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税関とのコミュニケーション改善の一方、追加文書提出要求や税関検査など悪化(ロシア)
2018年度在ロシア日系企業通関問題アンケート結果

2019年1月23日

ロシアとの貿易で通関トラブルに直面するケースは多い。ジェトロは2018年10月10日、毎年実施している在ロシア日系企業を対象にした通関問題アンケートの結果を発表した。主な問題・トラブルとして、「追加文書提出要求」「課税標準価格修正要求」「適用HSコード修正要求」「抜き打ち検査・事後調査の件数・頻度増加」が挙がった。特に「税関検査内容・頻度」「通関の際に要求される書類数」「抜き打ち検査・事後調査状況・頻度」については、過去1年間で「悪化した」と指摘する企業が「改善した」という企業を上回った。2018年度の結果について報告する。

約4割の企業が通関トラブルに直面

過去1年間における通関問題・トラブルの発生状況について、「あった」とする回答は43%だった(図1参照)。トラブル発生場所としては、シェレメチェボ税関(日本からの航空貨物の主要取り扱い場所のモスクワ・シェレメチェボ空港を管轄)とバルト税関(サンクトペテルブルク港を管轄)が38%と同率で1位となった(図2参照)。ウラジオストク税関は19%と第3位になった一方、ナホトカ税関はゼロだった。極東におけるコンテナ主要取り扱い港がナホトカ港からウラジオストク港に代わりつつあることが背景にあるとみられる。そのほか、モスクワ州税関やノボロシイスク税関が上位にランクインした。

図1:過去1年間の通関問題・トラブル発生状況
あった 43% なかった 44% 不明・該当せず 13%

出所:2018年度通関問題アンケート結果

図2:通関問題・トラブル発生場所(複数回答可)
シェレメチェボ税関 38% バルト税関 38% ウラジオストク税関 19% モスクワ州税関 15% ノボロシイスク税関 12% ドモジェドボ税関 8% スモレンスク税関 8% キンギセップ税関 4% プルコボ税関 4% 中央物品税税関 4% ナホトカ税関 0% 不明・該当せず 4% その他 12% 注1:図1にて「あった」と答えた企業による回答 注2:シェレメチェボ税関、ウラジオストク税関、ノボロシイスク税関、プルコボ税関、ナホトカ税関については、当該名称の空港、港を管轄。バルト税関はサンクトペテルブルク港を、キンギセップ税関はウスチ・ルーガ港を管轄

注1:図1にて「あった」と答えた企業による回答。
注2:シェレメチェボ税関、ウラジオストク税関、ノボロシイスク税関、プルコボ税関、ナホトカ税関については、当該名称の空港、港を管轄。バルト税関はサンクトペテルブルク港を、キンギセップ税関はウスチ・ルーガ港を管轄。
出所:2018年度通関問題アンケート結果

抜き打ち検査・事後調査の件数・頻度が増加

具体的な問題・トラブル発生事項としては、「追加文書提出要求」が50%、「課税標準価格修正要求」が38%、「適用HSコード修正要求」と「抜き打ち検査・事後調査の件数・頻度増加」が23%だった。「税関検査後の貨物破損・荷崩発生」「関税・VAT還付期間の長期化」「法制度・ルールの突然変更による滞貨・検査厳格化」は同率の15%となった(図3参照)。

図3:具体的な通関問題・トラブル発生事項(複数回答可)
追加文書提出要求 50% 課税標準価格修正要求 38% 適用HSコード修正要求 23% 抜打検査・事後調査頻度の件数・頻度増加 23% 税関検査後の貨物破損・荷崩発生 15% 関税・VAT還付期間長期化 15% 法制度・ルールの突然変更による滞貨・検査厳格化 15% 制度・システム・体制移行による通関現場混乱 12% 税関情報システムにおける障害発生 12% 関税・VAT還付請求の不承認・却下 12% 税関からの照会件数・頻度増加 12% 基準認証取得確認* 12% 税関ポスト毎に異なる判断・要求 8% 英語作成文書の不受領 4% 税関職員の怠慢作業による遅延発生 4% 税関ポスト・電子申告センターの突然の閉鎖 4% 税関当局への照会・回答に時間の長期化 0% 自発的な税関申告内容修正による処罰 0% 無償輸入の不許可 0% 再輸出の不許可 0% その他 19%

注:図1にて「あった」と答えた企業による回答。
出所:2018年度通関問題アンケート結果

過去1年間の通関問題・トラブル事項の解決状況について、解決済みと回答した企業は50%で、残りの半数は問題が継続しているなどで解決に至っていない。解決に有効な手法としては「税関と協議」が38%に上り、通関ブローカー任せにするのではなく、自ら税関と連絡を取る行為が広がってきていると言えよう(図4参照)。

図4:通関問題・トラブル解決に有効な手法(複数回答可)
税関と協議 38% 通関ブローカーの活用・変更 23% 社内・現地パートナーとの協力強化 19% 貿易手続きの変更 8% 在露日本大使館・ジェトロに相談 4% 在日ロシア連邦大使館に相談 0% その他 12% 特になし 15%

