2021年度は、自動車国内販売、輸出とも増(インド)
人気車種、EVで新たな動き

2022年6月29日

世界第5位の自動車市場を誇るインド。2021年度(2021年4月~2022年3月)は、世界的に見られる半導体不足や原材料高騰など供給側の課題が続いた。その中で、当年度の乗用車販売は前年度比13.2%増。インドからの自動車輸出の増加、多目的自動車(以下、UV)人気の高まり、電気自動車(以下、EV)などクリーンエネルギーへの積極参入といった動向も見られた。

本レポートでは、インド自動車工業会(SIAM)が公表する統計調査を踏まえ、セグメント別・メーカー別に分析。2021年度のインド自動車市場の概況をまとめた。

国内自動車販売、コロナ前の水準には及ばず

SIAMは2022年4月13日、2021年度の自動車統計(出荷ベース)を発表した(SIAMウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )。乗用車(注1)の国内販売台数は306万9,499台。前年比で13.2%増加した(表1参照)。その背景には、新型コロナウイルス感染拡大対策のため実施された全土ロックダウンなどの余波を受け、2020年度に国内販売が大きく落ち込んでいたことがある。すなわち、需要の回復は見られたものの、反動増という側面もあった。また当期は、デルタ変異株が流行した第2波(2021年4~5月)、オミクロン変異株が流行した第3波(2022年1~2月)の到来による販売の減速にも直面。さらには、世界的な半導体不足や原材料高騰など、メーカー各社は相次ぐ課題に対応を迫られた。

SIAMの鮎川堅一会長(マルチ・スズキ副会長)は、プレスリリースで厳しい見解を示した。「販売台数については低水準から抜け出しつつあるものの、4部門(乗用車、二輪車、三輪車、商用車部門)すべてにおいて2018年度(2018年4月~2019年3月)の水準を下回っている」という。

一方、2021年度の自動車(注2)販売台数は、1,751万3,596台だった。前年度比で5.9%減だ。

また、生産台数は2,293万3,230台。前年度比1.2%増と回復途上にはある。しかし、前述した供給側の課題が続いたことにより、2019年度(2019年4月~2020年3月)の生産台数(2,635万3,293台)には遠く及ばない実績に終わった。

表1:2021年度の部門別自動車の生産・販売・輸出台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
部門 生産 国内販売 輸出
台数 前年度比 台数 前年度比 台数 前年度比
乗用車(注1) 3,650,698 19.2 3,069,499 13.2 577,875 42.9
階層レベル2の項目一般乗用車 1,844,985 4.1 1,467,056 △ 4.9 374,986 41.6
階層レベル2の項目多目的自動車(UV) 1,691,081 43.1 1,489,178 40.4 201,036 45.8
階層レベル2の項目バン 114,632 7.0 113,265 4.1 1,853 12.4
二輪車 17,714,856 △ 3.5 13,466,412 △ 10.9 4,443,018 35.3
階層レベル2の項目スクーター 4,351,535 △ 4.6 4,009,076 △ 10.6 350,330 51.0
階層レベル2の項目オートバイ 12,890,149 △ 2.0 8,984,186 △ 10.3 4,082,442 34.2
階層レベル2の項目モペッド 473,172 △ 25.6 473,150 △ 23.3 10,246 23.3
三輪車 758,088 23.3 260,995 18.9 499,730 27.2
商用車(注2) 805,527 28.9 716,566 26.0 92,297 83.4
合計(その他を含む) 22,933,230 1.2 17,513,596 △ 5.9 5,617,246 35.9

注1:BMW、メルセデス、ボルボ・オートのデータは含まれない。タタ・モーターズは、21年4月~12月のデータが2021年度の合計に含まれる。
注2:ダイムラーおよびスカニアのデータは含まれない。JBMオートに限って、21年4月~6月のデータが2021年度の合計に含まれる。
出所:インド自動車工業会(SIAM)

