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マレーシア 省エネ車最前線

2018年3月14日

マレーシアの2017年の新車販売台数は58万台、生産台数は50万台だった。市場規模は東南アジアではインドネシア、タイに次ぐ第3位だ。マレーシア政府は、2020年までに省エネルギー車(EEV)の地域拠点を目指す。自動車メーカー各社は、EEV基準に対応した車種を続々と発表している。

自動車保有率の高いマレーシア、新車販売は低迷

マレーシアでは公共交通網が急ピッチで整備されている。軽量輸送システム(LRT)は1990年代から運営されていたが、2017年7月、首都クアラルンプールで大量輸送システム(MRT)1号線が開通した。MRT2号線、3号線の計画も進んでいる。

しかし、市民の日常の足は、いまだに自家用車が主流である。一家族で複数台を所有するケースも珍しくない。自動車登録台数は2012年から累計1,000万台を超え、2016年は1,300万台と前年比で7.4%増えた。自動車を保有する世帯は全体の約8割に上る。マレーシアでは、2014年に発表された国家自動車政策(NAP)により、省エネルギー車(EEV:Energy Efficient Vehicle)の生産拠点にすることを発表した。マレーシアにおけるEEV規格は排気量に応じた燃費効率が設けられている。各メーカーが発売する新モデルも、販売が好調な小型車を中心に燃費のよいEEVが主流だ。

表:マレーシアにおけるEEVの規格
区分 車種 総重量
(キロ)
燃費効率
(ℓ/100km)
A マイクロカー 800以下 4.5
シティーカー 801~1,000 5.0
B スーパーミニカー 1,001~1,250 6.0
C 小型ファミリーカー 1,251~1,400 6.5
D 大型ファミリーカー
小型エグゼクティブカー
1,401~1,550 7.0
E エグゼクティブカー 1,551~1,800 9.5
F ラグジュアリーカー 1,801~2,050 11.0
J 大型四輪駆動車 2,051~2,350 11.5
その他 その他 2,351~2,500 12.0
出所:
マレーシア国際貿易産業省

2017年のマレーシアの新車販売台数は57万6,635台で、過去10年間でピークだった2015年の66万6,674万台、続く2016年の58万85台から、2年連続で減少した。2016年の販売不振の原因は国内経済の鈍化であった。2017年は国内経済がV字回復したが、インフレ率が上昇して家計負担が大きくなったため、自動車の買い控えにつながった。また、大きな潮流として、自動車を保有する世帯が増えたため、新車の需要が伸び悩んでいることが要因となっている。

マレーシア自動車協会によると、2018年の販売台数は回復傾向にあるとして、目標を2017年と同じ59万台としている。マレーシアの2017年の実質GDP成長率は5~6%台を維持しており、第3四半期は約2年半ぶりとなる6%台を記録した。経済指標上では景気回復の追い風が吹いているはずだが、新車販売台数は期待されるほど回復していない。クリスマス商戦や在庫調整セールのある2017年12月期は販売増の期待がかかったが、前年同月比15.6%減の5万4,792台にとどまった。

2017年の生産台数は前年比8.4%減の49万9,558台と落ち込んだ。販売台数減少による過剰在庫を防ぐため、自動車メーカー各社は国内生産を縮小した。

図1:月別新車販売台数および消費者物価指数(CPI)推移(2016/2017年)
2016年の新車販売台数は、1月が4.5万台、2月が3.8万台、3月が4.9万台、4月が4.5万台、5月が4.5万台、6月が5.7万台、7月が4.3万台、8月が5.2万台、9月が4.8万台、10月が4.8万台、11月が4.9万台、12月が6.5万台。2017年の新車販売台数は、1月が4.5万台、2月が4.2万台、3月が5.4万台、4月が4.3万台、5月が5.1万台、6月が5万台、7月が4.9万台、8月が5.2万台、9月が4.1万台、10月が4.7万台、11月が4.9万台、12月が5.5万台。2016年のCPIは、1月が3.5%、2月が4.2%、3月が2.6%、4月が2.1%、5月が2.0%、6月が1.6%、7月が1.1%、8月が1.5%、9月が1.5%。10月が1.4%。11月が1.7%、12月が1.8%。2017年のCPIは1月が3.1%、2月が4.5%、3月が4.9%、4月が4.3%、5月が3.8%、6月が3.4%、7月が3.1%、8月が3.6%、9月が4.2%、10月が3.7%、11月が3.4%、12月が3.5%。
出所:
マレーシア自動車連盟(MAA)、マレーシア統計局

