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給与支払いなど資金繰りに深刻な課題、その対応策を考える(インド)
税務・会計専門家インタビュー(後編)

2020年5月19日

新型コロナウイルスの拡大を受けた税務・会計分野でのインド政府の対応と最新動向についてのインタビュー後編。前編では進出日系企業からの相談傾向、政府発表の概要をKPMGインドのディレクターの小宮 祐二氏、ディレクターの空谷 泰典氏、アソシエイトディレクターの後谷 賢(ごうたに さとし)氏、の3人に聞いた(2020年4月30日)。後編は、政府支援策の見通し、資金繰りへの対応策、操業再開時の留意点、インド政府への期待などに関する内容となっている。

企業への直接支援策は、現時点で講じられていない

質問:
インド政府は、企業向けの補助金や従業員への給与支払いへの支援策などを発表していないのか。また、その見通しは。
答え:
(小宮氏)そのような政策は、現時点で発表されていない。新型コロナウイルス関連の措置に限らず、もともとインドの各種インセンティブなどには、企業を直接サポートするような取り組みがあまりなかった。政府が現時点で注力しているのは、中小企業向けの資金の流動性を確保するために銀行やノンバンク向けに資金を注入するなど、間接的な対応だ。中央銀行のインド準備銀行(RBI:Reserved Bank of India)も、銀行・ノンバンクの支払いを3カ月間猶予するなどの金融政策をとっている。多くの貧困層を抱えるインドでは、まずは農家や貧困層向けの支援が優先されている印象。企業向けの支援策が発表されるとしても、中小企業などに対象が限られるのではないか。

まずは資金繰り状況の確認から/国外借り入れには規制が問題になることも

質問:
インド政府の講じたロックダウン措置により、多くの企業の資金繰りが厳しくなっているが、どのような対策が考えられるか。
答え:
(空谷氏)まずは資金繰り表を作り向こう数カ月のお金の出入りを確認することで、枯渇することがないようコントロールすることだ。そのうえで、短期的な対策と中長期的な対策を講じるべきだろう。
短期的な対策としては、キャッシュアウトとキャッシュインの調整。キャッシュアウトで多くを占めるのは、ベンダーやサプライヤーへの支払いと従業員への給与支払いだろう。これらをなるべく遅らせる、あるいは減らすことができないか、検討する。特にベンダーやサプライヤー、リース費用の支払いについては、契約書の不可抗力条項で今回のような感染症がカバーされていれば、免除や延期の交渉はしやすくなる。キャッシュインについては、売掛金があれば全額回収するのが一番よい。しかし、客先も大変な状況であると思われるため、一部分割し受け取るなどの交渉ができるか検討すべきだ。
中長期的には、資金調達手段の検討だ。銀行借り入れ、グループ会社借り入れなど、いくつか方法が考えられる。ただし、インド国外の株主からの借り入れを検討する場合、インド準備銀行が定める外国為替規制、対外商業借り入れ(ECB)規制を考慮する必要がある。ECB規制では、最低平均借入期間、借入上限金額、利息上限、使用制限などが定められている、これらを満たしていれば自動認可ルートで申請が可能だ。しかし、要件を満たしていない場合、インド準備銀行の認可が必要となり時間がかかる。借入金ではなく、増資など資本として調達することも考えられる。
多くの日系企業は、特に従業員への給与支払いに悩んでいる。固定費として発生するが、交渉も難しく、事業所が稼働せず売り上げもない中で支払いを必須とする政府の方針を守ることは相当厳しい。派遣社員に対しても、支払うことが原則だ。ただし、このような政府の通達については、すでに訴訟がいくつか起こされている。それらの判決を見ながら弁護士とも相談し判断していくことになるだろう。

操業再開にあたっての課題はロジスティクス

質問:
操業再開にあたってはどのような点に留意すればよいか。
答え:
(空谷氏)操業を再開するためには操業許可が必要であり、その準備を進める。その際、中央政府や州政府のガイドラインに沿った標準作業手順(SOP:Standard Operating Procedure)の作成が必要になる。それを作ったうえで、州政府から許可をもらうことが前提となる。
許可を得た後に行うべきなのは(1)サプライヤーの状況確認、(2)販売先の状況確認、(3)従業員の状況確認、の3点だ。サプライヤーについては、部品が調達できなければ生産はできないため、状況を確認して生産計画へ反映する必要がある。販売先については、販売先が営業していなければ生産できたとしても在庫が積み上がるだけなので、状況を確認する必要がある。従業員についても、州間移動が制限されるため、十分な従業員を確保できるかが課題。すべてに共通する点は、ロジスティクスだ。物が来るのか、販売先まで持っていけるのか、人が来られるのか。国内のロジスティクスのみならず、国外から輸入しているものがある場合は、国際物流についても状況確認が必要だ。

政府には景気浮揚策を期待

質問:
インド政府に対して、今後どのような措置・政策を期待するか。
答え:
(後谷氏)ロックダウン後、市場心理が回復するような対策を行うべきだ。金銭面では、補助金的なものや、観光など弱くなっている分野の事業者への支援など。非金銭面では、税務上の恩恵を認める、法人税の税率を下げる、など。利息の支払いが延期されているが、それも状況を見てさらに延期すべきだろう。ローンの条件を緩和して、お金が市中に行きわたるような策も必要だ。
関税面では、産業競争力の弱いセクターで、外国の安い製品が入ってきてインドの競争力が弱くなることを防ぐために、関税率の見直しなどが必要となってくるだろう。

税務・会計専門家インタビュー

  1. 新型コロナウイルス感染症拡大で政府が講じた税務緩和措置とは(インド)
  2. 給与支払いなど資金繰りに深刻な課題、その対応策を考える(インド)
執筆者紹介
ジェトロ・ニューデリー事務所
磯崎 静香(いそざき しずか)
2014年、ジェトロ入構。企画部企画課(2014~2016年)、ジェトロ・チェンナイ事務所海外実習(2016~2017年)、ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課(2017年~2019年)を経て、2019年11月から現職。

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