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タイ国境に接するミヤワディ、物流・生産拠点としての可能性を探る(ミャンマー)

2020年3月16日

ヤンゴンから車で東に約10時間の場所に、カレン州の都市ミヤワディがある。ミヤワディはタイとの国境に接しており、同国の国境貿易で栄えている。また、東西経済回廊のルート上にあり、国境をまたぐタイ・ミャンマー第1友好橋に加え、2019年10月31日に貨物車両の相互乗り入れを可能とした第2友好橋の運用も開始された。今後の発展が注目されるミヤワディのポテンシャルについて、現地訪問を基に最新状況を伝える。

物流面でポテンシャルの高いミヤワディ

ミヤワディは、ヤンゴンから約420キロ離れており、車で約10時間かかる。ヤンゴンからカイン州東部エインドゥまでの道路と、コーカレイからミヤワディまでの道路は比較的整備されているが、エインドゥ~コーカレイ間の約70キロは赤土がむき出しの未舗装道路で、通過に約3時間かかる。この区間は現在、アジア開発銀行(ADB)の支援で中国の路橋建設(CRBC)が舗装工事を行っており(2021年完成予定)、国際協力機構(JICA)が橋の架け替え事業を行っている。こうした道路の整備が進めば、輸送時間も大幅に短縮できる。

図:ミヤワディの位置と、ヤンゴン~タイ・レムチャバン港のルート
ミャンマーのヤンゴンから、タイのレムチャバン港への陸上輸送ルート。国境都市ミヤワディはヤンゴンから約420キロメートル離れている。赤い部分のエインドゥ・コーカレイ間が赤土がむき出しの未舗装道路であり、通過に約3時間かかる。

出所:OpenStreetMapを基にジェトロ作成

タイから陸路での貨物輸送は、日系企業が近年注目している。今回、タイ~ミャンマー間の物流増加を見越して2017年にミヤワディに事務所を開設したミャンマー日本通運にインタビューを行った。同社は「ヤンゴンやティラワSEZ(経済特区)に拠点を有する日系企業から、陸路を活用した物流の相談が増えている」と述べた。

しかし、前述のとおり、道路の未整備区間の輸送が課題となっている。同社は2019年度(日本年度)に実際にトラックを走らせ、走行時間や振動などの実地調査を行った。同社の調べでは、「未舗装区間の通過に時間がかかることに加え、振動が問題になる」という。振動計を用いた実走調査では、舗装道路の振動は問題ないものの、未舗装区間は赤土がむき出しとなっており、縦揺れや横揺れともに激しい。一般輸送基準以上の振動が発生しており、「輸送できる貨物が限られるという課題がある」と話している。


赤土がむき出しの道路(ジェトロ撮影)

もう1つの課題として、片荷の問題がある。ミャンマーには国内産業が少なく、多くの製品を輸入に頼っているため、慢性的な貿易赤字を抱える。タイからの輸入も同様だ。タイからミャンマーに運ぶ貨物は多いものの、ヤンゴンやティラワSEZからタイへ持っていく貨物は少ない。そのため、タイから荷物を運んだ際の復路の貨物が少なく、効率が悪いため、物流コストが高くなってしまう。

片荷の課題を解決するには、ミャンマーの製造業が発展し、他国へ陸路で輸出する製品が増えることが必要となる。ミャンマー日本通運の担当者は現状の物流面での課題は認識した上で、「タイ国境を活用した陸路輸送は、日系企業からの問い合わせも増えている。今後の道路整備やミャンマーの産業の発達により、物流も改善していくと考えている」という。

ミャンマー政府もミヤワディの国境貿易にも注力しており、日本の支援による電子通関システムMACCS(Myanmar Automated Cargo Clearance System)の導入や、越境交通協定(CBTA)にかかるタイ~ミャンマー間のトラックの相互乗り入れも解禁された(2019年11月8日付ビジネス短信参照)。2019年10月31日には貨物車両の相互乗り入れを可能とした第2友好橋の運用も開始された。通関については、MACCSの導入により輸出入の申告や審査、関税納付、認可を含む一連の通関手続きを電子化し、商業省の発給する輸出入ライセンスとも連結しているため、スムーズな通関を行うことが可能だ。しかし、それにもかかわらず、一部の書類について原本の提出を税関から求められるケースがあり、運用面の課題も残る。