明暗分かれた上位メーカー

メーカー別の販売シェア(2017年)をみると、1位は国民車メーカーで日本のダイハツが出資するプロドゥアが35.5%を占めた。次いで、ホンダ(19.0%)、国民車メーカーのプロトン(12.3%)、トヨタ(12.1%)が続き、上位4社で全体の約8割を占める。上位4社の2017年の新車販売台数を前年比伸び率でみると、国民車メーカーのプロドゥア、プロトンがそれぞれ前年比1.1%減、1.8%減と小幅ながら減少したのに対し、ホンダが19.3%増、トヨタが9.0%増と大幅な伸びを見せた。

図2:2017年月別新車販売台数(上位メーカー別)
上位メーカーとして挙げるのは、プロドゥア、ホンダ、プロトン、トヨタ。1月はプロドゥアが1万4,203台、ホンダが8,594台、プロトンが7,207台、トヨタが5,872台、その他合計が8,791台。2月はプロドゥアが1万6,603台、ホンダが7,695台、プロトンが6,099台、トヨタが5,031台、その他合計が7,027台。3月はプロドゥアが1万9,459台、ホンダが1万994台、プロトンが6,070台、トヨタが6,235台、その他合計が1万959台。4月はプロドゥアが1万4,378台、ホンダが7,283台、プロトンが5,616台、トヨタが5,902台、その他合計が9,567台。5月はプロドゥアが1万7,211台、ホンダが9,153台、プロトンが7,176台、トヨタが6,152台、その他合計が1万908台。6月はプロドゥアが1万7,821台、ホンダが8,808台、プロトンが7,225台、トヨタが5,385台、その他合計が1万1,036台。7月はプロドゥアが1万8,630台、ホンダが9,733台、プロトンが6,452台、トヨタが5,625台、その他合計が9,478台。8月はプロドゥアが1万8,630台、ホンダが9,733台、プロトンが6,452台、トヨタが5,791台、その他合計が1万1,114台。9月はプロドゥアが1万4,355台、ホンダが7,906台、プロトンが4,498台、トヨタが4,420台、その他合計が9,802台。10月はプロドゥアが1万6,491台、ホンダが9,066台、プロトンが 台、トヨタが5,031台、その他合計が4万2,455台。11月はプロドゥアが1万6,636台、ホンダが1万482台、プロトンが4,810台、トヨタが6,868台、その他合計が1万388台。12月はプロドゥアが2万180台、ホンダが1万1,221台、プロトンが4,802台、トヨタが7,346台、その他合計が1万1,180台。
出所:
マレーシア自動車連盟(MAA)

各社動向では、首位のプロドゥアは、同社の主力小型車「マイヴィ」(2005年発売)が引き続き好調だ。同社は2006年以降からトップシェアを維持。「マイヴィ」は2017年5月に累計生産台数100万台を記録した。2017年の年間販売目標である20万2,000台も達成しており、20万4,887台となった。プロドゥアは、2018年の販売台数の目標として前年比2%増を目指すと発表しており、2018年1月は前年同期比25%増となる1万7,693台を売り上げる好発進となった。また、部品の約9割をマレーシア国内メーカーから調達しており、2018年には50億リンギ(約1,400億円、1リンギ=約28円)に上る調達を行う計画だという(ザ・エッジ紙、2018年2月5日付)。

2位のホンダは、右肩上がりにシェアを伸ばした。2017年は主力ブランドの「シティ」「ジャズ」などの新モデルを発売し、販売台数は10万台を突破した。2018年には「オデッセイフェイスリフト」を含む新モデル2種を発表予定で、好調だった2017年と同水準の10万9,000台の販売を目指す。

3位のプロトンは、第1国民車として高いシェアを誇っていたが、各種モデルの不振が続き、業績が悪化。2017年5月にはボルボやロータスを所有する中国の浙江吉利控股集団が49.9%の株式を取得し、同10月には2022年までに年産40万台の新工場建設を発表した。新工場の生産予定台数のうち、半数の20万台は中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国へ輸出する計画を発表している(ニュー・ストレイツ・タイムズ紙、2017年10月31日付)。

