2019年の貿易、輸出入ともに増加、赤字額縮小(フランス)

2020年7月30日

フランスの2019年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比2.9%増の4,959億5,900万ユーロ、輸入は同2.0%増の5,699億9,200万ユーロだった。輸出入双方とも拡大したことになる。貿易収支は740億3,300万ユーロの赤字となったが、その額は前年から約30億ユーロ縮小した。最大の赤字品目である鉱物性燃料の赤字額が前年から15億ユーロ縮小した。これは、原油価格の下落が主因だ。このほか、黒字品目である航空機・宇宙飛行体、医薬品の黒字幅が拡大したことも寄与した。

貿易赤字が減少、航空機輸出が好調

輸出を品目別に見ると(表1参照)、最大のシェアを占めるのが原子炉・ボイラー・機械類だ(構成比12.1%)。前年比4.8%増と好調だった。続いて、航空機・宇宙飛行体(9.6%)も8.2%増だった。前年は縮小したが、プラスの伸びに転じたことになる。エアバス航空機が320億1,500万ユーロ(引き渡し機数358機)と過去最高を更新した。自動車(9.5%)は1.5%減と縮小したが、医薬品(6.4%)が米国向けを中心に 10.7%増となった。消費財の輸出も前年に続き堅調だった。精油・調整香料・化粧品類(3.6%)が7.7%増、飲料・アルコール・食酢(3.5%)が4.9%増、革製品・旅行用具・ハンドバッグ(1.7%)が16.4%増だった。

国・地域別では(表2参照)、輸出全体の6割弱を占めるEUが前年比1.6%増と前年から減速した。最大輸出相手国のドイツ(構成比14.1%)と主要相手国のスペイン(7.5%)が、それぞれ1.3減、1.1%減と縮小した。一方、イタリア(7.6%)、英国(6.8%)の伸びがそれぞれ3.6%増、3.0%増と堅調で、ポルトガル(1.4%)は航空機を軸に34.4%増と急増した。英国向けは、2019年第1四半期(1~3月)に輸出が急増した。2019年3月末の合意なきEU離脱に備えて英国側で在庫を積み増す動きが強まった結果とみられる。同年4月に合意なき離脱の動きは収束した。しかし、英国向け輸出額は、年を通して高い水準で推移。前年に続き、最大貿易黒字相手国となった。

EU域外では米国(8.5%)、スイス(3.6%)、日本(1.6%)の伸びが顕著だった。米国は航空機分野の輸出が牽引し9.7%増となった。スイスは大型客船2隻の引き渡しを受け、11.1%増だった。 また、カナダ (0.8%)も11.4%増と2年連続で好調な伸びを記録した。EU・カナダ包括的貿易投資協定(CETA)の2017年9月の暫定適用開始から3年目に入り、フランス産ワインや輸送機器、医薬品などの輸出機会が拡大した。

鉱物性燃料の輸入が減少、自動車輸入は増加

輸入を品目別に見ると(表1参照)、国内需要の堅調な伸びを背景に、主要輸入品目全般に増加傾向を示した。例えば、原子炉・ボイラー・機械類(構成比13.1%)が前年比5.2%増、自動車(11.5%)が4.6%増だった。自動車の貿易収支の赤字額は183億7,200万ユーロ。前年から約36億ユーロ拡大し、鉱物性燃料に次ぐ赤字品目になった。国内での生産台数が減少する一方で需要が堅調だったことが輸入増につながったとみられる。フランス自動車工業会によると、乗用車の新規登録台数は221万台。前年比1.9%増と堅調な伸びが続いた。鉱物性燃料(10.3%)は前年から5.6%減少した。原油輸入量は5,047万トンで前年から4.2%減となった。フランス税関は原油価格の低下に加え、国内の石油精製事業の縮小で原油需要が減ったと分析した。そのほか、航空機・宇宙飛行体(3.2%)が4.4%増、医薬品(3.9%)が4.9%増と増大した。一方で、鉄鋼(1.9%)は9.3%減、プラスチック(3.8%)は1.7%減、アルミニウム(1.1%)は2.6%減、ゴム(1.1%)は2.3%減と、それぞれ縮小した。

