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広東省、全国一の自動車産業拠点の地歩固める(中国)
生産台数は2年連続1位、NEVの伸びに期待

2018年7月19日

2017年の広東省の自動車生産台数は321万900台で2年連続全国1位となった。2008年に1位となって以降、北京市、上海市、重慶市などの伸びを受け、2010年には7位まで落ち込んだが、日系企業の復調や地場系企業の伸長により盛り返し、中国最大の自動車生産拠点としての地位を確実なものとしつつある。一方で、新エネルギー車(NEV)の生産は大きく落ち込んだ。今後は「乗用車企業平均燃料消費量・新エネルギー自動車ポイント並行管理弁法」によるNEVの生産・販売割り当て、NEVベンチャーの生産拠点設立、NEV普及・支援政策の強化などによる成長が期待されている。

2017年の自動車生産台数は全国の11.1%

2017年の中国の自動車生産台数は前年比3.2%増の2,901万5,434台、うち広東省は14.7%増(注1)の321万900台で2年連続全国1位となった。全国に占めるシェアは11.1%まで高まった。

広東省の自動車産業は、1990年代末~2000年代にかけ日系企業をはじめ多くの外資系企業が進出し、中国でも有数の規模に成長、2008年には生産台数88万2,000台で全国1位となった(表1参照)。その後、北京市、上海市、重慶市などの伸びを受け2009年は5位、2010年は7位、2012年には6位となった。

2013年に前年比44.4%の高い伸びを示し3位になり、2015年以降は生産が伸び悩む都市もある中で前年比2桁増を続け、2016年には8年ぶりに全国1位に返り咲いた。2017年も1位を維持し、中国最大の自動車生産拠点としての地位を固めつつある。

表1:中国の省・市・自治区別自動車生産台数の推移(上位5地域、万台)

2008年・2009年(▲はマイナス値、―は値なし)
順位 2008 2009
地名 台数 前年比 シェア 地名 台数 前年比 シェア
1 広東省 88.2 11.9 9.4 北京市 127.1 65.9 9.2
2 吉林省 86.1 4.8 9.2 上海市 125.0 55.0 9.1
3 上海市 80.7 ▲ 1.8 8.6 重慶市 118.7 54.4 8.6
4 重慶市 76.9 8.6 8.2 広西チワン族
自治区
118.5 68.8 8.6
5 北京市 76.6 8.4 8.2 広東省 113.1 28.2 8.2
全国 934.6 5.1 1,379.5 47.6
2010年・2011年(▲はマイナス値、―は値なし)
順位 2010 2011
地名 台数 前年比 シェア 地名 台数 前年比 シェア
1 上海市 169.9 35.9 9.3 上海市 191.6 12.8 10.4
2 吉林省 164.2 48.4 9.0 重慶市 166.6 3.2 9.0
3 重慶市 161.4 36.1 8.8 吉林省 155.7 ▲ 5.2 8.5
4 湖北省 157.8 45.9 8.6 北京市 150.5 0.1 8.2
5 北京市 150.3 18.3 8.2 広東省 150.3 11.5 8.2
全国 1,826.5 32.4 1,841.6 0.8
2012年・2013年(▲はマイナス値、―は値なし)
順位 2012 2013
地名 台数 前年比 シェア 地名 台数 前年比 シェア
1 上海市 202.4 5.7 10.5 上海市 226.9 12.1 10.3
2 重慶市 191.0 14.6 9.9 北京市 200.0 20.3 9.0
3 広西チワン族
自治区
167.3 17.5 8.7 広東省 199.9 44.4 9.0
4 北京市 166.2 10.4 8.6 広西チワン族
自治区
186.9 11.7 8.5
5 吉林省 156.5 0.5 8.1 重慶市 184.0 ▲ 3.7 8.3
全国 1,927.6 4.7 2,211.7 14.7
2014年・2015年(▲はマイナス値、―は値なし)
順位 2014 2015
地名 台数 前年比 シェア 地名 台数 前年比 シェア
1 上海市 247.4 9.0 10.4 重慶市 260.9 12.8 10.6
2 吉林省 237.4 44.1 10.0 上海市 243.0 ▲ 1.8 9.9
3 重慶市 231.4 25.8 9.8 広東省 239.4 10.4 9.8
4 広東省 216.8 8.4 9.1 広西チワン族
自治区
229.4 9.7 9.4
5 広西チワン族
自治区
209.2 11.9 8.8 吉林省 208.1 ▲ 12.3 8.5
全国 2,372.5 7.3 2,450.4 3.3
2016年・2017年(―は値なし)
順位 2016 2017
地名 台数 前年比 シェア 地名 台数 前年比 シェア
1 広東省 280.1 17.0 10.0 広東省 321.1 14.7 11.1
2 重慶市 266.3 2.1 9.5 重慶市 299.8 12.6 10.3
3 上海市 260.8 7.3 9.3 上海市 291.3 11.7 10.0
4 吉林省 254.0 22.0 9.0 吉林省 289.8 14.1 10.0
5 広西チワン族
自治区
245.3 6.9 8.7 湖北省 266.9 9.6 9.2
全国 2,811.9 14.8 2,901.5 3.2
注:
前年比は前年台数を元に算出しており、各省・市・自治区発表と異なる場合がある。小数点第2位以下は四捨五入。
出所:
中国統計年鑑各年版、2017年は各省・市・自治区の国民経済・発展統計公報、中国汽車工業協会および報道資料

