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CES2019のスタートアップ出展ゾーン「エウレカパーク」で日系企業が存在感(米国)
家族型ロボット「ラボット(LOVOT)」などJ-Starupパビリオンに22社が出展

2019年1月24日

米国ネバダ州ラスベガスで2019年1月8~11日に、世界最大級の個人向け電気機器展示会「CES2019外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」が開催された。今回のCESには、世界155カ国以上から4,500社、18万人以上が集った。かつては消費者家電見本市として有名だったが、近年のデジタル化に伴い、自動運転や、サービスとしてのモビリティー(MaaS)を含むモビリティー分野、AI(人工知能)アシスタントを含むスマートホーム分野、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)を含むゲーム分野など、出展企業はさまざまな分野に広がりつつある。その中でも近年、来場者の注目を集める場所の1つに「エウレカパーク(Eureka Park外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )」がある。グーグルやホンダ、パナソニックなど大企業がブースを構えるメインエリアから数キロ離れた、サンズ・エキスポ(Sands Expo)の1階に位置するスタートアップに特化した出展ゾーンだ。スタートアップが所狭しと出展する同エリアに、ジェトロはスタートアップ22社を集めたJ-Startup外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (注1)パビリオンを設置した。

厳しい出展基準で最新技術が集結するエウレカパーク

世界中のスタートアップ1,247社(2019年実績、出所:CES Exhibitor Directory)がブースを構えたエウレカパーク。注目を集めることに成功した理由の1つに、主催者であるCTA(全米民生技術協会)が設定した厳しい審査基準(注2)がある。審査基準が細かく設定されているため、同エリアに並ぶのは他の展示会でみられない、初めて披露される新製品や新技術ばかりだ。単独で出展する場合、1小間約100平方フィート(約9平方メートル)当たり4,000~4,500ドルと決して安価ではないが、CESには2,900人の投資家やベンチャーキャピタル(VC)、6,500人ものメディアが訪れるため、世界的にスケールアップしたいスタートアップにとっては格好の場といえる。

また、CESのほとんどの会場は自動運転、オーディオ、ドローン、AI・ロボティックスなど産業別に展示されているのに対し、エウレカパークではフランス、オランダ、スイス、イタリア、英国、台湾、韓国など各国・地域別パビリオンが設置され、しのぎを削った。特にフランスは、フレンチテック(2018年6月15日地域・分析レポート参照)の掛け声の下、414社のフランス企業がCESに参加、そのうちスタートアップ企業は376社と米国に次ぐ出展規模だ(ジェトロ調べ)。日本のスタートアップ出展は約40社で、フランスに比べるとまだ少ないが、22社が出展したJ-Startupパビリオンでは、独自の技術や製品で存在感を示していた。


日本発スタートアップ22社が集まったJ-startupブース(ジェトロ撮影)

ロボットイメージを一変したGROOVE Xのコミュニケーションロボット

J-startupパビリオンで注目を集めていた企業の1つは、家族型ロボット「ラボット(LOVOT)」を展示したグルーブエックス(GROOVE X)だ。「米国において、ロボットは人間と敵対するものと考えるという意見もあったが、全くの杞憂(きゆう)だった」と、その手応えを語った。半天球カメラや画像認識技術を駆使し「抱っこしてと手をあげるしぐさ」や、温度センサーなど全身に組み込まれたタッチセンサーを活用した「なでられるとうっとりする表情」は、ほぼ全ての国の来場者に受け入れられていた。欧米の主要メディアが愛くるしい姿を写そうと、こぞって取材に押しかけた。


J-startupブースで注目を集めたラボットとグルーブエックス(ジェトロ撮影)

また、商談では、高度なセンシング技術を利用したエッジコンピューティング(注3)のプラットフォームを提供するイデイン(Idein)に注目が集まった。自動運転やセキュリティー分野などのニーズの増加に伴い、同社のプラットフォームは世界中から多くの引き合いがあり、会期中に利用申し込みもあったという。また商談のみならず、J-startupパビリオン出展者には、北米市場への販売に向けたテストマーケティングを目的に出展した企業も多くあった。耳をふさがず、音楽を聞きながら作業や会話ができる「ながら聞き」イヤホンを開発するアンビー(ambie)は、ディストリビューターや協業パートナーとの会話を通じて、北米市場に手応えを感じたようだ。


アンビーのブース展示(ジェトロ撮影)

CES会場内でスタートアップイベントがめじろ押し

CES2019では、アクセラレーターやメディアなど、多くのスタートアップ支援組織がブース出展やスタートアップ向けイベントを開催していた。シリコンバレーのインキュベーターのプラグ・アンド・プレイ(Plug and Play)がエウレカパークに初めてブースを構えたほか、米著名アクセラレーターのテックスターズ(TechStars)もエウレカパーク内でスタートアップ向けピッチイベントを開催した。音声から感情を認識するプログラムを提供するエンパス(Empath)は、同ピッチイベントにおいて3位を受賞した。そのほか、クラウドファンディング大手のインディーゴーゴー(Indiegogo)は、CESに向け世界中からスタートアップを募集、選ばれた上位2社にブースを提供し、新商品のPRをサポートした。


テックスターズのピッチイベントで3位を受賞したエンパスの
山崎はずむCSO(最高戦略責任者)(写真左端、ジェトロ撮影)

電気製品やガジェット(目新しい道具)を扱う大手テクノロジーブログサイトのエンガジェット(Engadget)は、毎年恒例の「ベストオブCESアワード」を実施した。日本からは、前述のグルーブエックス、次世代型電動車いす・パーソナルモビリティーのウィル(Whill)、超音波で排せつを予測するIoT(モノのインターネット)ウェアラブルデバイス「Dfree」を提供するトリプル・ダブリュー・ジャパン(Triple W Japan)が最終選考にノミネートされるなど、日系スタートアップが健闘した。このうち、トリプル・ダブリュー・ジャパンは、デジタルヘルス・フィットネス製品部門でベストオブCESアワードを受賞した。


デジタルヘルス・フィットネス製品部門でベストオブCESアワードを受賞した
トリプル・ダブリュー・ジャパンの中西敦士CEO(最高経営責任者) (ジェトロ撮影)

存在感を示し始めた日本発スタートアップ。まだ世界各国に比べると数こそは少ないものの、今後、グローバルマーケットを狙うスタートアップの増加が期待される。


注1:
経済産業省が推進する官民によるスタートアップ集中支援プログラム。
注2:
(1)展示会に初出展であること、(2)自社の初めてのプロダクトを既に市場投入している場合は2018年1月以降であること、(3)市場に多大な影響を与える可能性のあるイノベーティブなプロダクト・サービスを有すること、など。
注3:
端末の近くに、サーバーを分散配置するネットワーク技法の1つで、上位システムへの負荷や通信遅延の解消を目的としている。
執筆者紹介
ジェトロ・サンフランシスコ事務所 次長
樽谷 範哉(たるたに のりや)
2001年ジェトロ入構後、シリコンバレーなどでのインキュベーション事業立ち上げを担当。ジェトロ名古屋、ジェトロ・トロント事務所、東京本部にてハイテク、製造業、スタートアップの世界展開プログラムに従事。2017年7月よりベイエリアにてイノベーティブな日系企業の世界展開をサポートしている。

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