表1:フランスの品目別輸出入(単位:100万ユーロ,%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2018年 2019年 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
原子炉・ボイラー・機械類 57,391 60,154 12.1 4.8 71,033 74,700 13.1 5.2
航空機・宇宙飛行体 44,167 47,775 9.6 8.2 17,637 18,405 3.2 4.4
自動車(鉄道用または軌道用除く) 47,888 47,153 9.5 △ 1.5 62,672 65,525 11.5 4.6
電気機器 38,124 38,838 7.8 1.9 49,483 50,396 8.8 1.8
医薬品 28,684 31,759 6.4 10.7 21,365 22,417 3.9 4.9
プラスチック 19,107 18,666 3.8 △ 2.3 21,993 21,624 3.8 △ 1.7
精油・調整香料・化粧品類 16,686 17,972 3.6 7.7 5,373 5,703 1.0 6.1
飲料・アルコール・食酢 16,455 17,264 3.5 4.9 4,095 4,141 0.7 1.1
光学機器・写真用機器・映画用機器 14,344 15,765 3.2 9.9 16,604 18,444 3.2 11.1
鉱物性燃料 15,839 13,828 2.8 △ 12.7 62,456 58,943 10.3 △ 5.6
鉄鋼 13,860 12,437 2.5 △ 10.3 11,798 10,697 1.9 △ 9.3
各種化学工業製品 11,147 11,513 2.3 3.3 8,004 7,994 1.4 △ 0.1
有機化学品 10,083 10,000 2.0 △ 0.8 13,796 13,750 2.4 △ 0.3
真珠・貴石・貴金属 7,582 8,609 1.7 13.5 7,078 7,680 1.3 8.5
革製品・旅行用具・ハンドバッグ 7,349 8,553 1.7 16.4 4,409 4,836 0.8 9.7
鉄鋼製品 7,219 7,512 1.5 4.1 10,339 10,434 1.8 0.9
穀物 6,170 6,614 1.3 7.2 817 898 0.2 9.8
酪農品・鳥卵・天然蜂蜜 6,146 6,320 1.3 2.8 4,060 4,007 0.7 △ 1.3
衣類・衣類付属品(メリヤス編み除く) 5,697 6,090 1.2 6.9 10,671 11,029 1.9 3.3
ゴム 5,706 5,683 1.1 △ 0.4 6,467 6,318 1.1 △ 2.3
紙および板紙・製紙用パルプ 5,810 5,576 1.1 △ 4.0 7,436 7,620 1.3 2.5
アルミニウム 4,859 4,685 0.9 △ 3.6 6,369 6,204 1.1 △ 2.6
衣類・衣類付属品(メリヤス編みに限る) 4,455 4,627 0.9 3.9 9,952 10,332 1.8 3.8
合計(その他を含む) 482,040 495,959 100.0 2.9 559,064 569,992 100.0 2.0

注:EU域外貿易は通関ベース,EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
出所:フランス税関

国・地域別にみると(表2参照)、全体の6割弱を占めるEUが全体として、前年比で横ばいとなった。ただし、最大輸入相手国のドイツ(構成比14.9%)が前年比2.1%減、イタリアに次ぐ欧州第3位の輸入相手国ベルギー(6.7%)も3.2%減と落ち込んだ。主に天然ガスの輸入縮小が響いた。英国(3.7%)は2.5%増と堅調だった。EU域外では、アジア大洋州(構成比17.0%)が5.1%増となった。中国(香港含む)(9.3%)が4.3%増、ASEAN(3.3%)が8.7%増と前年に比べ伸び幅が拡大した。とりわけ、シンガポール (0.6%)はターボリアクターが牽引し、前年から46.9%増えた。米国(6.7%)は8.4%増と好調だった。他方、エネルギー価格の低下を受け、鉱物性燃料を主力とするロシア(1.5%)、中東(2.1%)からの輸入は、それぞれ13.5%減、4.8%減と縮小した。

