欧米系企業の地域統括拠点、組織・機能変化はどう進んだ(アジア大洋州)
シンガポールでのヒアリングから浮かび上がる日系企業への示唆とは

2021年5月21日

アジア大洋州地域では、米中摩擦の激化や新型コロナウイルスによるサプライチェーンの混乱などを受け、事業環境の変化が大きく進んでいる。域内の事業法人を管轄する地域統括拠点の組織や機能はその役割が変化していくとみられ、企業戦略やサプライチェーン管理などの見直しに取り組む企業もある。

こうした動きが、ジェトロがシンガポールを地域統括拠点とする欧米企業にヒアリングを実施した結果から見えてきた。本稿では、そのヒアリング結果を基に、アジア大洋州地域における欧米企業の地域統括拠点の組織・機能を整理し、日系企業との違いを確認する。あわせて、米中摩擦などの地政学的要因、新型コロナの影響、サプライチェーンの見直し、デジタル化などへの取り組み、今後の展望・示唆などにも触れる。

機能軸強化で全体最適化を進める欧米企業

アジア大洋州地域における地域統括拠点の組織・機能とはどのようなものか。ジェトロは2021年1月から3月にかけて、シンガポールを地域統括拠点とする欧米企業(7社)を対象にヒアリングを実施。その結果を基に本稿では、地域統括拠点の設置目的別に、大きく以下の3つに分類する(表1参照)。(1)「ガバナンス強化」型では本社が経営を主導し、(3)「地域発成長重視」型は地域統括拠点による比重が高い。(2)「事業拡大重視」型はその中間に当たる。これらの分類に基づくと、アジア大洋州地域の日系企業には「ガバナンス強化」型の地域統括拠点が多い。対して欧米企業は、それぞれに満遍なく分類される。なぜなら、地域統括拠点の設置目的に従って組織、機能、役割、権限・責任が設計されるからだ。

表1:目的別にみた地域統括拠点・機能の3分類
目的 (1)ガバナンス強化 (2)事業拡大重視 (3)地域発成長重視
経営主導権 本社(事業本部)主導 (1)と(3)の中間 地域主導
地域統括拠点設立のミッション 事業部門の計画を実行するため、事業活動の進捗を管理し、
経営指導をする。
地域特性に合わせた販売戦略を独自に作成。本体事業部門とすり合わせ、その戦略実行を主体的に行う。 地域の独立性を高め、地域ごとの収益最大化を最優先とする。
自己による投資拡大を認める。
本社のコーポレート部門との関係
(権限)
  • グローバル最適の中で、人事、財務、監査、ITなどの業務を代行。
  • 生産拠点・販売拠点も全社戦略に依存。
  • グローバル最適の中で、人事、財務、監査、ITなどの業務を代行。
  • 生産拠点・販売拠点も全社戦略に依存。
  • ヒト・モノ・カネ・情報、生産・販売拠点は本社から支援を受けながらも、地域独自の判断が優先される。
本社の事業部門との関係
(権限)
  • 事業部門が現地法人の計画をトップダウンで指示。
  • 事業部門から、販売計画と地域の販売計画を事前にすり合わせ。
  • ただし、具体的な取り組みは地域統括本社が主体的に実行。
  • 地域の独自性が優先され、事業部門とは取引関係として定義。
  • 方針レベルのすり合わせは行うが、販売計画は地域主体で実行。
各国法人などグループ子企業との関係
(権限)
  • 販売会社は販売状況の管理。
  • 生産会社は生産効率の管理。
  • 販売会社は事業活動を詳細に管理。
  • 生産会社は事業部門が主体的に管理。生産効率管理などの経営支援にとどめる。
  • 販売会社の管理責任を明確に追うだけでなく、生産会社の経営についても責任を負う。
  • 生産会社も独立採算的な経営を行い、事業部門とは市場価格で取引。

