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ロシア中小企業インタビュー(8)顧客への手厚い研修で高品質ヘアケア製品を展開

2018年12月27日

モスクワ市でヘアサロン向けに高級ヘアケア製品の輸入販売を行うブラルスコスメティクスは、高付加価値製品の販売を目標に、顧客向けの教育・研修事業に注力する。また、日本でのOEM生産に向け、2017年2月に日本法人を設立した。ただ、同社のビオレッタ・バカーニナ社長とエフゲニー・バカーニン営業部長は、日本でのパートナー開拓は容易でないという。同社の企業概要や日本とのビジネスにおける魅力と苦労などについて聞いた(2017年12月)。ロシア中小企業インタビュー連載の8回目。

高品質ヘアケア製品の魅力を顧客へ丁寧に説明

質問:
企業概要について。
答え:
2012年に創業。ヘアサロン向けのプロ用のヘアケア製品(シャンプー、カラーリング剤)の輸入販売を行っている。
2016年の売上高は約2億5,000万ルーブル(約4億2,500万円、1ルーブル=約1.7円)で増加傾向にある。女性は経済状況に関わらず化粧品への支出を惜しまない。モスクワ、サンクトペテルブルク、クラスノダル、サマラ、ウファに営業拠点がある。従業員数は全体で80~90人程度だ。
社長のもともとの専門はソフトウエアプログラム開発だが、ある時、個人用に購入した高品質のヘアケア製品に余剰があったため、インターネットで販売したところ、非常に多くの需要があると判明したため、ヘアケア製品の輸入販売ビジネスを開始した。最初はロシア国内で調達したものを販売していたが、その後、輸入を開始した。傷んだ髪をケアする有効成分がその当時あまり知られていなかったことが成功の要因の1つ。操業当初は自宅をオフィスにしていたが、事業拡大に伴い現在はモスクワ市内に300平方メートルのオフィスを借りている。
製品は米国、ブラジル、イタリア、スイスから輸入している。ブラジル産の「Honma Tokyo」ブランド(日系ブラジル人が製造販売)が髪の修復効果が高いと評判で、最も売れている。日本製シャンプーの輸入販売も最近始めた。
質問:
企業戦略として取り組んでいるものは?
答え:
顧客であるヘアサロンの美容師への研修・教育を徹底している。2014年の経済危機により価格の高い製品は売れにくくなったが、高品質だからどうしても高価格になることを説明して販売を伸ばしている。また、正しく使わないと副作用が生じる製品もあるため、使用方法を教えるための研修スペース(サロン、セミナースペース)をオフィス内に設け、顧客向けの研修・教育を行っている。
オフィス内の研修スペースでヘアケア製品のセミナーを行う様子(ジェトロ撮影)
質問:
営業・プロモーション活動はどのように行っているか?
答え:
営業スタッフが各サロンを回って直接営業をしている。どのような製品が欲しいのか顧客ニーズの把握に努めている。拠点のない地域では代理店を活用し、営業や研修を実施している。現在、ロシア連邦構成体のうち50構成体にある約3,000店舗が顧客だが、まだ展開できていない地域への拡大を図っている。個人向けにはオンライン販売も行っているが、8~9割の顧客は取引先サロンで購入している。
宣伝手段としては、ロシアのビューティー・ヘアサロンの多くが購読しているファッションやプロ向け化粧品の雑誌に広告を掲載しているほか、展示会にも出展している。SNSやビューティーブロガーも活用している。