UV需要の伸びが顕著

セグメント別には、UVの躍進が目を引く。これまで市場シェアの高かった小型乗用車を含む一般乗用車の販売台数を、わずかながら上回った。当年度の販売台数は、148万9,178台。前年度比で実に40.4%増になった。

特に、値頃感のあるコンパクトUVが人気だ。コンパクトUVとは、全長が4メートル以下で、価格が200万ルピー(約340万円、1ルピー=1.7円換算)以下のUVだ(SIAM定義)。タタ・モーターズの「ネクソン」など(計17万6,846台)、マヒンドラ&マヒンドラの「ボレロ」など(計15万3,640台)で、需要が高かった。

一般乗用車では、マルチ・スズキのコンパクトモデル「スイフト」「ワゴンR」「セレリオ」など(計70万4,881台)、同ミニモデル「アルト」「エスプレッソ」(計21万1,762台)が売れ筋。同社は一般乗用車セグメントのうち63.6%のシェアを獲得した。対照的にUVでは、大きくシェアを獲得したメーカーがない。各社がしのぎを削っている様子がうかがえる(図1参照)。

図1:2021年度のセグメント別乗用車販売台数

2021年度一般乗用車販売台数
マルチ・スズキは一般乗用車セグメント全体の63.6%のシェアを獲得。
2021年度多目的自動車(UV)販売台数
UVは大きくシェアを獲得したメーカーはなく、マルチ・スズキは19.5%、現代(以下、ヒュンダイ)自動車は16.8%、多々・モーターズは15.2%、マヒンドラ&マヒンドラは15.0%、起亜は12.5%、その他は20.9%、と各社がしのぎを削っている様子がうかがえる。

出所:インド自動車工業会(SIAM)

メーカー別では、乗用車国内販売市場シェア43.4%を占める首位のマルチ・スズキとシェア2位の現代自動車(以下、ヒュンダイ)がそれぞれ2.9%増、2.1%増。前年度よりわずかにプラスの販売水準を確保した(表2参照)。一方、2桁以上の伸びを記録している主要乗用車メーカーも多い。上位2社の販売増加は比較的小幅だったとも評価できそうだ。なお、日系5社(マルチ・スズキ、トヨタ・キルロスカ、ホンダ、日産、いすゞ)の市場シェアの合計は51.5%。前年度から3.4ポイント減少した(図2参照)。

表2:2021年度の主要メーカー別乗用車国内販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2020年度
(20年4月~
21年3月)
2021年度
(21年4月~
22年3月)
増減率
マルチ・スズキ 1,293,840 1,331,558 2.9
現代 471,535 481,500 2.1
タタ・モーターズ 224,109 373,138 66.5
マヒンドラ&マヒンドラ 157,215 225,895 43.7
起亜 155,686 186,787 20.0
トヨタ・キルロスカ 93,124 123,717 32.9
ホンダ 82,074 85,609 4.3
ルノー 92,268 87,475 △ 5.2
MGモーター 35,597 40,369 13.4
シュコダ・オート 11,319 33,962 200.0
フォルクスワーゲン 20,440 31,901 56.1
日産 18,884 37,678 99.5
FCAインディア 6,536 11,949 82.8
いすゞモーターズインディア 50 851 1602.0
合計(その他を含む) 2,711,457 3,069,499 13.2

注:BMW、メルセデス、ボルボ・オートのデータは含まれない。タタ・モーターズは21年4月~12月のデータが2021年度の合計に含まれる。
出所:インド自動車工業会(SIAM)

図2:2021年度の主要乗用車メーカーの市場シェア
日系5社(マルチ・スズキ、トヨタ・キルロスカ、ホンダ、日産、いすゞ)の合計は51.5%で、前年度から3.4%減少した。

出所:インド自動車工業会(SIAM)

