トラブル発生はモスクワ・シェレメチェボ空港が最多-2017年度在ロシア日系企業通関問題アンケート結果-
(ロシア)
モスクワ発
2018年03月09日
ロシアと貿易を行う企業が、通関でトラブルに直面するケースは多い。ジェトロは2017年12月19日、毎年実施している在ロシア日系企業を対象にした通関問題アンケートの結果を発表した。通関トラブルに直面する企業の割合は前回調査に比べ減少した一方で、トラブル発生件数は増加傾向にある。トラブルの内容は従来のものと大きく変わらないが、追加文書提出要求が前年比22ポイント減と大きく比率を下げた。2017年度の結果について報告する。
トラブル発生件数は四半期を追うごとに増加
通関問題に関するアンケートの実施は今回で4回目。ジェトロとモスクワ・ジャパンクラブ商工部会通関委員会がサンクトペテルブルク日本商工会の協力を得て、2017年9月11~27日にモスクワ周辺、サンクトペテルブルク周辺、沿ボルガ地域などに所在する日系企業250社を対象に実施し、50社(製造業6社、非製造業44社)から回答を得た。
貿易手続きに関しては、「自社で手続きを行っている」が32社、「自社で手続きを行っていない」が17社、残り1社は「不明・該当せず」だった。
過去2年間における通関問題・トラブルの発生状況については、「あった」とする回答は64%で、前年度のアンケート結果(2016年12月2日記事参照)に比べ7ポイント減少した(図1参照)。ただし、トラブルの発生件数を四半期別でみると増える傾向にある。2016年下半期は55%、2017年上半期は68%と高まっている(図2参照)。
トラブル発生場所としては、日本からの航空貨物の玄関口であるモスクワ・シェレメチェボ空港が40%(前年比8ポイント上昇)と、サンクトペテルブルク港(27%)を抜き1位だった(図3参照)。それ以外の税関ではおおむねトラブル発生件数が減少した中で、モスクワ州税関は20%(16ポイント上昇)と3位になった。
税関検査後の破損・荷崩れや通関現場の混乱が発生
具体的な問題・トラブル発生事項としては、「課税標準価格修正要求」「追加文書提出要求」「適用HSコードの修正要求」が引き続き上位3位を占めた(図4参照)。ただし、追加文書提出要求は前年比22ポイント減とその比率を大きく下げた。他方、「税関検査後の貨物破損・荷崩れ発生」が22%(前年比14ポイント増)、「制度・システム・体制移行による通関現場混乱」が19%(15ポイント増)となり、前回調査に比べて多数の指摘があった。
税関当局の取り組みへの評価には大きな変化なし
税関当局は「税関行政の改善」に関するロードマップを策定し、2012年以降、各種取り組みを行っている。しかし、過去1~2年の税関行政改善に向けた取り組みに関する評価について聞いたところ、「高く評価」「ある程度評価」が計38%にとどまり、前回(37%、ただし前回は過去5年間の評価について質問)とほとんど変わらなかった。「それほど評価できない」「全く評価できない」が計24%と、前回に比べ5ポイント減少した。他方、「十分な情報がない」「不明・該当せず」が計38%となり、税関側の情報発信不足が課題点として引き続き浮き彫りになった。具体的に改善が図られた事項としては、「通関リードタイムの短縮化」を挙げる企業が94%に上ったほか、「通関に必要な書類数の削減」(50%)、「税関とのやり取りの迅速化」(28%)などが前回より上昇した一方、「税関検査頻度の減少」(33%)については低下した(図5参照)。
税関当局・通関関連機関への具体的な改善要望については、「税関当局への照会・回答期間の短縮化、回答期限厳守、応対品質向上、E-mailなどの照会手段採用」が、前回に引き続き最も多く54%となった(表参照)。「税関ポストごとに異なる書類要求・判断の統一化」(54%)、「サンプル品・中古品の輸入の簡素化・必要書類の削減」(41%)、「関税・VAT還付手続きの簡素化(還付に要する期間の短縮化・ルールの明確化)」(39%)、「課税標準価格修正要求に当たり、貨物リリースを優先し、価格証明を事後とする方式の導入」(37%)、「英語による提出文書の受領」(35%)については、それぞれ3割以上の企業が要望として挙げた。
改善要望事項 |
2016年度 (n=35) |
2017年度 (n=46) |
---|---|---|
税関当局への照会・回答期間の短縮化、回答期限厳守、応対品質向上、E-mailなどの照会手段採用 | 51 | 54 |
税関ポストごとに異なる書類要求・判断の統一化 | 49 | 54 |
サンプル品・中古品の輸入の簡素化・必要書類の削減 | 43 | 41 |
関税・VAT還付手続きの簡素化(還付に要する期間の短縮化・ルールの明確化) | 40 | 39 |
課税標準価格修正要求に当たり、貨物リリースを優先し、価格証明を事後とする方式の導入 | 43 | 37 |
英語による提出文書の受領 | 34 | 35 |
課税標準価格の事前照会制度の導入 | 37 | 26 |
GOST-R、CU-TRなど規格・認証対象品目数の削減・証明書取得の簡素化 | 14 | 26 |
通関事業者による関税・VAT立て替え払いの許可・簡素化 | 31 | 22 |
無償輸入の許可範囲の拡大・ルールの明確化 | 26 | 22 |
事後調査・抜打検査頻度の削減・背景説明の徹底・ルールの明確化 | 20 | 22 |
英語による税関・通関関連法制度に関する情報発信 | 26 | 20 |
再輸出手続きの簡素化・ルールの明確化 | 26 | 15 |
税関検査実施後の貨物の原状復帰の徹底 | 17 | 15 |
低税率HSコードへの修正手続きの簡素化・ルールの明確化 | 14 | 15 |
自発的な税関申告内容修正に伴う罰則の免除 | 14 | 13 |
ATAカルネなど一次輸入手続きの簡素化・必要書類の削減 | 11 | 11 |
認定事業者(AEO)資格取得に向けた保証金の引き下げ/要件の簡素化 | 11 | 11 |
長期保税倉庫の保証金の引き下げ・要件の簡素化・利便性の向上 | 3 | 9 |
保税展示場の設置 | 0 | 7 |
通関事業者に対する罰則の軽減 | 3 | 4 |
通関関連書類の紛失防止策の徹底 | 11 | 2 |
その他 | 6 | 0 |
(出所)2017年度在ロシア日系企業通関問題アンケート結果(ジェトロ)
(齋藤寛、宮川嵩浩)
(ロシア)
ビジネス短信 161059e897d556bf