注:図1にて「あった」と答えた企業による回答。
出所:2018年度通関問題アンケート結果

税関検査の内容・頻度は悪化

連邦税関局は2017年5月、「ビジネスに向けた10のステップ」と題した、税関手続きの簡素化に向けたさらなる取り組みを明らかにした。この枠内で、税関申告書の自動登録、リスク管理システムにおける「低リスク」カテゴリー事業者に対する自動リリースの実施割合の拡大などがうたわれている(2018年5月11日付地域・分析レポート)。その他、貿易事業者の「パーソナルアカウント」ページの拡充を図っており、貿易事業者の利便性向上に向けた制度・実務手続きの改善に取り組んでいる。過去1年間の税関行政改善に向けた取り組みに関する評価について聞いたところ、「高く評価」「ある程度評価」が計31%にとどまる一方、「それほど評価できない」「全く評価できない」が計36%と「評価する」という回答を上回った。「改善」が図られた項目としては、「通関リードタイムの短縮」を挙げる企業が28%に上ったほか、「制度全体の簡素化」18%、「関税率の変更」と「税関・通関法制度に関する啓蒙・情報発信・普及」がともに10%となった(図5参照)。他方、「悪化」とされた項目では「税関検査内容」11%「税関検査頻度」10%、「通関の際に要求される書類数」8%、「抜き打ち検査・事後調査状況・頻度」7%などで、「改善」と回答した割合よりも悪化が上回った。

図5:過去1年間の税関行政改善に関する主要事項の評価
通関リードタイムの短縮 改善 28% 不変 52% 悪化 0% 不明・該当せず 20%  制度全体の簡素化 改善 18% 不変 44% 悪化 7% 不明・該当せず 31%  関税率の変更 改善 10% 不変 61% 悪化 5% 不明・該当せず 25%  税関・通関法制度に関する啓蒙・情報発信・普及 改善 10% 不変 51% 悪化 5% 不明・該当せず 34%  税関とのやり取りに要する時間・手間 改善 8% 不変 54% 悪化 5% 不明・該当せず 33%  税関検査頻度 改善 8% 不変 52% 悪化 10% 不明・該当せず 30%  通関の際に要求される書類数 改善 7% 不変 59% 悪化 8% 不明・該当せず 26% 税関検査内容 改善 5% 不変 54% 悪化 11% 不明・該当せず 30%  抜き打ち検査・事後調査状況・頻度 改善 5% 不変 52% 悪化 7% 不明・該当せず 36%  非関税措置に関する状況 改善 0% 不変 56% 悪化 5% 不明・該当せず 39%

出所:2018年度通関問題アンケート結果

税関・通関関連機関への具体的な改善要望事項については、「税関ポストごとに異なる書類要求・判断の統一化」が最も多く49%に達し、次いで「サンプル品・中古品の輸入の簡素化・必要書類の削減」(41%)、「関税・VAT還付手続きの簡素化(還付に要する期間の短縮化・ルールの明確化)」(41%)、「英語による提出文書の受領」(41%)、「無償輸入の許可範囲の拡大・ルールの明確化」(38%)に関する指摘が多かった(表参照)。一方、過去の調査で改善要求の声が多かった「税関当局への照会・回答期間の短縮化、回答期限厳守、応対品質向上、E-mailなどの照会手段採用」は33%にとどまり、税関とのコミュニケーションは改善に向かっていることがわかった。

表:税関・通関関連機関への具体的な改善要望事項(複数回答可)(n=61)
改善要望事項 割合
税関ポストごとに異なる書類要求・判断の統一化 49%
サンプル品・中古品の輸入の簡素化・必要書類の削減 41%
関税・VAT還付手続きの簡素化(還付に要する期間の短縮化・ルールの明確化) 41%
英語による提出文書の受領 41%
無償輸入の許可範囲の拡大・ルールの明確化 38%
税関当局への照会・回答期間の短縮化、回答期限厳守、応対品質向上、E-mailなどの照会手段採用 33%
GOST-R、CU-TRなど規格・認証対象品目数の削減・証明書取得の簡素化 26%
課税標準価格の事前照会制度の導入 25%
税関検査実施後の貨物の原状復帰の徹底 25%
英語による税関・通関関連法制度に関する情報発信 23%
再輸出手続きの簡素化・ルールの明確化 23%
事後調査・抜打検査頻度の削減・背景説明の徹底・ルールの明確化 21%
低税率HSコードへの修正手続きの簡素化・ルールの明確化 20%
通関事業者による関税・VAT立て替え払いの許可・簡素化 16%
自発的な税関申告内容修正に伴う罰則の免除 16%
ATAカルネなど一次輸入手続きの簡素化・必要書類の削減 16%
認定事業者(AEO)資格取得に向けた保証金の引き下げ/要件の簡素化 13%
長期保税倉庫の保証金の引き下げ・要件の簡素化・利便性の向上 8%
通関事業者に対する罰則の軽減 8%
通関関連書類の紛失防止策の徹底 8%
保税展示場の設置 3%
その他 8%
出所:
出所:2018年度通関問題アンケート結果

通関問題に関するアンケートの実施は今回で5回目。ジェトロとモスクワ・ジャパンクラブ商工部会通関委員会がサンクトペテルブルク日本商工会の協力を得て、2018年7月3~27日に、中央連邦管区、北西連邦管区、沿ボルガ連邦管区、極東連邦管区などに所在する日系企業250社を対象に実施し、61社(製造業8社、非製造業53社)から回答を得た。貿易手続きに関しては、「自社で手続きを行っている」が37社、「自社で手続きを行っていない」が17社、残り7社は「不明・該当せず」だった。今回から調査対象期間を過去2年間から過去1年間に短縮した。前回の調査結果については「2018年3月9日付ビジネス短信記事」を参照。

執筆者紹介
ジェトロ・モスクワ事務所
齋藤 寛(さいとう ひろし)
2007年、ジェトロ入構。海外調査部欧州ロシアCIS課、ジェトロ神戸を経て、2014年6月より現職。ジェトロ・モスクワ事務所では調査業務、進出日系企業支援業務(知的財産保護、通関問題)などを担当。編著にて「ロシア経済の基礎知識」(ジェトロ、2012年7月発行)を上梓。

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