日系大手3社と地場系が主役

広東省の自動車産業が再び盛り上がりを見せている要因として、(1)日系企業の復調、(2)地場系企業の伸長が考えられる。

(1)について、広東省には1998年にホンダ(広汽本田汽車)、2003年に日産(東風日産乗用車)、2004年にトヨタ(広汽豊田汽車)が合弁(注2)で拠点を設立し、中国で唯一日系大手3社の製造拠点を有する省となった。2016年の中国の主要日系合弁メーカーの生産能力は413万台、うち広東省の生産拠点が153万台と37.0%を占める(表2参照)。また、2017年の広東省における日系大手3社の生産台数は省全体の54.0%を占める。

2012年に広東省が大きく生産台数を落としたのは、9月の日本政府による尖閣諸島国有化を機に広がった日系自動車買い控えの影響が大きかったと考えられる。2012年の中国の自動車生産台数は前年比4.6%増だったにもかかわらず、広東省の日系合弁メーカーは広汽本田汽車が16.4%減、広汽豊田汽車が7.8%減、東風日産汽車が4.2%減といずれも前年比で減少した。騒動が落ち着いた2013年にはそれぞれ42.2%、20.6%、20.0%と大幅増に転じており、尖閣問題が日系合弁メーカーに大きな影響を与えたことが分かる。広東省全体をみても、2012年は7.8%減、2013年には44.4%増と日系合弁メーカーの動きと符合する。

その後、日系合弁メーカーの生産台数は中国でのスポーツ用多目的車(SUV)需要の増加を捉えた(注3)ことで堅調に推移し、広東省全体の生産台数の増加に大きく寄与している。

表2:中国における主要日系合弁メーカーの生産能力(2016年) 
社名 工場名 場所 生産能力(万台)
天津一汽豊田 泰達工場 天津市 39
西青工場 12
東風日産乗用車 花都工場 広東省広州市 55
襄陽工場 湖北省襄陽市 18
鄭州工場 河南省鄭州市 26
大連工場 遼寧省大連市 11
鄭州日産汽車 鄭州基地 河南省鄭州市 20
常州基地 江蘇省常州市 15
東風本田汽車 第一工場 湖北省武漢市 24
第二工場 24
東風インフィニティ汽車 襄陽基地 湖北省襄陽市 6
重慶長安鈴木汽車 第一工場 重慶市 20
第二工場 10
長安マツダ汽車 南京基地 江蘇省南京市 22
広汽本田汽車 黄埔第一工場 広東省広州市 24
黄埔第二工場 24
黄埔第三工場 12
広汽豊田汽車 南沙工場 広東省広州市 38
広汽三菱汽車 広汽三菱汽車 湖南省長沙市 13
合計台数 413
うち広東省 153
広東省のシェア(%) 37.0
出所:
中国汽車工業年鑑2017

(2)については、広州汽車集団乗用車(以下、広汽乗用車)(本社:広州市)の貢献が顕著だ。広汽乗用車は、多くの日系自動車メーカーと合弁を組む広州汽車集団の自社ブランド車製造・販売子会社で、2008年に設立された。合弁を通じて獲得した技術力・品質管理手法を生かし、2010年にアルファロメオ(注4)のシャーシを応用した自社ブランド車「伝祺(トランプチ)」を発売、優れたデザイン、高い品質(注5)、手ごろな価格で、中国のSUV需要を捉え、急速に売り上げを伸ばした。広東省の自動車生産台数は2012年から2017年にかけ182万5,900台増加したが、そのうち広汽乗用車が46万9,862台と増加分の25.7%を占める(表3参照)。生産台数シェアでは2012年の2.8%から2017年には15.8%と約5.6倍に拡大し、広汽トヨタを上回った。2019年からは米国での販売も予定しており、一層の生産台数増加が予想される。