出所:各種資料からジェトロ作成

欧米企業の特徴は、これら事業部単位で組織する「事業軸」と地域横断的な視点で組織する「地域軸」の分類に加えて、本社が設定した機能別に組織する「機能軸」による全体最適・標準化を進めていることだ。横串機能が設けられているとも言い換えられるだろう。とりわけ、管理・間接業務・機能(購買・調達、金融、ITなど)を共通化し、事業活動の効率性、迅速性、業務品質を下支えする。例えば、様々な業務に関わるデータについて、1つのプラットフォームに集約することでデジタル化を進め、全社的に統制するなどの措置を取っている。さらに、欧米企業の多くは、地域統括拠点において、各機能に係る統括責任者(CxO)に幅広い責任と強い権限を与え、域内での全体最適化を図っている。すなわち、トップマネジメントの役割が明確化されていることになる。

一方、日系企業は、本社が海外進出を主導してきた経緯からも事業軸が強く、全社を通じたオペレーション効率と品質を支える機能軸が弱い。また、地域統括拠点における権限が不明確で、派遣駐在員など「ヒト」による暗黙知に依存する仕組みとなり、各国拠点でばらばらに業務構築が進む。そのため、地域統括拠点による統制が軽視されやすい傾向がみられる。このような組織設計では、事業軸に人材・情報が集中しやすい。機能軸の観点で様々な制度や仕組みを導入しても、機能軸やトップマネジメントは事業軸と対等にならない。むしろ、かえって意思決定が複雑になるなどの弊害を抱えやすいことが指摘される。

欧米企業と日系企業の違いから浮かび上がるのは、地域統括拠点での機能軸強化が、事業・経営の効率化、意思決定の迅速化、市場変化への対応などにつながることだ。それによって、全体最適が促進されることになる。

機能分散化や権限移譲も進む

さらに、本調査のヒアリングでは、「組織・体制の見直し・最適化」「サプライチェーン見直し」「デジタル化推進」に関する問いを中心に実施。米中摩擦や新型コロナといった近年のトレンドに対して、どのように各企業が対応しているかを確認し、ポイントをまとめた(表2参照)。

表2:欧米企業7社へのインタビュー結果のポイント

企業 A社 B社 C社 D社 E社 F社 G社
業種 ヘルスケア 消費財 重電 IT機器 自動車部品 産業機械 産業機械
3分類※表1参照 事業拡大重視 地域発成長重視 地域発成長重視 事業拡大重視 事業拡大重視 事業拡大重視 事業拡大重視
地域統括拠点・機能 市場拡大に伴い、管轄範囲からの中国の切り出し。
付加価値の低い地域統括機能の移転
地域統括拠点のカバーエリアからインドネシア、タイ、ベトナムの切り出し検討(各国法人への権限移譲、意思決定の迅速化) 市場拡大に伴うアジア大洋州地域からの中国の切り出し(中国に新たに地域統括拠点設立) 管理レイヤー・地域区分の見直しによる地域統括拠点数の増加
(意思決定の迅速化)
付加価値の低い業務の移転
コスト削減のための地域統括拠点・国レベルの一部機能の統廃合・最適な配置
市場環境の変化等を踏まえた一部門の移転(中国へ)
有事発生に、柔軟かつ迅速に対応するための地域への権限移譲や経営体制の検討 地域統括拠点への権限移譲
駐在員減。
地元経営人材の登用
退職者の後任の不補充、
役職統廃合
コーポレート 地域統括拠点への
権限移譲
コスト削減・税制の観点からマレーシアに間接部門を設立 付加価値の低い業務の
アウトソーシング
リモートワーク推進等に伴うオフィスの物理的縮小
事業開発・企画 スタートアップとの連携による事業開発 デジタル化・環境(ESG)対応の強化 モノ売りからaaS型の
ビジネスへシフト
スタートアップや教育機関との協業によるイノベーション推進
製品・サービス開発 中国国内向け研究開発
の強化
AIおよびリモート製造分野の強化 IoT・ソフトウェアの強化、加速 デジタル・オートメーション分野の強化
営業・マーケティング 直営ウェイトの縮小・代理店等の利活用強化
生産・サプライチェーンマネジメント(SCM) 生産拠点の分散化 地産地消
リモート製造推進
BCP見直し各国での製造(地産地消) 地場調達
調達先の多様化
調達先多様化
(中国依存度低下)
在庫管理見直し
SCM余力増
2社購買強化
物流の外注化
調達先多様化
リモート製造
新技術活用
(3Dプリンタなど)
デジタル 製品とデジタル(ソフト)の融合 バリューチェーン全体を通じたデジタル化(社内外)の推進 デジタル化に向けた
IT環境整備
社内向けデジタル教育
の推進
サービス提供手段の
デジタル化
IoT/デジタルカンパニー試行(2010年より) 業務のリモート化
既存システムのデジタル化
バリューチェーンを通じたデジタル化(社内外)推進
その他 バリューチェーンを通じた環境対応 環境対応の強化 突然の需要変化を見込んだ契約社員比率の増加

