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【コラム】渡航者が増えるスリランカの治安と安全対策

2018年3月23日

スリランカの大統領府は3月6日、宗教対立による非常事態を宣言した。2009年に内戦が終わったスリランカは、観光地や市場として再び注目されるようになり、同国へ渡航する日本人の数は、内戦終結直前に比べて4.5倍に増えている。しかし、依然として同国の治安状況を気にする日本人は多い。実際の治安状況はどうなっているのか。

日本人渡航者数は4.5万人に

2017年にスリランカへ渡航した日本人の数は4万4,988人と、2008年に比べて4.5倍に増えた。渡航目的別では、観光が全体の86.6%を占め、ビジネスは4.7%となっている。

図:スリランカへの日本人渡航者数
2008年は10075人、2009年は10926人、2010年は14352人、2011年は20586人、2012年は26085人、2013年は31505人、2014年39136人、2015年は39358人、2016年は43110人、2017年は44988人。
出所:
スリランカ観光開発庁、ウィジェマンネ氏提供資料より作成

観光地、新興市場として、日本人の関心が高まっているスリランカだが、内戦のイメージから、いまだに同国の治安に不安を抱く日本人は多い。検索エンジンのグーグルやビングで、「スリランカ」という単語と一緒に検索されている関連キーワードを調べると、「観光」や「ビザ」と共に、「治安」も検索頻度が高く、上位10位以内に入っている(注)。

日本の外務省の危険情報によると、スリランカの危険度は「レベル1:十分注意してください」に指定されている。同省の海外安全ホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます によれば、スリランカでは2009年5月に内戦が終結して以降、テロ事件は発生しておらず、「治安情勢は大幅に改善された」と記載されている。ただし、外国人が強盗や性犯罪など凶悪犯罪に巻き込まれる事例もあるという。

安全上の脅威は限定的

専門家から見たスリランカの治安状況はどういった状況なのか。ジェトロは、スウェーデン系警備会社のセキュリタス・ランカ社に取材した(2018年2月26日)。同社は40カ国の在スリランカ大使館の警備の他、大手民間企業、NGOなどの安全対策を請け負っている。

同社のスリランカ総代表であるロマネロ・アマラシンヘ氏によれば、「スリランカでの生活では、治安上の脅威を感じる必要は全く無い」と断言する。スリランカでは警察、陸軍、海軍が治安維持をしており、「凶悪な事件も少なく、安全」だと言う。

外国人に関わる事件では、数年前に外国人女性がスリランカ人男性に殺害された事件があった。しかし、アマラシンヘ氏によれば、「こうした事件の発生件数は非常に少ない」と言う。以前は北部州に地雷などがあり、危険な地域もあったが、現在は「全地域に渡航して問題ない」(アマラシンヘ氏)状況で、地方出張においてもリスクは無さそうだ。

スリランカは災害リスクも低い。プレートの境界から外れているため、地震が発生しない。津波も1853年、2004年の2回しか発生しておらず、台風も少ない。

一方、「政治上のリスクはある」とアマラシンヘ氏は言う。スリランカでは現連立政権内の足並みの乱れが取り沙汰されている上、2018年2月の地方議会選挙においてラジャパクサ前大統領の政党が躍進するなど、安定した長期政権の展望が見えづらい。


セキュリタス・ランカ社のアマラシンヘ氏(中央)(ジェトロ撮影)

小規模な宗教対立に注意

テロの発生リスクは高くない。オーストラリアのシンクタンクである経済平和研究所(IEP)が2017年11月に発表した「世界テロ指数」(順位が高いほどテロのリスクが高い)によると、南アジアではパキスタンが5位、インドが8位、バングラデシュが21位であるのに対し、スリランカは68位と低く、日本(58位)よりも危険度は低い。

イラクとシャームのイスラム国(ISIS)の壊滅に伴い、シリアなどへ渡航していた過激派のスリランカ人が帰国したという脅威情報もあったが、アマラシンヘ氏は「確かに帰国したようだが、人数は20人に満たないだろう」と分析している。治安当局から警戒されている上、武器も市中に出回っておらず、テロを容易に起こせる環境ではない。武器を簡単に入手できない点ではパキスタン、バングラデシュとは事情が異なるようだ。

宗教に関わる問題では、スリランカ大統領府が2018年3月6日に、一部地域で仏教徒とイスラム教徒の間で緊張が高まっているとして、非常事態を宣言した。スリランカの宗教構成は、仏教徒(70.1%),ヒンドゥー教徒(12.6%),イスラム教徒(9.7%),キリスト教徒(7.6%)だが、コロンボではイスラム教徒が31.4%を占め、仏教徒(31.2%)を上回る。アマラシンヘ氏によると、「イスラム教徒は商業に従事している人が多く、ビジネス活動で目立っている」と言う。イスラム教徒が人口構成、経済上で存在感を増す中、スリランカでは2017年4月頃から一部の仏教徒によるムスリム関連施設の襲撃事件などが起きていた。コロンボ市内では、今回の非常事態宣言に伴う混乱などは起きていないが、不測の事態に巻き込まれないよう注意すべきだろう。


平穏なコロンボ市内(ジェトロ撮影)

危険地区を見極めて回避を

日本人がスリランカへ渡航する上で、安全上留意すべき点は何か。日系企業数社に対して取材を行ったところ、致命的な脅威は確認できなかったが、タクシーの料金トラブルの他、治安リスクではないがデング熱など疾病への不安が挙げられた。

現地旅行会社クラシック・トラベル社の旅行コンサルタント、ヒマニ・ウィジェマンネ氏に聞くと、同氏は「スリランカは極めて安全」と述べた上で、いくつか留意すべき点を挙げた。

第1に、「異常に親しげに近づいてくる人物には警戒が必要だ」とウィジェマンネ氏は言う。初対面で共同でのビジネスを持ち掛けてくるのは、大抵が詐欺の類いだ。また、ガイドは正規ライセンスを持つ人物以外は信用しない方が良い。信頼できる旅行代理店に頼む方がベターだ。

第2に、「地元民も避けるような危険な地区に行かないこと」(ウィジェマンネ氏)だ。例えば、麻薬の常習者が多い南部地域、コロンボのペタ駅周辺などが該当する。近年はインターネットで宿泊先の予約が簡単にできるので、「何も知らずに宿を確保する日本人旅行者も散見される(同氏)とのこと。宿泊代よりも安全面、衛生面を第一に考えるべきだ。

第3に、女性1人での旅行はやや注意が必要だ。「安全面では問題ないが、文化的にはスリランカは女性が一人旅をする国ではない」(同氏)。公共交通機関での移動、夜間の移動には注意した方が良い。海外旅行保険も忘れずに付保しておく必要がある。


注:
ウェブ上の検索関連キーワードツール「goodkeyword」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます を利用した。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課
北見 創(きたみ そう)
2009年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課(2009~2012年)、ジェトロ大阪本部ビジネス情報サービス課(2012~2014年)、ジェトロ・カラチ事務所(2015~2017年)を経て現職。

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