表3:2012年以降の日系3社と広汽乗用車の生産台数の推移

2012年~2014年(▲はマイナス値、―は値なし)
企業名 2012 2013 2014
台数 伸び率 シェア 台数 伸び率 シェア 台数 伸び率 シェア
広汽本田 308,547 ▲ 16.4 14.2 438,847 42.2 22.0 511,328 16.5 23.6
広汽豊田 251,269 ▲ 7.8 11.6 302,983 20.6 15.2 379,709 25.3 17.5
東風日産
(注)
494,363 ▲ 4.2 22.8 593,094 20.0 29.7 507,233 ▲ 14.5 23.4
日系3社 1,054,179 ▲ 9.0 48.6 1,334,924 26.6 66.8 1,398,270 4.7 64.5
広汽集団
乗用車
38,724 131.6 2.8 112,138 189.6 5.6 137,924 23.0 6.4
広東省
全体
1,385,000 ▲ 7.8 1,999,300 44.4 2,168,000 8.4
2015年~2017年(―は値なし)
企業名 2015 2016 2017
台数 伸び率 シェア 台数 伸び率 シェア 台数 伸び率 シェア
広汽本田 560,372 9.6 23.4 635,443 13.4 22.7 710,481 11.8 22.1
広汽豊田 403,508 6.3 16.9 423,275 4.9 15.1 439,187 3.8 13.7
東風日産
(注)
522,099 2.9 21.8 569,706 9.1 20.3 584,179 2.5 18.2
日系3社 1,485,979 6.3 62.1 1,628,424 9.6 58.1 1,733,847 6.5 54.0
広汽集団
乗用車
189,212 37.2 7.9 380,755 101.2 13.6 508,586 33.6 15.8
広東省
全体
2,394,000 10.4 2,800,600 17.0 3,210,900 14.7
注:
東風日産は花都工場(広州市)の生産車種(シルフィシリーズ、サニー、ティーダ、マーチ、リヴィナシリーズ、ラニア)の台数を合計。東風日産の2017年のみ販売台数。
出所:
中国汽車工業年鑑、中国汽車工業月度統計摘要、汽車銷售網

NEVの生産は落ち込み

一方、中央政府が普及を推進する新エネルギー車(NEV)(注6)の生産台数は、広東省では大きく落ち込んだ。2017年の中国のNEV生産台数は前年比53.8%増の79万4,000台と大幅に増加したが、広東省は33%減の4万7,069台で全国7位にとどまり、2016年の1位(7万2,400台)から大きく順位を落とした。

最大の要因は、NEVの世界最大手である比亜迪汽車(BYD)(本社:深セン市)の広東省での生産車種の販売台数が、大幅に減少したことだ。2017年のBYDの中国におけるNEV販売台数は、前年比13.4%増の11万3,669台で4年連続全国1位だったものの、深セン市の拠点(注7)で生産されるNEVの車種(「唐」「e6」)の販売台数が合計で約2.7万台減と大きく落ち込んだことが影響した(表4、5参照)。

BYDの販売不振の要因としては、補助金政策の変更が考えられる。2017年の新エネルギー車購入補助金は、中央政府によるものが2016 年比で20%削減、地方政府によるものは中央政府の金額の50%以下となるよう定められ、中央政府の補助金額は電気自動車(EV)が最高4万4,000元(約74万8,000円、1元=約17円)、プラグインハイブリッド車(PHV)は条件を満たしたものが一律2万4,000元となった。

消費者の負担額が増える中、2017年は北京新能源汽車のECシリーズ(希望小売価格15 万元程度)が前年比約19倍の7万8,079台、知豆電動汽車のD2(15万~18万元程度)が約6.5倍の4万2,342台と 、比較的低価格のEVが販売台数を伸ばし、それぞれ販売台数ランキングの1位、2位となった。

BYDのNEVは唐が26 万5,900~27万9,900元、e6が 30万9,800~36万9,800元と高価格帯が多い。さらに販売台数の6割を補助金額の少ないPHVが占めるとされ、政策変更が大きく影響した可能性がある。

2018年1月に開催された「中国電気自動車百人会フォーラム」で、BYDの 王伝福・董事長は「今後も一定期間は自家用車の主力はPHV」であるとして、PHVへの補助金政策の強化を訴えており、政策変更の影響を認識している様子がうかがえる。