出所:各社へのインタビュー結果から取りまとめ

まず、欧米企業による域内での事業戦略や販売計画などに関しては、大きな変化は見受けられなかった。その背景には、ファンダメンタルズ(基礎的条件)や市場は引き続き堅調との見通しから、地政学的変化や新型コロナによる影響があったとしても、中長期的にこれまでと同様の戦略をとっているようだ。

一方、「組織・体制の見直し・最適化」については、各社の業況が短期的に悪化していることからも、合理化・効率化などの方策を取っている。その方策として、たとえば「機能の統廃合や、機能移転によるコスト削減・最適配置」や、「地域統括機能に合わせた分散化」が挙げられる。IT機器メーカーD社では、監査、法務、会計など、低付加価値の機能を低コストのマレーシアへ移転した。産業機械メーカーG社は、複数機能を1つのセクションに統合。このほか、駐在員引き揚げにより現地人材へ移管することでコスト削減を図った。また、ヘルスケアメーカーA社はシンガポールの高コストを憂慮し、周辺国(タイ、マレーシア)への移転・分散化を検討している。このようにインタビューした欧米企業では、地域統括拠点の体制を引き締め、機能を見直すことで最適化を図っている。

また、近年の社会・経済環境の変化を契機に、「地域統括拠点への権限移譲強化」「拡大する市場への対応としての地域統括拠点・組織の見直し」に取り組むケースも目立った。産業機器メーカーF社では、地産地消を推進する中、事業オペレーションの観点で地域統括拠点・機能に強い役割を持たせることを検討している。また、重電メーカーC社でも現地化を進めるうえで必要な権限移譲を進めている。同じく消費財メーカーB社が管轄する国・地域の中には、急速に拡大する市場がある。こうした国・地域の管理を既存地域統括拠点から切り離すため、管轄エリアを見直した。同社では、インドネシア、タイ、ベトナムなどの各事業法人が大きく成長し、これらの国については地域統括拠点からではなく、各国法人に責任者を置きリーダーシップを発揮させている。また、重電メーカーC社は、中国市場を重視。シンガポールの地域統括拠点から管轄していた同国を切り離し、世界5極体制へと組織変更した。

このように欧米企業における地域統括拠点の組織・体制については、撤退・縮小などの変化は見受けらない。しかし、機能統廃合やコスト削減に加え、低付加価値機能・業務の他国移転、ローカルへの権限強化・移譲など、各社の事情に合わせた対応をとっている。

サプライチェーンを見直し、BCP視点で経営を再考

欧米企業の「サプライチェーンの見直し」については、従来からサプライチェーンの現地化や調達分散化を進め、一国への依存度の高さをヘッジさせるような取り組みが見られた。また、不測の事態が発生した場合に事業を早期に復旧させる「事業継続計画(BCP)」という観点から、地域統括拠点や現場への権限移譲、調達多様化、デジタル化などの動きが進展した。