4位のトヨタは、2014年以降、シェアの低下が続いたが、2017年は前年比9.0%増と商用車を中心に販売台数を伸ばした。2016年に主力車「ヴィオス」を中心に生産する乗用車の新工場建設を発表、2019年には年産5万台の工場が稼働する予定だ。

『小型車』、『省エネ』がキーワード

マレーシアにおける自動車市場の特徴は、(1)1,500cc以下の小型車、(2)EEV(省エネルギー車)が主流であることだ。2017年1~11月の新車(乗用車)販売台数42万7,183台のうち、72.5%にあたる30万9,668台が1,500cc以下だ。特に1,301~1,500ccが最も人気が高く、前年同期比から9.5%増加している。上位4メーカーの主要モデルの排気量と価格をみていくと、プロドゥアは低価格な小型車に集中している反面、日系メーカーのホンダ、トヨタは中型車を中心に高価格帯のモデルを多数投入する。プロトンは排気量、価格帯ともに幅広く展開している。

図3:上位4メーカーの主要モデルと価格
1,000~1,500ccクラスでは、プロドゥアの「アジア」が2.4万~4.1万リンギ、プロドゥアの「ベザ」が3.6万~4.9万リンギ、プロトンの「サーガ」が3.6万~4.4万リンギ、プロトンの「アイリズ」が4.2万~4.9万リンギ、プロドゥアの「マイヴィ」が4.4万~5.5万リンギ、プロドゥアの「アルザ」が5.1~6.3万リンギ、プロトンの「エルティガ」が5.9万~6.6万リンギ、ホンダの「ジャズ」が7.2万~8.5万リンギ、トヨタの「ヴィオス」が7.5万~9.3万リンギ、ホンダの「シティ」が7.5万~8.9万リンギ、ホンダの「BR-V」が8.2万~9.0万リンギ。1,501~2,000ccクラスでは、プロトンの「ペルソナ」が4.4万~5.8万リンギ、プロトンの「エクソラ」が6.5万~7.3万リンギ、ホンダの「HR-V」が9.7万~11.5万リンギ、ホンダの「シビック」が10.9万~13.2万リンギ、ホンダの「CR-V」が14.1万~16.7万リンギ。2,000㏄超クラスでは、トヨタの「イノーバ」が10.7万~13.2万リンギ、プロトンの「ペルダナ」が11.0万~13.4万リンギ、ホンダの「アコード」が14.9万~16.9万リンギ、トヨタの「カムリ」が14.9万~17.0万リンギ、トヨタの「フォーチュナー」が17.0万~19.6万リンギ。
注:
赤字*付は、EEV規格を満たすモデル。
出所:
各社ウェブサイト

マレーシアの自動車政策「2014年国家自動車計画(NAP2014)」において、政府はEEVの生産増加と地域ハブ化を目指している。NAP2014に定義されるEEVは幅広く、燃費が良いガソリン車を始め、ハイブリッド車、電気自動車、圧縮天然ガス(CNG)、液化天然ガス(LNG)、バイオディーゼルなどを燃料に使用する自動車も含まれる。また、EEVの排気量には制限がないため、大型車も対象だ。

マレーシア自動車研究所(MAI)によると、2014年の新車販売台数におけるEEVの普及率はわずか8.1%(5.4万台)だったのに対し、2016年のEEV普及率は42.8%(24.8万台)と大幅に伸びたという。オン・カ・チュアン第2国際貿易産業大臣は、「2022年までに新車販売台数に占めるEEVの普及率は80%に達する」と期待を寄せている(ニュー・ストレイツ・タイムズ紙、2017年12月13日付)。

オート・ショーの目玉はEEV

MAIが主催する国内最大規模で、2017年10月9日~12日まで開催された「マレーシア・オート・ショー」では、国民車、日系といったシェア上位の各メーカーに加え、ベンツやBMWなどの高級車メーカーが最新モデルをはじめとする主力自動車を発表した。主催者の発表によると、4日間で25万5,000人が訪れた。各メーカーが展示した主力自動車はほぼすべてEEVに該当し、環境配慮型、低燃費、最新テクノロジーといったキーワードがセールスポイントである点が共通する。