表4:BYDの主要自動車製造拠点(2016年)
場所 生産車種 生産能力
(万台)
生産量
(万台)
陝西省西安市 F3など3系車種、速鋭、宋、秦(EV含む)、e5など 36.0 31.7
広東省深セン市 S6、S7、唐、e6など 14.5 12.3
湖南省長沙市 思鋭、M6、G6、元、K9など 15.8 5.9
出所:
BYD債券信用評価公告
表5:BYDの深セン拠点生産主要車種の販売台数(2017年) (▲はマイナス値、―は値なし)
車種 台数 (万台) 前年比
1.46 ▲ 53.5
e6 1.02 ▲ 50.4
合計 2.48 ▲ 52.3
前年比 減少台数 2.72
出所:
汽車銷售網のデータを基に算出

日系企業もNEV対応を本格化

NEV生産台数について2017年は減少したものの、長期的には(1)「乗用車企業平均燃料消費量・新エネルギー自動車ポイント管理弁法」による生産割り当て、(2)NEVベンチャーによる生産拠点の設立、(3)NEV普及・支援政策の強化、により増産が見込まれる。(1)については、従来型乗用車(注8)の生産台数に応じてマイナスポイントが付与され、それを相殺するために必要な台数のNEVの生産・販売が課される(注9)。2017年の生産台数を基に試算すると、2019年には広東省の日系合弁メーカーは約6万~10万台程度の生産・販売義務が生じるとみられる(表6参照)。

既に日系合弁メーカーもNEVの本格的導入に動き始めている。ホンダは4月25日、コンセプトカー「理念EV」を発表した。中国市場専用に投入する初の量産EVのコンセプトモデルで、広汽本田の自主ブランド車として2018年内の発売を予定している。また、2018年後半に発売予定の「アコード・ハイブリッド」も併せて公開した。トヨタは4月25日、2019年に中国でレビンPHVおよびC-HRをベースとするEVを投入すると発表した。日産は4月25日、「シルフィ・ゼロ・エミッション」を発表した。「日産リーフ」と同じプラットフォームをベースとし、2018年後半に発売を予定しており、中国の大手合弁メーカーで初の量産型EVになるという(注10)。

表6:乗用車企業平均燃料消費量・新エネルギー自動車ポイント並行管理弁法に基づく生産・販売台数割り当て試算

(1) 2019年
項目 中国全体 広東省 全体 広汽豊田 広汽本田 東風日産 主要日系 合計
2019年の従来型乗用車
生産台数(推定)
26,317,414 3,540,017 484,204 783,305 644,057 1,911,566
ポイント比率 10% 10% 10% 10% 10% 10%
ポイント 2,631,741 354,002 48,420 78,331 64,406 191,157
電気自動車 必要台数
(走行距離200キロ)
822,419 110,626 15,131 24,478 20,127 59,736
電気自動車 必要台数
(走行距離300キロ)
598,123 80,455 11,005 17,802 14,638 43,445
PHV 必要台数 1,315,871 177,001 24,210 39,165 32,203 95,578
(2) 2020年
項目 中国全体 広東省 全体 広汽豊田 広汽本田 東風日産 主要日系 合計
2020年の従来型乗用車
生産台数(推定)
27,106,937 3,717,018 508,414 822,471 676,260 2,007,145
ポイント比率 12% 12% 12% 12% 12% 12%
ポイント 3,252,832 446,042 61,010 98,696 81,151 240,857
電気自動車 必要台数
(走行距離200キロ)
1,016,510 139,388 19,066 30,843 25,360 75,268
電気自動車 必要台数
(走行距離300キロ)
739,280 101,373 13,866 22,431 18,443 54,740
PHV 必要台数 1,626,416 223,021 30,505 49,348 40,576 120,429
注1:
生産台数は2017年実績を基準に国内全体が3%、日系各社は5%の伸びが続くと仮定。生産台数は全て従来型とする。
注2:
各必要台数は該当種類の自動車のみ生産・販売した場合の台数。
出所:
「乗用車企業平均燃料消費量・新エネルギー自動車ポイント並行管理弁法」を基に算出。生産台数は中国汽車工業月度統計摘要。東風日産は表3に同じ

(2)について、2014年に広州市に設立されたNEVベンチャー「小鵬汽車」は、2017年5月4日、広東省肇慶市に10万台規模の生産能力を備えた工場を設立すると発表した。同社は広汽汽車集団のエンジニアなどが設立したNEVベンチャーで、現在は海馬汽車(本社:海南省)に生産を委託している。また、2014年に上海市で設立されたNEVベンチャー「蔚来汽車」は2017年12月28日、広汽集団と「広汽蔚来新能源汽車」を設立すると発表した。完成車の研究開発・製造、コア部品、販売・サービスなどで協力すると報じられている(「経済参考報」2018年1月12日)。