具体的な方策として、米中摩擦の影響により、サプライチェーンの現地化や調達元の分散化に向けた取り組みがある。消費財メーカーB社では、最安調達の方針からローカル調達(地産地消)へとシフトさせた。米中摩擦による各国の保護主義的な輸入措置や為替政策によるリスクヘッジが、その理由だ。また、IoT(モノのインターネット)やブロックチェーンなどを利用し、顧客向けのトレーサビリティを強化させている。重電メーカーC社では、BCP戦略の見直し、分散調達を推進する。一方、ヘルスケアメーカーA社では、生産拠点の移転が困難な高度製品については移管先の検討に時間がかかる見込みだ。自動車部品メーカーE社では、セキュリティ・安全保障の観点から組織・サプライチェーンの見直しを進める。既に、特定国で生産されていた一部製品について欧州へ移管したという。

次に、新型コロナ禍への対応として、米中摩擦への対応と同様に、調達先の多様化、BCP対応可能で迅速かつ柔軟なサプライチェーン構築といった対応を取っている。自動車部品メーカーE社では、調達先の多様化、在庫管理の改善、サプライチェーンの寸断リスクを回避するための地産地消を推進。産業機械メーカーF社では、調達・購買の一国集中を避け、BCP整備を図っている。

また、消費財メーカーB社は、新型コロナ禍をきっかけに、各地域統括拠点にリスク対応の専門組織を新設。様々なリスクに対して迅速に対応する。IT機器メーカーD社では、現地化推進のため地域統括拠点の権限を強化した。その背景には、顧客の購買や注文がデジタル化するなど、購買チャネルが急速に変化する現実があった。

ガバナンス強化の観点からも重要性が増すデジタル推進

新型コロナ禍により、欧米企業による「デジタル化推進」の取り組みが加速している。デジタル化は、事業拡大、コスト削減、リソース最適化などの目的を達成するために、これまで以上に重要な要素だ。また、組織・体制、生産・サプライチェーンマネジメント、新規事業開発・企画などあらゆる業務面で統制強化の観点から重要性が増している。

組織・体制についても、新型コロナによって対面のコミュニケーションが制限される中、デジタル推進組織・人材強化が進められている。消費財メーカーB社は、金融、調達、サプライチェーン、ITなどの部署で、組織のデジタル化を急速に進める。

また、生産・サプライチェーンマネジメントでは、トレーサビリティ、サービス品質、業務改善・自動化などにおいてデジタル活用が進められている。自動車部品メーカーE社は、デジタル化に伴い、サプライチェーンの抜本的見直しを進める。あわせて、顧客によるオーダー方法が抜本的にデジタル化に転換する中、調達・物流システムにおけるデジタル化も同時進行する。また、産業機械メーカーF社でも、バリューチェーン全体においてデジタル化を推進し、3Dプリンティング活用による部品・材料などの内製化、安価な調達から地場からの調達への転換を進める。同社は、顧客向け配達におけるドローン活用や在庫管理などのデジタル化推進に取り組んでいる。

さらに、事業開発・企画の観点から、デジタル活用した新規事業開発や企画といったことも挙げられる。IT機器メーカーD社では、これまでの物売りからaaS(アズ・ア・サービス)型に見直すことで、モノの提供からサービスの提供へとビジネスモデルの転換を進める。

ほかにも、欧米の地域統括拠点において議論されている主な論点としては、「環境」や「イノベーション推進」などが挙げられた。例えば、重電メーカーC社では、本社が設定する二酸化炭素排出量やカーボンニュートラルなどの目標を受け、地域統括拠点での新規事業開拓にあたっては、その目標が反映された指標を設定する。環境対応は、デジタル化と同様に横断的なキーワードだ。各社では、専門部署の立ち上げや評価指標への導入などを開始している。そのほか、シンガポールでは地域統括拠点として、イノベーション推進、スタートアップや各機関などとの連携に取り組む事例も目立つ(ヘルスケアメーカーA社、消費財メーカーB社)。

自社の目的に沿った地域統括拠点の組織・機能の再検討が必要

このように、米中摩擦や新型コロナなどの影響を受け、アジア大洋州地域の社会、経済、市場が変化する中で、欧米企業の地域統括拠点の見直し、および今後の方向性について確認した(まとめを表3に掲載)。

