる世界最大規模のECセール)の結果からも、「悦己」消費が顕著だった。販売額が増えたスナック菓子、香水・フレグランス、生け花、準高級ブランド品、ペット、IT製品、福袋、自己啓発の授業などがその一例だ。そのほかにも、若年層の消費の内訳をみると、eスポーツ、サイクリング、スキーなどの趣味関連が大幅に伸びた。Z世代の消費トレンドを研究するJust So Soul研究所の「2023年Z世代ダブルイレブン消費行動報告」によると、Z世代がダブルイレブンに購入した商品には、日用品、衣服・アクセサリーなどの生活必需品のほか、「ホテル・旅行」(48.8%)、「健康食品・医薬品」(48.6%)、「ペット用品」(46.2%)、「体験・ヘルスケアサービス」(44.7%)がそれぞれ5割弱を占めた。

前述の表4の「若年層の趣味関連商品の購入理由」の2つ目に、「親戚や友達などが話題にしている店やコンテンツなどの情報から「種草」(購買意欲をかき立てられること、注4)され、コミュニティや圏層に馴染(なじ)むため」と挙げた割合が52.0%あったことから、Z世代がコミュニティや「圏層」を非常に重要視していることが分かる。また、中国の民間リサーチ会社の北京淘冪科技による情報発信プラットフォームの魔鏡市場の「2023年Z世代消費トレンド分析報告」によると、2023年1~5月に、微博(Weibo)、小紅書、抖音で「悦己」に関する投稿件数が1,300万を超え、前年同期比で74%増加した。よって、Z世代は自己満足につながった商品情報をソーシャルメディアに積極的に拡散していることがうかがえる。

Z世代をターゲットに、企業ブランドが消費拡大を狙うためのポイント

本稿では、Z世代が情報収集に使う媒体や手段、価値観や消費行動の特徴を紹介した。デジタル・ネイティブのZ世代は、ショート動画やライブ配信などの新しい情報伝達ツールを使いこなしている。また、「悦己」という自己表現や自己満足につながる商品やサービスの価値に対して共感を生みやすい。また、価値共有の場となるコミュニティや「圏層」を意識し、信頼する特徴が見られる。

中国進出日系企業(ブランド)や各店舗が、中国のZ世代をターゲットに新規市場の開拓や消費拡大を狙うためには、まず、本稿で例示した情報プラットフォームの特徴を把握した上で、共感を得られやすいコンテンツの配信を工夫しながら行う必要がある。次に、イメージキャラクターやKOLなどのインフルエンサーを活用しながら、「種草(種まき)」と呼ばれるマーケティング手法で効率的に情報発信をすることが重要となる。最後に、ブランド価値を共感したユーザーが、商品レビューや自己体験をコミュニティにシェアしやすい環境を整備することが挙げられる。Z世代自身を製品のイメージキャラクターとして機能させることで、ブランドの支持率向上および顧客基盤の拡大が期待される。


注1:
CCSは、Consumer Connection Systemの略語。同システムを用いて、70カ国・40万人以上をカバーする世界規模のパネル調査を行っており、消費者の興味、価値観、動機、ニーズ等について把握することができる。中国では、2006年から108都市に住んでいる消費者を対象に調査を行い、毎年平均して12万人のサンプルを集めている。2023年8月に「重識Z世代、不被定義的一代」というレポートを発表した。
注2:
ECとライブ配信を組み合わせた販売手法で、消費者の購買意思決定に強い影響力を持つKOL(インフルエンサー)が、ライブ形式で視聴者に商品を紹介しながら販売するもの。
注3:
アルゴリズム方式とは、プログラミングで大量なデータを高速に処理するために、コンピュータプログラムへ組み込んだ一定の計算手順や処理方法。
注4:
「種草」とは、もともと草の栽培を意味する中国語であるが、「草」は強い生命力があることから、「どんどん高まる購買意欲」を形容するものとして、商品の長所を宣伝し、他人の購買意欲をかき立てる行為を意味するマーケティング・ネット用語になっている。
執筆者紹介
ジェトロ・上海事務所
王 艶(おう えん)
日系コンサルティング会社で16年にわたり勤務し、日系企業中国法人向けに様々な支援サービスを提供。2019年から現職。