また、CBTAにかかるトラックの相互乗り入れについては、運輸当局に登録した車両はヤンゴン・ティラワ地区~ミヤワディ国境~タイ・メーソット国境~レムチャバン港の区間、30日を超えない範囲で互いに出入りが認められるようになった。2019年末時点ではトラック相互乗り入れのライセンスが付与されているミャンマー企業は9社だけのため、今後のライセンス付与の拡大が期待される。


タイ・ミャンマー第2友好橋(ジェトロ撮影)

製造拠点としてメリットを持つミヤワディ

ここまで物流面に焦点を当ててきたが、次にミヤワディの製造拠点としての可能性を紹介したい。ミヤワディには、「Myawaddy Economic Zone」(以下、ミヤワディ工業団地)という工業団地がある。総開発面積は約81ヘクタールあり、工業団地のほか、ホテルや住居、商業施設などの開発計画がある。

ミヤワディ工業団地の土地リース価格(50年間)は1平方メートル当たり32ドル(2019年11月時点)と、ヤンゴン近郊に比べて安価で、7年間の法人税免税という投資恩典を享受できる。この工業団地には2019年11月時点で15社の投資が認可されており、既に2社の工場が稼働している。認可企業の業種では大多数が縫製業だが、食品加工やプラスチック製造、物流企業などもある。ミャンマーでは委託加工形態の縫製業はCMP企業(Cutting Making and Packing)といい、原材料の輸入時の関税が免税されるといったメリットがある。


ミヤワディ工業団地の区画(同工業団地提供)

また、輸出型企業のメリットとしては、タイのインフラを活用できる点が大きい。現在、外国からミャンマーへの投資はヤンゴンに集中しているが、ヤンゴンには深海港がなく、海上輸送で輸出する際にタイやシンガポールの港で荷物を積み替える必要があり、日数がかかる。シンガポール経由で日本へ輸出すると、リードタイムは約1カ月だ。しかし、ミヤワディで製造した場合は陸路を活用してタイの港まで輸送できるため、輸送日数を短縮することが可能となる。電力についても、同工業団地ではミャンマーの送電網に加え、タイから電力を輸入しており、現地進出企業によると、ヤンゴンよりも停電は少ないという。

さらに、タイと比べて労働賃金の面でミヤワディにはメリットがある。タイ側の国境都市メーソットの最低賃金は2020年1月時点で315バーツ(約1,071円、1バーツ=約3.4円)だが、ミャンマーの最低賃金は4,800チャット(約384円、1チャット=約0.08円)で、タイの約3分の1の賃金水準だ。

ただ、安価な賃金はデメリットにもなる。ミヤワディからタイへ出稼ぎに行く労働者は多く、現地での人材確保が課題となる懸念がある。ミヤワディ商工会議所の会頭であり、現地で300人規模の製靴工場を営むThin Thin Myat氏は「タイに出稼ぎに行く労働者は多いものの、家族のいる自国で働きたいと望む者は多い。またタイの最低賃金上昇によりメーソットの工場を閉鎖する動きもあり、タイで職を失ったミャンマー人がミヤワディに戻ってきているため、人材確保に苦労していない」と語るが、今後、工場が増えた場合には郊外からの人材確保を視野に入れる必要があるだろう。また、ミヤワディには企業自体が少なく、会社で働くという意識を持った人材が少ないため、人材育成という部分では苦労することが予想される。


ミヤワディ工業団地の製靴工場(ジェトロ撮影)

今回は物流と製造拠点の両面からミヤワディの可能性を考察した。物流、工業団地とも、ミヤワディには課題は残るが、今後のミャンマーの発展に伴い、投資先として十分なポテンシャルを有しているといえよう。

執筆者紹介
ジェトロ・ヤンゴン事務所
松田 孝順(まつだ たかのぶ)
2011年、南都銀行入行。
2018年、ジェトロ大阪本部。
2019年4月から、ジェトロヤンゴン事務所勤務(出向)。

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