二輪車の販売、日系2社が健闘

2021年度の二輪車販売台数は1,346万6,412台。前年度比10.9%の減少になった(表1参照)。

セグメント別では、主要部門のオートバイが898万4,186台で、前年度比10.3%減。スクーターは400万9,076台、10.6%減だった。

主要二輪メーカー各社が2桁台の減少を記録した。その中で、スズキの販売台数は前年度比16.9%増の60万9,828台。カワサキは、前年度比約3倍の3,774台を販売した(表3参照)。スズキはスクーター「アクセス」など(計58万7,053台、前年度比19%増)、カワサキはオートバイ「ニンジャ300」(2,148台、前年度データなし)の売れ行きが好調だった。なお、日系4社(ホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキ)の市場シェアは合計33.9%。前年度から、1.4ポイント増加した(図3参照)。

表3:2021年度の主要メーカー別二輪車国内販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2020年度
(20年4月~
21年3月)
2021年度
(21年4月~
22年3月)
増減率
ヒーロー 5,601,255 4,643,526 △ 17.1
ホンダ 3,867,817 3,468,851 △ 10.3
TVSモーター 2,164,228 2,047,564 △ 5.4
バジャジオート 1,809,375 1,641,084 △ 9.3
スズキ 521,474 609,828 16.9
ロイヤルエンフィールド 573,438 521,243 △ 9.1
ヤマハ 524,186 475,588 △ 9.3
ピアジオ 56,069 53,694 △ 4.2
カワサキ 1,284 3,774 193.9
合計(その他を含む) 15,120,783 13,466,412 △ 10.9

出所:インド自動車工業会(SIAM)

図3:2021年度の主要二輪車メーカーの市場シェア
日系4社(ホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキ)の市場シェアは合計33.9%で、前年度から1.4%増加した。

出所:インド自動車工業会(SIAM)

輸出の伸びが顕著

2021年度は、前年度比35.9%増の561万7,246台の自動車が輸出された。増加幅が大きく目立ったかたちだ(表1参照)。部門別では、乗用車が57万7,875台(42.9%増)、二輪車が444万3,018台(35.3%増)、三輪車が49万9,730台(27.2%増)、商用車が9万2,297台(83.4%増)。すべての部門で2桁の伸びを記録した(表1参照)。

中でも二輪車は、過去最大の輸出台数を記録した。その2021年の主な輸出先は、ナイジェリア、コロンビア、ネパールだった(注3)。SIAMは「インド製品が品質、コスト、性能の面で世界的に受け入れられるようになっているのは、喜ばしい」と前向きな見方を示している。

EVなどクリーンエネルギーへの参入がカギ

インド政府は2030年までに乗用車新車販売の3割をEVにする目標を掲げている(2022年3月25日付地域・分析レポート参照)。その普及に向けた政策にも積極的だ。2021年に新規登録された自動車のうち、EV車両の登録台数は約3%、約30万台とかなり限定的なのは事実だ。それでも年々少しずつ増えており、国内外の自動車メーカーによる積極投資が相次いでいる。

日系メーカーでは、ホンダが2021年11月に、電動リキシャ向けのバッテリーシェアリングサービスの提供を開始すべく、ベンガルールに現地法人を立ち上げた(2021年12月9日付ビジネス短信参照)。また2022年3月には、岸田首相の訪印に合わせ、スズキがグジャラート州で約1,500億円規模のEV・電池生産を行うことを発表(スズキのウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )。EV分野への積極参入を進めている。さらにトヨタは、水素を動力源にする燃料電池車(FCEV)ミライのパイロットプロジェクト実施を発表した(インド道路交通省(MORTH)ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )。

当地のEV市場は、地場タタ・モーターズや韓国・現代などが存在感を示す。その中で日系各社のクリーンエネルギー事業参入への取り組みは、今後も人口増を背景に成長が見込まれるインド自動車市場で重要な戦略になるだろう。


注1:
ここでいう「乗用車」には、UVおよびバンを含む。
注2:
ここでいう「自動車」には、二輪車、三輪車と商用車を含む。
注3:
輸出統計品目番号8711(モーターサイクル)の2021年1~12月のデータをGlobal Trade Atlasで参照した。
執筆者紹介
ジェトロ・ベンガルール事務所
倉谷 咲輝(くらたに さき)
2019年、ジェトロ入構。農林水産・食品部を経て、2021年9月から現職。

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