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開発が進むモロッコ水産業、日本にもビジネスチャンス

2019年7月10日

モロッコはアフリカでトップ級の水産物漁獲量を誇り、世界でも有数の漁業大国だ。モロッコ政府は2009年から水産業近代化計画を実行しており、この計画の一環として、2011年から隔年で水産分野の国際見本市「Salon Halieutis」を開催している。日本はモロッコの水産物・水産加工品の輸出先第3位で、重要なパートナーの1つだ。水産業におけるモロッコと日本の関係の現状と将来性について紹介したい。

モロッコにとって日本は水産物の重要な輸出先

モロッコ産のタコを日本のスーパーでも目にする機会が多いが、日本はモロッコの水産物・水産加工品の輸出先3位〔2017年、13億4,000万ディルハム(約151億4,200万円、MAD、1MAD=約11.3円)〕となっており、重要な貿易パートナーだ。

日本の貿易統計によると、2017年の対モロッコ貿易は、輸出が2億4,300万ドル、輸入が2億9,900万ドルで、モロッコからの輸入の52%を水産物・水産加工品が占めている。なお、モロッコの水産物・水産加工品の輸出先1位はスペイン(75億1,800万MAD)、2位はイタリア(23億3,700万MAD)、4位はフランス(10億7,200万MAD)、5位はトルコ(9億1,600万MAD)と続く。輸出先上位5カ国のうち、日本以外の4カ国とモロッコはすでに自由貿易協定(FTA)を締結している。

モロッコの漁業生産量、水産物・水産加工品の輸出量とも年々増加

2009~2017年にかけて、モロッコの漁業生産量と産出額、水産物・水産加工品の輸出額と輸出量は、おおむね増加傾向にある(図1~4)。

図1:モロッコの漁業生産量(単位:トン)
2009年から2016年にかけて増加傾向で、2017年は微減。

出所:モロッコ農業・海洋漁業・地方開発・水・森林省 海洋漁業庁

図2:モロッコの漁業生産額(単位:1,000MAD)
2009年から2017年にかけて増加傾向。

出所:モロッコ農業・海洋漁業・地方開発・水・森林省 海洋漁業庁

図3:モロッコの水産物・水産加工品の輸出量(単位:トン)
2011年は前年より減少したが、2012年から増加傾向。

出所:モロッコ農業・海洋漁業・地方開発・水・森林省 海洋漁業庁

図4:モロッコの水産物・水産加工品の輸出額 (単位:100万MAD)
2009年から2017年にかけて増加傾向。

出所:モロッコ農業・海洋漁業・地方開発・水・森林省 海洋漁業庁

モロッコの輸出額の中で魚介類は5.4%(2017年)を占め、主要な輸出品目の1つとなっている。内訳はタコ・イカ・貝類が3.2%、イワシ・サバ類が2.2%だ。2017年は前年比で、タコ・イカ・貝類が8.9%、イワシ・サバ類は9.1%増加している。

水産業近代化計画「Plan Halieutis」でさらなる発展を目指す

生産量や輸出量の増加の背景には、モロッコ政府が2009年に策定した水産分野における開発戦略「Plan Halieutis」がある。この戦略は、(1)持続的な資源の活用、(2)水産物の品質向上、(3)付加価値向上による競争力強化の3本柱を掲げ、水産分野の開発を進めている。2020年までに、水産業のGDPを219億MAD、国内総生産量を166万トン、陸上作業の従事者数(直接雇用)を11万5,000人、輸出額を300億MADにするなどの目標が掲げられている。

2017年の水産業における陸上作業の従事者数(直接雇用)は9万3,736人で、目標値の81.5%に当たる。2017年は新たに3,744人の雇用が生み出された。缶詰加工の作業で2016年は新規雇用数が0人だったのに対し、2017年は612人を創出、冷凍加工の作業では2016年と比べ約2倍の新規雇用を創出したことが増加の背景にある。

