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所得納税方式を簡素化、デジタルサービスも付加価値税の対象に(チリ)
税制全面改正のポイント

2020年10月22日

チリで2020年2月24日、法21210号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが官報公示された。これにより、所得税法や付加価値税法など、税制が全面的に改正されたことになる。法人所得税は従前、納税方式や源泉徴収税の課税方法が複雑だった。これが今回、簡素化された。付加価値税は、国外からチリ国内に供給されるデジタルサービスについて課税対象となったことが大きな変更点だ。

納税方式が簡素化された法人所得税

チリでは、法人所得税に相当する税制を第1カテゴリー税と称する。2017年には、第1カテゴリー税の中に2つの納税方式が設定された。自然人だけで構成される個人起業家、個人有限責任会社(E.I.R.L.)、一部の簡易株式会社(SpA)などが対象となるインテグラド方式と、株式会社(S.A.)および出資者に法人が含まれる企業が対象となるセミ・インテグラド方式だ。また、インテグラド方式の条件を満たしている中小企業の場合、簡略化方式での納税方法も選択できた。

しかし、今回の税制改正により、前述の納税方式は撤廃された。新たに設定されたのが、14-A方式、SMEs(中小企業)方式、非課税方式の3つだ。2019年末までインテグラド方式およびセミ・インテグラド方式を適用していた企業で、SMEs方式の要件を満たしていない限り、基本的に全て14-A方式が適用される。税率は27%。適用条件(表参照)を全て満たしている企業はSMEs方式を選択することができる。税率は25%。また、中小企業の出資者または株主の全てが総合補完税または源泉徴収税の納税者である場合は非課税方式を選択でき、法人所得税が免税される。

表:新税制の法人所得税納税方式
項目 14-A方式 SMEs(中小企業)方式 非課税方式
法人所得税率 27% 25% 0%
対象 2019年末までインテグラド方式およびセミ・インテグラド方式を適用していて、SMEs方式の要件を満たしていない企業
  • 資本金8万5,000 UF以下
  • 納税義務者の事業の平均総所得(年間)が7万5,000UF以下。(ただし、月の所得が8万5,000UFを超過することが2度以上ある場合には適用外)
  • 受動収入(利息、配当など)が総所得の35%以下。
    ※事業年度末において総所得が1,000UF未満および残りの要求事項を満たしている14-A方式適用企業は国税局(SII)により本方式が適用される。
出資者または株主の全てが企業に課される税金の納税義務者である企業

注:1UFは約2万8,700ペソ(約3,730円、1ペソ=約0.13円)。UF:消費者物価指数の変動率に応じて調整されるインデックスでUnidad de Fomentoの略。
出所:ジェトロ調査レポート「チリ2020年税制改正」から作成

利益や配当の海外送金時の源泉徴収税の課税方法も変更された。旧制度では、インテグラド方式かセミ・インテグラド方式かによって課税対象や課税率が異なっていた。しかし、新制度では納税方式にかかわらず35%の源泉徴収税が賦課されることになった。なお、源泉徴収税から既に支払われている法人所得税は、控除することができる。この際、14-A方式では法人所得税の65%、SMEs方式では同100%が控除される(非課税方式の場合は法人所得税の課税対象となっていないため、控除制度はない)。14-A方式が適用されていたとしても、日本などチリと租税条約を締結している国に居住する株主は法人所得税の100%を税額控除として利用できる。

今回の税制改正で、大企業にとっては納税方式が1つになり、中小企業にとっても選択すべき納税方式が明確に区分された。また、源泉徴収税の課税方法も簡素化された。全般に、わかりやすい納税制度になったと言える。

国外から供給されるサービスも付加価値税の課税対象に

付加価値税(IVA)に関する主な改正点は、チリ国外から供給されて国内で使用や消費されるサービスが課税対象に加えられ、IVA19%が課税されることだ。

具体的には、以下の4種類のサービスが課税対象になった。

  1. サービスの性質にかかわらず、チリ国内に供給されるサービスに関連する仲介、または結果としてチリに輸入される国内および国外で行われる売り上げの仲介。
  2. ダウンロードやストリーミングされるビデオ、音楽、ゲーム、またはこれらの目的を達成するためのテキスト、雑誌、新聞、本を含むその他のテクノロジーなどのデジタルエンターテインメントコンテンツの供給、発信。
  3. コンピュータソフトウエア、ストレージ、プラットホームなどの提供。
  4. 配信、実体化または実施媒体にかかわらず、広告に該当するもの。

前述のサービスはいずれもほとんどがデジタルサービスに当たる。このため、供給場所の特定には複雑さが伴う。その結果、改正法では、国内で当該サービスが消費される推定条件として、サービス利用に当たって使用されるデバイスのIPアドレスや支払い時に利用されたクレジットカードの発行元、請求先ユーザーの居住地、携帯電話のSIMカードのコードがチリ国内であることを定めている。

IVAの納税については、通常、サービス提供者がその義務を負うことになる。しかし、サービス供給者がチリ居住者ではなく、サービス受益者がチリ居住者でIVAの納税義務者に該当する場合、サービス受益者に付加価値税の納付義務がある。サービス受益者が個人などIVAの納税義務者ではなく、サービス受益者がクレジットカードなど電子的手段により支払いを行っているときは、国税局(SII)の判断によりクレジットカード事業者などが源泉徴収者として源泉徴収を行い、財務省に申告の上、徴収金額を支払う場合もある。

今回の改正に先立って、2020年1月には動画配信サービスのネットフリックスやアマゾン・プライム、音楽配信サービスのスポティファイなどのチリ国外から国内にサービスを提供する主要なデジタル事業者が料金プランの値上げを発表した。改正付加価値税法が施行された6月1日以降、各社新料金プランを適用している。

その他の改正ポイントについては、調査レポート「チリ2020年税制改正」を参照。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部米州課中南米班
佐藤 輝美(さとう てるみ)
2012年、ジェトロ入構。進出企業支援・知的財産部知的財産課、ジェトロ・サンティアゴ事務所海外実習などを経て現職。

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