日系企業に聞く、製造業の自動化・高度化支援(インドネシア)

2020年2月21日

人件費の高騰などで製造コストが上昇しているインドネシアでは、日系やローカル企業を問わず、今後は製造業の自動化・省人化へのニーズが高まってくると考えられる。自動化・省人化は単に人による労働をロボットに置き換えるというだけではなく、モノのインターネット(IoT)を活用して生産効率の最適化を行うような取り組みも含まれる。インドネシアで、前述のようなソリューションを長年にわたって日系企業やインドネシア企業、さらには多国籍企業に提供し、日系企業が危惧する導入コストの問題にも配慮しているPT OMRON Electronicsのドン・テン社長に、事業内容やビジネス上のボトルネックなどについて聞いた(2月5日)。

質問:
インドネシアにおける貴社の活動は。
答え:
ファクトリーオートメーション(FA:製造業の自動化支援)の製造・販売を行っている。
質問:
自動化支援事業の顧客は。
答え:
売り上げは日系企業が6割、残りがインドネシア企業や多国籍企業。産業別では自動車、日用品関係の顧客が多い。インドネシア企業への売り上げを増やすことを目標にしている。一方、地場のシステムインテグレーターは根本的な技術レベルと経験値の差から、品質面や納期面での課題は大きいが、投資対効果の観点から彼らにソリューションを求める顧客も多い。
質問:
ビジネス上のボトルネックと対処方針は。
答え:
当社として本来であれば「ソリューションビジネス」として、顧客の自動化に関する課題にパッケージとして解決策を与えられるようになりたいが、当社には機械設計や電気設計の機能がない。そのため、インドネシアのシステムインテグレーター(ロボット、コンベヤーなどの専用機をシステムで連携させ、製造ラインを組み立てることができるエンジニア)の育成や、専用機メーカーなどとの関係構築を進めている。顧客からも、地場のシステムインテグレーターや専用機メーカーには品質面での不安があり、信頼できる企業になかなか巡り合えていないという課題を聞いている。当社がインドネシア企業との関係構築を広げ、ソリューションを提供することで、当社としてユニークな価値を創造していきたい。
一方、顧客自身も、IoTの活用や自動化について具体的なイメージを持っていないケースが散見される。まずは自動化設備やIoT機器を導入するに当たり、現状の課題や目的をはっきりさせ、現場と経営陣が意識を共有することが必要。導入にかかる費用対効果をローカルスタッフと日本人がともに具体的に考える必要がある。当社は「省人化」「生産性向上」「生産性可視化」のキーワードで顧客の課題を丁寧に洗い出し、パッケージソリューションを展開している。
質問:
インドネシア政府は「メーキングインドネシア4.0」(2018年4月12日付ビジネス短信参照)を定め、自国の製造業の高度化を目指している。マレーシアでは、インダストリー4.0導入を考える地場の中小製造業への支援として、生産現場の準備状況を診断する「Readiness Assessment:RA」を政府が費用を全額負担して実施し、さらに、IoT機器や自動化設備の導入に政府から補助金が出る支援策がある(2020年1月28日付ビジネス短信参照)。貴社としてインドネシア政府に期待することは何か。
答え:
第一に、企業の税務上の負担を軽くし、ビジネスコストを下げてほしい。企業に余裕ができると、IoT分野などへの投資が促進されると考える。また、エンジニア人材が不足しているので、この分野での(インドネシアへの)外国人労働者を柔軟に受け入れてほしい。当社としても大学と連携するなどして、インドネシアでのエンジニア人材の育成を支援している。また、マレーシアのように何かしらの具体的なインセンティブがほしい。

ドン社長(中央)、ムスティカ・ウタマニングラム・マーケティングマネージャー(左)、
保坂将太・日本ヘルプデスク(ジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
上野 渉(うえの わたる)
2012年、ジェトロ入構。総務課(2012年~2014年)、ジェトロ・ムンバイ事務所(2014年~2015年)、企画部企画課海外地域戦略班(ASEAN)(2015年~2019年)を経て現職。ASEANへの各種政策提言活動、インドネシアにおける日系中小企業支援を行う。