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競合から協同へ、四川省と重慶市の発展戦略(中国)

2018年10月4日

中国西南部の2大経済圏である四川省と重慶市は従来、競合関係にあるとされてきたが、近年、両省市は地域一体化による発展戦略を推進している。

2018年6月7日、中国共産党四川省委員会の彭清華書記一行が重慶市を訪問した。訪問の成果として両省市は、「四川省と重慶市との協力の深化および長江経済ベルト発展のさらなる推進に関する計画(2018~2022年)(以下、計画)」を締結した。長江経済ベルトは四川省、重慶市を含む長江流域の11都市を対象とする地域発展構想であり、長江の上流に位置する両省市も同構想を活用して競争力を高めつつ、機能的な広域経済圏の形成を進めようと取り組んでいる。

計画では、(1)生態環境保護の相互連携を加速する、(2)インフラ施設の相互連結を推進し、高速鉄道、高速道路および長江流域の港湾のネットワークを構築する、2019年に成都・達州・万州間高速鉄道、重慶・万州間高速鉄道を着工する、水陸連携輸送を発展させる、四川省達州から重慶市万州までの鉄道路線を開拓する、(3)両省市は、共同で開放的な物流システムおよびプラットフォームを構築する、共同で中国(重慶)・シンガポールプロジェクトを推進し、貴州省、広西省北部湾(トンキン湾)を経て、シンガポールに至る輸送を実現させる、(4)イノベーションを促進する、共同で「中関村(重慶)軍民融合産業園」、「中国(綿陽)科技城」を建設する、区域イノベーション共同体である「成渝(成都市と重慶市)都市群総合科学技術サービスプラットフォーム」を構築し、農業、生態環境保護、人工知能などの分野における科学技術成果の転用能力を向上させる、(5)自動車、二輪車産業における協力を深めるほか、電子産業、液晶パネル、集積回路などの分野での協力を強化する、西部人工知能産業センターを建設する、などの協力事項が挙げられた。

四川省と重慶市の共同発展に向けた一体化構想の変遷

四川省と重慶市の地域一体化に向けた協力は、四川省の省都である成都市と重慶市の協力「成渝一体化」から発展したものである。「成渝一体化」は、2003年に中国科学院が発表した「中国西部大開発重点区域規画前期研究」で初めて提唱されたものである。成都市と重慶市を中心とした広域での協同発展に関する方針であり、その後、第11次5カ年規画(2006~2010年)、第12次5カ年規画(2011~2015年)においても、同方針が盛り込まれた。

2016年3月30日には、李克強首相が主催する定例の国務院常務会議において「成渝都市群発展規画」が可決された。同規画では、成都市と重慶市からなる成渝都市群の育成によって新型都市化と農業現代化を相互に促進し、西部大開発や長江経済ベルトなどの重要な地域戦略と連携させることで中西部地域の内需を活発化させ、経済成長を促進することを定めた。主な内容は、(1)生態(エコシステム)を共同で建設する、(2)設備製造、バイオ医薬、農林水産品加工など同地域に優位性のある産業集積を形成する、商業貿易物流、観光、文化など現代サービス業を発展させる、沿海部からの産業移転の受け入れを進める、(3)対外開放を一層拡大し、中国と海外との産業協力によるイノベーションを推進するためのプラットフォームを設立し、水路・鉄道・道路・インターネットを通じて対内・対外の開放チャネルを開通させる、(4)コストを共同で負担し、利益を共有する共同発展メカニズムを形成する、(5)都市と農村の共同発展を推進する、というものであった。

また、同規画を受けて同年5月21日、重慶市人民政府は、四川省人民政府と「両省市の協力を強化し、共同で成渝都市群を構築することに関する覚書」を締結した。同覚書において、両省市は、(1)大気汚染対策に関わる分野の連携協力を実施する、(2)両省市間の携帯電話ローミング通話料を漸次値下げして最終的には廃止し、成渝経済圏内で通信料金の一体化を実現する、(3)同年7月に両地域で、交通ICカード、高速道路ETCシステムなどの分野で相互接続を実施する、など6つの協力分野を定めた。

さらに、2016年6月13日には、中国共産党四川省委員会の王東明書記(当時)一行が重慶市政府を訪問し、両省市は「川渝合作(四川省と重慶市の協力)を実務的に深化させることに関する方案2016」を締結した。本方案によれば、両地域における重要な協力分野は、(1)災害緊急対策、気象・環境監視、(2)交通インフラ建設、(3)両地域共同による産業園区の建設、(4)社会保障制度の融通、(5) 四川省に伝わる地方劇である川劇の保護、となっており、経済や文化などの広い範囲に及ぶ。このうち、社会保障制度の融通については、社会保障カードの暗証番号の切り替え、紛失時の再発行などの手続きが簡素化されたほか、一部の病院や医療機関で社会保障カードを共通化し、カードの適用基準が緩和されるようになった。

新計画の下で広域的な経済発展を目指す

「成渝一体化」が初めて提唱されてから15年が経過したが、両省市の実質的な一体化はこれまであまり進展してこなかった。むしろ、両省市は競い合うように自動車産業、電子産業を主要産業とし経済発展を図ってきた。例えば、電子産業分野では、沿海部の労働者不足や人件費の上昇などを理由に、内陸部に工場を移転させる動きが出るや、両省市はこうしたトレンドを自身の経済発展戦略に積極的に取り込み、投資誘致や技術開発につなげてきた。ゆえに、両省市の産業構造には類似性がある。世界のノートパソコン(PC)の約4割が重慶で生産される一方、四川省は中西部地域における最大の集積回路の生産地となり、世界のノートPCチップの50%は同省で製造されているといわれるほどになった。

一方、産業構造の類似性は今後、両地域が相互補完の関係を築くための土台ともなる。当面は長江経済ベルト発展計画の推進において、両省市の協調発展がどのように進展していくかが重要なポイントとなる。また、以前から実施されてきた西部地域内での協力に限定された地域発展計画とは異なり、四川省は今回の計画を、物流産業発展の空間を広げる機会としても捉えており、重慶から貴州省、広西省北部湾を経て、シンガポールに至るルートの建設への参画も目指している。

執筆者紹介
ジェトロ・成都事務所
王 植一(おう しょくいち)
2014年、ジェトロ入構。2014年11月よりジェトロ・成都事務所勤務。

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