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新型コロナウイルス感染拡大で、物流も深刻な打撃(南アフリカ共和国)
現地日系物流企業に聞く

2020年9月9日

南アフリカ共和国では、新型コロナウイルス感染者数の累計が9月9日時点で64万人を超えた。世界8位に当たる。一方で、感染拡大防止を目的として3月末から実施されたナショナル・ロックダウンや、南アを含むアフリカ域内各国の国境閉鎖による経済への影響は甚大だ。また、域内の物流のハブである南アの物流業界への影響は今もなお続く。

ジェトロは、2018年に阪急阪神エクスプレスが出資した南アのフォワーダー・イントラスピードのセールスマネジャーを務め、アフリカ域内の物流事情に精通する森河淳氏に、新型コロナの物流への影響についてインタビューした(2020年8月21日)。


森河氏(本人提供)
質問:
新型コロナの感染拡大、南アでのロックダウンによる物流への影響をどうみているか。
答え:
端的に述べると、国内で感染が広がると、物流費用のコスト増となり結果的に輸出入者の負担額が増える。ロジスティックスは、リモートワークで対応するには限界がある。感染の恐れがあっても、荷物の管理などのために出勤せざるを得ない。物流に関わる通関やトラック、倉庫のオペレーションに携わる人たちも同様で、こうした人たちの間で感染が広がるとオペレーションの遅滞が生じ、コストになって跳ね返ってくる。
3月末にロックダウンが開始された後、4~5月にケープタウン港を擁する西ケープ州で急速に感染が拡大し、物流への打撃は特に大きかった。南アに海外から入ってくる船は、先に国内最大の取扱量を有するダーバン港に入港するのが一般的だ。その後、西回りでポート・エリザベス、ケープタウンに寄港し、さらに西アフリカやヨーロッパ方面に向かう。国内で最大の経済規模を持つ内陸のハウテン州(ヨハネスブルクを含む)から船で荷物を輸出する際は、ケープタウン港までトラック輸送し同港で積み荷するのが、リードタイムを圧縮する上でメリットがある。ダーバン港の方が距離は近いが、ダーバンからケープタウンまで貨物船が進むのに1週間近くかかってしまうためだ。しかし、ケープタウン港において、港湾オペレーター間で感染が拡大した。このことにより、クレーンなど特殊技能を持つ荷役関係者も作業できなくなった。入港できない沖待ちの船で混雑が生じる結果となった。船会社・物流業者は荷主に対して「船混み割増料金(congestion surcharge)」を請求するしかなく、荷主に負担を強いる結果となった。当時は、感染がそれほど拡大していなかったダーバン港から、ケープタウン港のオペレーション緊急支援のために大勢で駆け付け、対処したと聞いている。それ以降も各港湾や陸路国境で税関職員や荷役関係者に感染が出るたび、数日間にわたって港湾が閉鎖された。このように、物流が遅滞・停止するといった事態が散発的に起こっている。
3月末にナショナル・ロックダウンが開始され、最上位の警戒レベル5だった当時〔5月1日にレベル4に緩和、8月18日からレベル2(2020年8月17日付ビジネス短信参照)〕、通関業者は「エッセンシャル・ワーカー」として認められていなかった。このため、操業継続のために担当省庁と調整する必要があったこともオペレーションに少なからず影響した。
質問:
航空貨物への影響については。
答え:
南アでは、アフリカ諸国としては例外的に、オンラインで全ての通関申請が行える。このため、ヨハネスブルクのORタンボ国際空港(国内最大の貨物取扱量)でも、通関自体に大きな混乱は生じなかった。
しかし、一時、貨物ターミナルで作業する労働者の間で感染が広がった。このため、通関後の荷物を処理できず、貨物が大量にターミナル内に滞留する事態となった。さらに、空港貨物ターミナルでは全ての輸出入貨物に「新型コロナ割増料金(Covid-19 Surcharge)」が新たに課されるなど、輸出入者のコスト増となる制度導入も始まった。現場の作業者に感染が広がると遅滞が生じる。
南アの場合、そうした作業員には感染対策が不十分な乗り合いタクシーなどで出勤する低所得者層が多い。すなわち、感染リスクにさらされやすい構造的な問題があるわけだ。現場のオペレーターが動かない状況が起きると、サプライチェーン機能しなくなる。物流のみならず経済全体に影響が生じる。南アでは現在も、国際商業便の再開が認められていない。このため、従来利用してきた旅客便のエアフレートのスペースを活用できなくなる。航空会社間の競争も働かない。このため、コロナ以前のようなリードタイムと料金では利用できなくなっている。
質問:
南ア周辺国への物流の影響については。
答え:
ロックダウンを行っている周辺国でも物の往来は認められている。しかし、南ア同様に、トラック運転手や税関職員の間で感染が発生するたびに数日間、国境を閉めることがある。このため、以前より数日長く配送時間がかかるなど遅れが生じている。南アと内陸国のジンバブエを結ぶ大動脈にあるベイトブリッジ国境では、多数のドライバー・荷物が国境周辺に滞留・渋滞するといった事態が起きた。ジンバブエ側が午後10時以降の夜間走行を禁止したことためだ。国境でのトラック待機料を回避するために、多くの荷主はコストがかかっても代替ルート・国境で運送することを希望する。ジンバブエよりさらに内陸国のザンビアに輸送したい場合、日本政府の支援により整備されたボツワナのカズングラ橋を経由して、ジンバブエを通らずにザンビアに陸送できる。こうした支援は、大変ありがたく感じる。アフリカ域内の輸送ではこのような代替ルートが複数ある。もっとも、通常のルートより長距離を走行する必要があったり、他のトラックも代替ルートに集中したりする。その結果、国境付近が渋滞し、輸出入者にとって追加のコストとなってしまう。
これまでアフリカの最終目的地まで一気通貫でトラック運転手が輸送できたところ、自国内を通過する区間では自国民のドライバーまたは自国のトラック業者の使用を求める動きが出てきている。アフリカ各国が新型コロナの影響で経済的に疲弊しているのがその原因かもしれない。国民の不満を抑えるため自国主義が強まってしまうのは、致し方ないことかもしれない。しかし、以前のようなリードタイムやコストで輸送することはできない結果も招く。
質問:
南アをはじめ、感染拡大が収束しはじめた国もある。今後の域内の物流状況をどう展望するか。
答え:
南アは域内の物流のハブのため、在庫を南ア国内に置き、アフリカ中に輸出する形態を取っている企業が多い。在南ア外国企業には、南アだけをマーケットとしている企業が少ない。むしろ、他国を含めて面で地域を見ている。このため、南アのみならず域内各国で、国際商業便の再開や経済活動の正常化が今後進めば、おのずと南アで取り扱う物流量も増えていくだろう。当社の取扱量は、日系と非日系とで同じ程度だ。現在の物量はコロナ以前の7~8割まで戻っている。
世界全体での物流やサプライチェーンの劇的な変化により、これまでの競争環境や価格体制が大きく変わった。世界全体、とりわけ南アや物流の経由各地での感染収束が物流量の回復を見通す上で重要だ。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
髙橋 史(たかはし ふみと)
2008年、ジェトロ入構後、インフラビジネスの海外展開支援に従事。2012年に実務研修生としてジェトロ・ヤンゴン事務所に赴任し、主にミャンマー・ティラワ経済特別区の開発・入居支援を担当。2015年12月より現職。南アフリカ、モザンビークをはじめとする南部アフリカのビジネス環境全般の調査・情報提供および日系企業の進出支援に従事。

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