会場で目を引いていたのは、11月中旬に首位プロドゥアがフルモデルチェンジを発表した新型「マイヴィ」だ。今回のオート・ショー期間中は、デザインや詳細なスペックの発表前だったため、会場では車体全体が囲いで覆われ、来場者は部分的に開けられたのぞき窓から一部を見ることができるといった趣向が凝らされていた。新型マイヴィの特徴は、上位グレードのモデルに同車種で初めて衝突被害軽減ブレーキ「スマートアシスト」を搭載しているほか、EEVの基準を満たす燃費効率を向上させた点などだ。プロドゥアの発表によると、11月9日の受付開始から1カ月間で予約数が2万台を突破、2018年2月に入り4万8,000台を超えたという。

ホンダのブースでも、最も人気の「シティ」をはじめ、スポーツ用多目的車(SUV)のCR-Vの新型モデルや高級車のアコードなどが並び、多くの来場者でにぎわった。同社販売担当者は「各車種で使用している最新技術が今回のセールスポイント。近年はSUVを中心に20~30代の男性からデザイン面で高い支持を受けている」と話す。


マレーシア・オートショー2017の様子(ジェトロ撮影)

ホンダのブース(ジェトロ撮影)

EEVには電気自動車も含まれており、政府は2020年までに国内で10万台の電気自動車の走行を目指している。しかし、街中を走る自動車で電気自動車を見かけることは少なく、充電ステーションなども首都中心部にわずかに確認できる程度だ。

そんな中、今回の「マレーシア・オート・ショー」の会場で電気二輪車を展示したのが、2015年設立のマレーシア企業「ツリー・レトリック」だ。主力製品は電気二輪車で、国内初のメード・イン・マレーシア製品である。会場の販売担当者によると、「ドイツや台湾の技術を使って製造しており、価格帯はモデルによって5,600~16,000リンギ程度」だという。現在の主要顧客はファストフード店で、配送用のバイクとして使用されている。同担当者によると、「クアラルンプール市警察にもパトロール用のバイクとして納入が決まった」という。同社は電気二輪車の他にも、1人乗りの電気四輪車や小型トラックなどのラインアップも有する。今後はバイクを中心に一般消費者向けにもプロモーションを強化していく方針だという。


ツリー・レトリック社の電気二輪車(ジェトロ撮影)

新たな国家自動車政策でテコ入れ図る政府

政府が目標とするEEV生産および普及率の増加は一定の成果を挙げつつあるが、もう一つの地域ハブ化については時間がかかりそうだ。ASEANの自動車生産拠点であるタイ、インドネシアでも、電気自動車を含むエコカーへの優遇税制、低価格・低燃費車グリーンカー(LCGC)に対する優遇措置をそれぞれ導入し、環境車の生産に力を入れている。マレーシアでは、NAP2014の下、ハイブリッド車および電気自動車のノックダウン生産に対する優遇税制をそれぞれ2015年末、2017年末まで実施していた。電気自動車生産についてはグリーンテクノロジーに対する優遇税制が2020年末まで適用されるが、ハイブリッド車に関しては投資額や事業内容などに応じて事業者ごとに受けられる恩恵が異なるカスタマイズド・インセンティブが適用されるが、要件については明らかにされていない。

また、MAIのマダニ・サハリ会長がNAPは2018年に改定される計画であることを発表した。NAP2018の発表は2018年後半を見込んでいるという。具体的な内容への言及はなかったが、自動車産業の現状と将来に即した内容にするとしており、「ただ単に場所から場所への移動手段ではなく、ライフスタイルの一部を担う自動車産業の役割を強調したい」と述べている(ニュー・ストレイツ・タイムズ紙、2018年1月3日付)。NAP2014に引き続き、EEV化が柱になると考えられているほか、自動車部品の生産、輸出拡大に力を入れるものとみられる(ザ・サン紙、2018年1月18日付)。前述のとおり、主要メーカー各社も主戦場をEEVに移し、すでに販売する大部分の車種をEEV対応モデルが占める。NAP2018を受けて、メーカーと消費者それぞれにどのようなメリットが生まれるのか注目される。

執筆者紹介
ジェトロ・クアラルンプール事務所
田中 麻理(たなか まり)
2010年、ジェトロ入構。海外市場開拓部海外市場開拓課/生活文化産業部生活文化産業企画課/生活文化・サービス産業部生活文化産業企画課(当時)(2010~2014年)、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)(2014~2015年)、海外調査部アジア大洋州課(2015~2017年)を経て、2017年9月より現職。

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