(3)について、広東省政府は2013年2月20日に「広東省新エネルギー自動車産業発展計画(2013~2020)」を発表、近年は各市政府によるNEV普及・支援政策の実施が相次ぐ。広州市政府は2017年10月に「広州市新エネルギー自動車発展工作方案(2017~2020年)」を発布、2020年までにNEVの完成車生産能力を30万台以上にするとの目標を定めた。また、11月には「広州市公共交通電動化推進工作方案」を発表、市内で新たに導入されるバスなどを全て電動車両にするとし、補助金の支給などを盛り込んだ。

東莞市は2017年7月14日、「東莞市新エネルギー車発展『十三五』計画」を発布、2020年までにNEVの生産台数を20万台規模にするとした。

深セン市は2018年1月22日から「深セン市小型自動車増加量調整管理実施細則」(深交規〔2018〕1号)を実施、これまで年間2万台に制限されていたNEV小型車のナンバープレート取得を無制限とした(注11)。

既存自動車メーカーには一定の優位性

中国政府はNEVの中でも、特にEVの推進に力を入れている。EVはガソリン車と比べ部品点数が10分の1程度ともいわれる。そのため、関連する部品メーカーに影響があるだけでなく、すり合わせ技術などに強みを持つ既存自動車メーカーの優位性が大きく低下するとの見方がある。

中国では、政府のEV推進や将来の市場拡大を見越し、多くの他業種企業やベンチャー企業が参入を試みている。2017年時点で中国には60社以上のEVベンチャーが存在するとされるが、中国で新規参入企業がEVを生産することは容易ではない。EV生産には政府の審査を通過する必要があり、2018年6月時点で、生産許可を取得しているNEVベンチャー企業は7社にとどまるとされる。多くのEVベンチャーは自社生産が不可能であるため、生産委託など既存自動車メーカーと協力をせざるを得ないのが現状だ。

またEVベンチャーは生産台数が少ないため、1台当たりの製造コストは既存自動車メーカーと比べ15%程度高く、競争力が低いとの見方もある(「人民日報」4月24日)。さらに、多くのEVベンチャーが自社製品の特長とする急速充電や、音声認識によるネットワークとの連結などは、外部企業の製品・技術を使用していることが多く、独自の強みがない場合が多いとされる。

中国政府は2017年4月の「自動車産業中長期計画」において、2025年のNEV販売台数目標を700万台としている。十分な台数を生産するためには、既存自動車メーカーの培った生産技術・ノウハウが生きることは間違いない。また、製品の品質・価格においても一定の優位性を保つことが期待できる。広東省は既存の自動車産業の集積を生かし、NEVでも中国を牽引する可能性が高いと考えられる。


注1:
広東省発表の数値は13.4%増だが、中国統計年鑑掲載の数値を前年の値として算出。
注2:
ホンダ、トヨタは広州汽車集団、日産は東風汽車集団とそれぞれ合弁を設立。
注3:
2017年の中国のSUV販売台数は前年比13.3%増の1,025万2,700台と、乗用車全体の伸び(2.5%増)を大きく上回る。SUV販売台数に占める日系メーカーのシェアは15.3%と中国系(60.6%)に次ぎ、ドイツ系(9.3%)、米国系(8.5%)、韓国系(3.2%)、フランス系(2.2%)を大きく上回った。
注4:
広汽集団はフィアット・クライスラーと2010年に「広汽フィアット・クライスラー」を設立している。
注5:
J.DPowerの自動車初期品質調査では、中国ブランドの中で5年連続1位を獲得している。
注6:
電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)など。ハイブリッド車(HV)は含まない。
注7:
深セン市の製造拠点で製造されている車には、ガソリン車などNEV以外もある。
注8:
ガソリン車、ディーゼル車などNEV以外を指す。
注9:
ポイントの売買も可能。
注10:
いずれも北京モーターショーでの発表。広東省の合弁メーカー製造車種のみ取り上げた。
注11:
従来は小型自動車増加台数を年間10万台とし、うち普通小型車8万台(抽選方式4万台、オークション方式4万台)、NEV2万台(抽選方式)とされていた。
執筆者紹介
ジェトロ・広州事務所 経済分析部 部長
河野 円洋(かわの みつひろ)
2007年、ジェトロ入構。在外企業支援・知的財産部知的財産課、ジェトロ岐阜、海外調査部中国北アジア課を経て2014年3月よりジェトロ・広州事務所勤務。

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