水産分野の国際見本市「Salon Halieutis」に日本製品も出展

モロッコの水産分野の発展を促進するべく、「Plan Halieutis」の一環で農業・海洋漁業・地方開発・水・森林省は2011年から国際見本市「Salon Halieutis」を開始し、2011年の第1回以来、隔年で開催されている。第5回が2月20~24日、アガディールで開催された。商談機会を提供するだけでなく、水産関連分野における南北・南南協力、モロッコ・欧州・アフリカ大陸内での協力を促進するプラットフォームの機能を果たしている。


第5回「Salon Halieutis」の会場外観とブース(ジェトロ撮影)

第5回「Salon Halieutis」のブース(光電製作所提供)

2017年の第4回は39カ国、255社が出展したのに対し、第5回は40カ国から283社が出展し、規模が拡大した。そのうち46%は国外からの出展だった。1万6,000平方メートルの展示会場は、6ゾーン(漁船と漁具、水産加工、水産資源、国際、イノベーション、業界団体やスポンサー)で構成された。

日本の船外機やエンジン、コンプレッサー、レーダーなどの製品も複数出展しており、こうした日本製品は現地の代理店を通して、モロッコ国内で販売されている。光電製作所は、船の安全管理のためのレーダーと魚群探知機を、SOREMAR GROUPを通してモロッコに30~40年前から輸出・販売している。同社担当者は「漁獲量の多いモロッコで魚群探知機が役立っている」と話してくれた。また、日本のODA事業の成果である、貝類を対象とした養殖技術の機材も会場に展示され、来場者の関心を集めていた。貝類を生産する現地企業の担当者に話を聞いたところ、「日本に求めるものは、天然貝を増産させるテクニカルサポートだ」と期待を寄せていた。モロッコの冷凍食品製造輸出企業からは、「養殖事業での日本の投資や技術協力を期待している。当社はアフリカをはじめ世界の市場を目指した缶詰工場を持ち、日本からの投資も求めている」というコメントがあった。見本市会場内では、モロッコの水産関係者から日本企業との連携可能性に期待が寄せられていた。

モロッコにおける水産分野の拠点「Haliopolis Park」

「Plan Halieutis」の一環で、アガディールにモロッコで最初の水産分野のビジネスパーク「Haliopolis Park」が2012年に設立された。ビジネスパークを管理する「Parc Haliopolis Company」の担当者によると、75ヘクタールの敷地に最大約60企業・団体を収容できるという。土地の販売価格は、1平方メートル当たり500~605MAD。既にフランスをはじめ欧州企業10社が拠点を設立し、イワシ缶の製造などを行っている。ビジネスパークの利点は、空港・港・高速道路から近く(アガディール空港から16キロ、アガディール港から15キロ)、輸出入に好都合な立地であることだ。投資後の最初の1年間は、スース=マサ地方政府から補助金250 MAD/平方メートルを受けることが可能だ。

また、担当者によると、2020年にはスース=マサ地方にフリーゾーンを開設する予定で、土地の販売価格は1平方メートル当たり450 MAD。投資後の最初の1年間はスース=マサ地方政府から補助金250 MAD/平方メートルを受けることができる。アガディールは欧州のみならず、アフリカやアジアなどへの輸出入拠点になる、と担当者は強調した。

ビジネスパークや新設予定のフリーゾーンは、日系企業がモロッコに進出する際の有望な選択肢の1つになる可能性を秘めている。水産分野の開発を推進するモロッコは、今後より一層の日本との技術提携、水産・漁業分野のビジネス深化に期待を寄せる。アフリカをはじめ世界の水産市場に販路を広げようとするモロッコ水産業の今後の可能性が注目される。

執筆者紹介
ジェトロ・ラバト事務所
本田 貴子(ほんだ たかこ)
2016年、ジェトロ入構。東京本部で、ビジネス講座やセミナーのライブ配信・オンデマンド配信の運営、ジェトロ会員サービスの提供に従事。2018年8月から現職。モロッコでの日本企業の投資促進や現地活動支援に従事するとともに、調査・情報発信、現地スタートアップ発掘などにも携わる。

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