表2:フランスの主要国・地域別輸出入(再輸出を含む総額ベース)(単位:100万ユーロ,%)(△はマイナス値)
地域・国名 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2018年 2019年 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 286,199 290,809 58.6 1.6 326,257 328,267 57.6 0.6
階層レベル2の項目ユーロ圏 221,641 224,342 45.2 1.2 267,810 268,016 47.0 0.1
階層レベル3の項目ドイツ 70,671 69,787 14.1 △ 1.3 86,692 84,853 14.9 △ 2.1
階層レベル3の項目イタリア 36,229 37,532 7.6 3.6 42,855 43,308 7.6 1.1
階層レベル3の項目スペイン 37,616 37,194 7.5 △ 1.1 36,391 36,996 6.5 1.7
階層レベル3の項目ベルギー 34,208 34,229 6.9 0.1 39,345 38,095 6.7 △ 3.2
階層レベル3の項目オランダ 17,699 17,537 3.5 △ 0.9 25,209 25,280 4.4 0.3
階層レベル2の項目非ユーロ圏 64,558 66,468 13.4 3.0 58,447 60,252 10.6 3.1
階層レベル3の項目英国 32,606 33,582 6.8 3.0 20,605 21,115 3.7 2.5
階層レベル3の項目ポーランド 9,919 10,199 2.1 2.8 10,876 11,752 2.1 8.1
階層レベル3の項目チェコ 4,847 4,714 1.0 △ 2.7 7,603 7,966 1.4 4.8
階層レベル3の項目ルーマニア 4,190 4,243 0.9 1.3 4,288 4,261 0.7 △ 0.6
階層レベル3の項目ハンガリー 3,519 3,722 0.8 5.8 4,317 4,420 0.8 2.4
スイス 15,994 17,774 3.6 11.1 14,723 14,515 2.5 △ 1.4
ロシア 5,317 5,608 1.1 5.5 10,004 8,652 1.5 △ 13.5
トルコ 5,988 5,944 1.2 △ 0.7 8,015 8,733 1.5 9.0
アジア大洋州 65,074 66,444 13.4 2.1 92,157 96,876 17.0 5.1
階層レベル2の項目中国(香港含む) 27,057 26,722 5.4 △ 1.2 50,998 53,195 9.3 4.3
階層レベル2の項目ASEAN 16,263 16,507 3.3 1.5 17,317 18,824 3.3 8.7
階層レベル3の項目シンガポール 8,225 8,682 1.8 5.6 2,347 3,447 0.6 46.9
階層レベル3の項目タイ 1,872 1,626 0.3 △ 13.1 2,839 2,976 0.5 4.8
階層レベル3の項目ベトナム 1,224 1,618 0.3 32.2 5,434 5,626 1.0 3.5
階層レベル3の項目マレーシア 1,946 1,501 0.3 △ 22.9 2,369 2,331 0.4 △ 1.6
階層レベル2の項目日本 6,616 7,719 1.6 16.7 10,045 10,285 1.8 2.4
階層レベル2の項目インド 5,529 5,367 1.1 △ 2.9 6,008 6,239 1.1 3.8
階層レベル2の項目韓国 4,334 5,194 1.0 19.9 3,792 4,069 0.7 7.3
階層レベル2の項目オーストラリア 2,632 2,655 0.5 0.8 1,102 1,123 0.2 1.8
北米 44,990 49,487 10.0 10.0 40,455 43,509 7.6 7.5
階層レベル2の項目米国 38,347 42,068 8.5 9.7 35,207 38,178 6.7 8.4
階層レベル2の項目カナダ 3,367 3,751 0.8 11.4 2,929 3,042 0.5 3.9
アフリカ 24,784 25,885 5.2 4.4 26,394 26,069 4.6 △ 1.2
階層レベル2の項目アルジェリア 5,271 4,924 1.0 △ 6.6 4,165 4,203 0.7 0.9
階層レベル2の項目モロッコ 4,390 4,768 1.0 8.6 5,309 5,583 1.0 5.2
階層レベル2の項目チュニジア 3,309 3,343 0.7 1.0 4,448 4,499 0.8 1.2
階層レベル2の項目ナイジェリア 625 587 0.1 △ 6.2 3,746 3,890 0.7 3.8
中東 14,548 14,759 3.0 1.4 12,323 11,730 2.1 △ 4.8
階層レベル2の項目湾岸協力会議(GCC)諸国 10,827 11,473 2.3 6.0 8,984 9,390 1.6 4.5
中南米 9,195 9,261 1.9 0.7 7,221 7,056 1.2 △ 2.3
階層レベル2の項目ブラジル 4,515 4,141 0.8 △ 8.3 3,016 3,053 0.5 1.2
合計(その他含む) 482,040 495,959 100.0 2.9 559,064 569,992 100.0 2.0

