環境省がリバースロジスティックスに関するリサイクル目標を設定(ブラジル)

2020年1月15日

環境省は10月31日、ブラジル電気電子産業協会(Abinee)、ブラジル情報・技術製品・サービス流通業者協会(ABRADISTI)、ブラジル情報技術企業連盟(ASSESPRO NACIONAL)の3業界団体と共に、電気・電化製品、同部品のリバースロジスティックスに関する各当事者の役割や運用ルール、リサイクル目標を定める協定を締結した。

ブラジルでは、2010年8月に国内で初めてとなる廃棄物対策法(法令12.305号/2010)が成立し、家庭用の使用済み電気・電化製品を消費者から製造業者へと引き渡す制度(リバースロジスティクス)が生まれた。ところが、同制度は再資源化の基準、家電廃棄物の回収、運搬およびリサイクルに係る費用負担の在り方を明確に規定していなかった。そのため、この度の協定で関係者の役割を下記の通り定め、リバースロジスティクスの運用を徹底する。

(a)消費者:電子・電化製品回収ポイントまで持ち込む
(b)製造者、輸入者:商品をリサイクルし、最終処分する
(c)商品取り扱い業者:消費者から廃棄物を受け取る

同協定に署名した業界団体の加盟企業には、段階的なリサイクル目標が課せられる。2021年の目標は、前年(2020年)に販売されたもののうち、1%をリサイクルするというもの。以降、2022年は3%、2023年は6%、2024年は12%となり、2025年には17%まで引き上げられる。

関心高まるリサイクル施設・技術へのビジネス機会

ブラジルでは、土中への直接投棄が主流となっており、都市部から離れた郊外の投棄所(埋立地)へは物流コストがかかる。しかし、市近郊では新たな投棄所を設置する土地が不足している。ジェトロがブラジルのリサイクル分野に詳しい弁護士事務所、ラッシュ・アジボガードス(Rusch Advogados)で環境法を専門にしている、チアゴ・トレンチネル(Tiago Trentinel)弁護士にインタビュー(11月6日)したところ、現在、ブラジルでは電気・電化製品のリサイクル施設やリサイクル技術が不足しており、リサイクル事業者の大部分は南東部と南部に限定されているという。また、ブラジルは埋立地に適した場所が不足しており、一般廃棄物用の焼却施設など、投棄所の代わりとなる施設が必要となるため、同分野の投資機会が今後、拡大すると述べている。

Abree(ブラジル電子・電化製品のリサイクル協会)によれば、環境法・労働安全法を完全に順守しているリサイクル施設は全国で9つ、そのうち、エアコン・冷蔵庫が処理可能な施設は2つ。ブラウン管式製品を処理することができるのは、1つの施設のみという状況だ。現在、ブラジルで電気・電化製品をリサイクルできる総設備能力は3万7,000トン/年となっており、今回の環境省と3つの業界団体によるリバースロジスティックスを運用するためには、同設備能力を2倍ないし3倍にする必要がある。

日本の家電製品協会は、日本の家電リサイクル法の4つの対象製品について、2018年の再商品化等処理重量を約56万トン/年としており、ブラジルのリサイクル処理能力は日本と比べて小さいことが分かる。

Abrelpe(ブラジル清掃業者協会)によれば、現在、一般廃棄物の約40%は不正に処分されており、市町村の約60%は不正な廃棄物処分施設を利用している。全国に合法的な施設を設置するためには、2031年までに年間7億レアル(約189億円、1レアル=27円)の投資が必要だとしている。

今後、電気・電化製品のリサイクル施設や関連技術に関するビジネス機会が期待されており、既に中国企業も関心を示し始めている。

執筆者紹介
ジェトロ・サンパウロ事務所
高橋 ルシア(たかはし るしあ)
2016年、ジェトロ入構。現在に至る。
執筆者紹介
ジェトロ・サンパウロ事務所
古木 勇生(ふるき ゆうき)
2012年、ジェトロ入構。お客様サポート部オンライン情報課(2012~2015年)、 企画部海外地域戦略班(中南米)(2016~2017年)、海外調査部米州課中南米班(2018年)を経て、2019年2月からジェトロ・サンパウロ事務所勤務。