品質管理やカスタマーサービスに注力

質問:
製品の調達や品質管理、物流について。
答え:
海外からは完成品として輸入するもの、バルクで輸入して国内でボトルに詰め替える作業を行っているものの2つがある。製品を輸入する際、輸入元によっては発注した製品でないものが混ざっていることがあるため、検品は重要だ。貿易担当マネジャーがチェックしている。モスクワ市内に倉庫を構えている。
当社製品を利用した消費者からクレームを受けることがある。これには顧客研修担当者が電話で対応しているが、クレームのほとんどがヘアサロンの間違った使用によるものだ。クレームを受けた際には、合わせて顧客満足度についてのヒアリングも行っている。
輸入の際に通関トラブルに直面することがある。ロシアは法令と通関手続きが頻繁に変わるため、税関がさまつなことを指摘してくるケースが多い。他方、輸入元の不十分な対応のため発生するトラブルもある。例えば、サンプルを輸入するにはインボイスにサンプルと表記する必要があるが、発送元がちゃんと記載しないためにトラブルが起きることがある。
質問:
人材採用・育成方法は。
答え:
人材は求人サイトで募集し、部長面接・社長面接を経て採用を決定する。試用期間は3カ月で、採用後は2週間の研修を行い、最後に試験する。その後の人材育成はOJTで行っている。
質問:
財務管理やリスク管理について。
答え:
自己資本だけで経営しており、銀行融資は利用していない。融資を受けると常に返済を気にしないといけないからだ。販売の際の取引条件は全額前払いを要求している。仕入れ段階は相手によって異なる。新規の仕入れ先の場合、信頼を得るために全額前払いで支払う一方、製品の納品ミスが多い輸入元に対しては前払いと後払いを半分に分けている。販売数量はある程度予測可能で、売れ残る製品はあまりない。売れ行きの悪い製品は使い方が分からないことがネックになる場合が多いので、顧客への研修を強化している。
知的財産侵害のトラブルに直面したことがある。「Honma Tokyo」は、無名の状態から人気ブランドへと当社が育て上げた製品だが、人気が出てから模倣品や並行輸入品が発生した。商標登録をしてから被害は減少しているが、インターネット上で模倣品を見かけることがある。ディストリビューターとは販売価格を決めているので、それより安価なものは模倣品か並行輸入品だとわかる。見つけた際は警告状を出している。警告状を出すと、出品を取りやめるケースが多い。今まで訴訟に至ったことはない。

日本企業との信頼関係構築が課題

質問:
貴社の日本進出プロジェクトや日本企業と付き合う上でのメリット、苦労した点は。
答え:
日本で高品質なヘアケア製品をOEM生産してロシア市場に持ち込むため、また、ヘアサロン市場の大きい日本市場への展開のため、2017年2月に日本法人を設立した。その際はジェトロの対日投資ビジネスサポートセンター(IBSC)の支援を受けた。
現在は日本の中堅化学品メーカーのヘアケア製品の輸入・販売を行っている。日本企業とビジネスをする上で重要なことは、日本企業はブランドイメージをとても大切にするため、彼らのブランドを毀損(きそん)することがないように配慮すること。他方、それが日本企業の海外進出を阻害しているとも感じている。
日本企業との取り引きは大変な部分もある。海外企業との取り引きに対して保守的な場合が多い。メールを送ってもなかなか返事がもらえず、契約の話に至るまで何度もやりとりを必要とした。現在、日本で雇用している日本語ができるロシア人社員が、日本のパートナー候補企業10社にコンタクトしたが、反応があったのは2社のみ。さらに面談を申し込んでもうまくいかず、「営業部長がロシアから出張で来るので、どうしても会ってほしい」と掛け合った結果、ようやく日本企業と面談することができた。
日本法人の人材採用でも困難に直面している。既存パートナーとの連携強化、新規取引先発掘のため、複数の日本人従業員を雇いたいが、無期限雇用の条件を提示しても、なかなか応募が来ない。企業信用力を上げるため、現在100万円の資本金の増資も検討している。
現在は日本側パートナーのブランド商品を輸入販売している状況だが、OEMでの新ブランドを立ち上げるため、日本側にサンプルを作成してもらっている。もう1つのプロジェクトとして、ロシアでの日本市場向けの新製品づくりも進めている。日本市場で人気を得た製品は他の国でも間違いなく売れると考えているためだ。今後は既存の取り扱い製品の日本市場への輸出にも取り組んでいきたい。
インタビュー先企業情報
企業名 ブラルスコスメティクス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
所在地 モスクワ市
主な事業、取扱製品・サービス ヘアケア製品の企画・輸入販売
日本企業への提案や関心事項 高品質な日本製シャンプー・カラーリング剤の調達、自社企画製品の日本でのOEM生産とロシアや第三国への輸出
執筆者紹介
ジェトロ・モスクワ事務所
齋藤 寛(さいとう ひろし)
2007年、ジェトロ入構。海外調査部欧州ロシアCIS課、ジェトロ神戸を経て、2014年6月より現職。ジェトロ・モスクワ事務所では調査業務、進出日系企業支援業務(知的財産保護、通関問題)などを担当。編著にて「ロシア経済の基礎知識」(ジェトロ、2012年7月発行)を上梓。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課
戎 佑一郎(えびす ゆういちろう)
2012年、ジェトロ入構。関東事務所、京都事務所を経て、2017年より現職。

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