注1:アジア大洋州は、ASEAN+6(ASEAN、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に台湾を加えた合計値。
湾岸協力会議は、UAE、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6ヵ国の合計値。
北米は、米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。
注2:軍需品は除く。
注3:EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
出所:フランス税関

対日貿易は輸出、輸入の双方向で拡大

フランスの2019年の対日貿易は、輸出が前年比16.7%増の約77億1,900万ユーロ、輸入が2.4%増の102億8,500万ユーロとなった(表3参照)。輸出の伸びが輸入の伸びを大きく上回り、対日貿易赤字は25億6,500万ユーロと、前年から約8億6,300万ユーロ縮小した。フランスの貿易全体に占める日本の比重は、輸出は1.6%と前年から0.2ポイント拡大したが、輸入は1.8%と変わらなかった。

表3:フランスの対日主要品目別輸出入(通関ベース)(単位:100万ユーロ,%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2018年 2019年 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
航空機および宇宙飛行体 592 1753 22.7 195.8 25 31 0.3 22.1
医薬品 943 811 10.5 △ 13.9 201 218 2.1 8.3
飲料・アルコール・食酢 653 718 9.3 9.9 33 37 0.4 11.7
原子炉・ボイラー・機械類 567 498 6.4 △ 12.2 2,763 2,727 26.5 △ 1.3
電気機器 350 370 4.8 5.7 1,199 1,105 10.7 △ 7.8
革製品・旅行用具・ハンドバッグ 288 345 4.5 19.8 3 3 0.0 6.1
自動車(鉄道用または軌道用除く) 350 334 4.3 △ 4.6 2,774 2,904 28.2 4.7
精油・調整香料・化粧品類 280 284 3.7 1.5 66 75 0.7 14.7
光学機器・写真用機器・映画用機器 275 269 3.5 △ 2.2 648 652 6.3 0.6
有機化学品 192 180 2.3 △ 6.1 234 256 2.5 9.3
各種化学工業品 133 178 2.3 33.9 265 344 3.3 29.6
衣類・衣類付属品(メリヤス編み除く) 167 172 2.2 3.1 27 30 0.3 10.0
プラスチック 160 145 1.9 △ 9.5 196 199 1.9 1.5
真珠・貴石・貴金属 120 120 1.6 0.6 14 14 0.1 6.0
無機化学品 146 91 1.2 △ 38.0 54 55 0.5 1.4
合計(その他含む) 6,616 7,719 100.0 16.7 10,045 10,285 100.0 2.4

出所:フランス税関

前年急増した航空機・宇宙飛行体(構成比22.7%)が、前年に対してさらに3倍に拡大。医薬品を抜いて最大輸出品目となった。医薬品(10.5%)は13.9%減、原子炉・ボイラー・機械類(6.4%)は12.2%減と、前年から引き続き縮小した。一方で、対日輸出額が3番目に大きい飲料・アルコール・食酢(9.3%)は、9.9%増と好調だった。

日本からの輸入は、自動車(構成比28.2%)、原子炉・ボイラー・機械類(26.5%)、電気機器(10.7%)、光学機器・写真用機器・映画用機器(6.3%)、各種化学工業品(3.3%)の上位5品目が全体の75%を占める。原子炉・ボイラー・機械類と電気機器はそれぞれ1.3%減、7.8%減と縮小した。しかし、最大輸入品目の自動車が4.7%増となった。各種化学工業品は29.6%増と大きな伸びを示した。

輸入品の比重としてはまだ小さいものの、食品の輸入も牛肉や魚介類、日本茶、日本酒などを中心に増加した。日本食の普及に伴う需要拡大とともに、2019年2月に発効した日EU経済連携協定(EPA)による関税撤廃も一部の輸入を後押ししたものとみられる。牛肉 (生鮮・冷蔵)は26.1%増、魚介類は魚肉を中心に65.8%増の大幅な伸びになった。そのほか、卑金属製の手工具が2.1倍、陶磁製品53.9%増、衣類(ニット製品)53.2%増、鉄鋼26.0%増、鉄鋼製品15.2%増など 、関税撤廃の対象となった製品を含む品目で伸びが顕著だった。

執筆者紹介
ジェトロ・パリ事務所
山﨑 あき(やまさき あき)
2000年よりジェトロ・パリ事務所勤務。
フランスの政治・経済・産業動向に関する調査を担当。