表3:欧米企業の地域統括拠点における対応:3つの論点と方向性
主要項目 具体的な方策
組織・体制の見直し、最適化
  • 機能の統廃合、機能移転、集約型から分散化などによるコスト削減、最適配置
  • 拡大する市場への対応として地域統括拠点・組織のエリア見直し
  • 地域統括拠点へのさらなる権限移譲
  • ローカルマネジメント人材の登用
  • デジタル化の加速
サプライチェーン見直し
  • BCP、アジャイル対応
  • RHQのクラスター見直し
  • 地産地消の推進
  • サプライヤーの分散化
  • 機能軸の強化
デジタル化推進
  • デジタル人材の新規採用・配置
  • デジタル化対応のためのシステム投資・教育投資
  • 生産・サプライチェーンマネジメントにおけるデジタル化推進
  • ビジネスモデルの見直し(aaS化など)
その他
  • 環境、サステナビリティへの対応

出所:各種資料からジェトロ作成

次に本調査では、シンガポールを拠点とする日系企業3社にもインタビューを実施した。その結果、欧米企業が共通して取り組む方策の一部について、同様の取り組み方針との返答があった。例えば、機能再配置、業務移転、サプライチェーン見直し(BCP対応、サプライヤーの分散化)、デジタル化加速などだ。一方、日系企業では事業部門の権限が強い。そのため、欧米企業と同様の推進は容易でないとの声も聞かれた。また、日系企業では、米中摩擦や新型コロナ禍を契機とした地域統括拠点への権限移譲が必ずしも促進されているわけではない。

最後に、欧米企業と日系企業の特徴を比較した上で、今後の展望や示唆を示したい。

第1に、機能統制の強化推進と、各社に見合った地域統括機能の必要性の再検討が指摘される。インタビュー対象の日系企業の中には、事業コスト削減や業務高度化に向け、機能軸に関わる中央集権的な統制が進むケースも確認された。日系消費財メーカーの事例では、調達やサプライチェーンマネジメント(SCM)において、横串機能としてのSCM部門を立ち上げ、域内企業をリードする役割を与えたという。ただし、冒頭で示したように、多くの日系企業では、機能軸による全体最適化が十分に機能していないようだ。

第2に、BCP対応の仕組み・定着化、権限移譲の推進が求められる。新型コロナの感染拡大を受けたサプライチェーン寸断は、当初は中国で始まり、次いでASEANなど世界中で散見された。その対応に追われた経験から、初期のタイミングではBCP再考に取り組んだ日系企業も多い。しかし、企業によっては一過性に終わっているケースもあった。一方、サプライチェーンにおける地産地消や迅速かつ柔軟な対応については、日系企業においても調達リスク・コスト削減に向け、アジア大洋州地域での調達先の多元化や現地生産を進めている。シンガポールの地域統括拠点では、調達先の発掘などのサポートが求められることもある。こうした場合、現地人材の登用や地域統括拠点への権限移譲により、迅速な対応ができる体制や機能の構築が求められる。

第3に、日系企業では各社とも、地域統括拠点におけるデジタル化推進が着手段階にあることが確認された。日系企業におけるデジタル化推進の取り組みは、本社側が主導して実行していることが多い。アジア大洋州のような地域単位でも、商品・サービス販売にかかる電子商取引(EC)の活用、デジタル技術の導入など、部分的な取り組みは見られる。しかしその実施には、あらためて本社、地域統括拠点、グループ企業間での認識共有や地域側への権限移譲が必要になる。また、第1のポイントで挙げた横串機能としての機能統制と合わせた形で、デジタル化を加速させることは有効だ。それに向けたデジタル人材の採用、配置、育成などが求められる。

執筆者紹介
ジェトロ・シンガポール事務所次長
藤江 秀樹(ふじえ ひでき)
2003年、ジェトロ入構。インドネシア大学での語学研修(2009~2010年)、ジェトロ・ジャカルタ事務所(2010~2015年)、海外調査部アジア大洋州課(2015~2018年)を経て現職。現在、ASEAN地域のマクロ経済・市場・制度調査を担当。編著に「インドネシア経済の基礎知識」(ジェトロ、2014年)、「分業するアジア」(ジェトロ、2016年)がある。